研究課題/領域番号 |
23K20894
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補助金の研究課題番号 |
21H01187 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 愛幸 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90508350)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 16,640千円 (直接経費: 12,800千円、間接経費: 3,840千円)
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キーワード | スロー地震 / 水 / 重力 / プレート沈み込み帯 / 地殻流体 |
研究開始時の研究の概要 |
水の循環は、地球の進化過程を理解する上で重要な概念の一つである。海洋プレートの沈み込みはその循環の一部を担っているが、地球内部に取り込まれた水の挙動は必ずしも明らかになっていない。本研究では、脱水反応によりマントルへ供給された水の行方に注目する。近年、スロー地震と呼ばれる地震現象の発生する領域に、水が大量に含まれていることが分かってきた。研究代表者らは、20年にわたる高精度重力観測の結果から、スロー地震の発生時に水がプレート境界に沿って浅い方へ移動している可能性を指摘した。本研究では、より多くのスロー地震に対して重力シグナルを捉えることで、水の移動様式を定量的に明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、スロー地震等の地震活動に伴う重力異常の観測を目的とし、これまでの観測手法では困難だった、より短い継続時間をもつスロー地震に伴う重力異常の検出を目指している。新たな観測手法は、既存手法と連続観測を組み合わせたハイブリッド手法である。2023年度は、南海トラフのスロースリップ発生域において既存手法による重力観測を実施し、長期トレンドの評価に用いるデータを蓄積した。東海地方では、3観測地点の観測結果から、重力変化に位相差が存在し、北西に変化が伝播するように見えることを発見した。本研究計画で取得した連続観測可能な重力計の長期安定性の評価を終えた。さらに、重力計の短期的精度を検証するための観測を他のプロジェクトと共同で実施した。その結果、短期的なシグナルである潮汐が引き起こす重力変化が、ノイズの大きい観測地点においても十分な精度で観測できることが確認できた。巨大地震後に生じる余効変動を再現するための球体地球モデルの構築を進めた。具体的には、地球構造の水平不均質や非線形レオロジーをモデルに取り入れるとともに、地震時断層すべりを球体地球モデルで高精度に求めた。また、モデルの比較対象とする衛星重力データの解析に着手した。流体移動に関わるモデル開発として、断層の開口成分に伴う重力変化をモデル化するとともに、スロースリップ域において流体が供給される場合の潮汐に対するすべり応答の定式化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精度評価を行った重力計の南海トラフ域への移設は2023度中に行う予定であったが、2024年度に延期した。これは、重力計を購入する際に経費を合算したプロジェクトにおいて、2023年度に重力計を利用する必要性が生じたためである。そこで、重力計の精度評価をより詳細に行うとともに、モデル開発、データ解析を先行して行った。以上から全体としてはおおむね予定通り進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、スロー地震等の地震活動に伴う重力異常の観測を目的とし、これまでの観測手法では困難だった、より短い継続時間をもつスロー地震に伴う重力異常の検出を目指している。今年度は、昨年度までに引き続き南海トラフのスロー地震発生域で既存手法による重力観測を継続する。併せて、既存の観測手法による南海トラフ域での重力データを用いて、各スロー地震発生域における重力異常の長期トレンドを求め、結果をスロー地震発生域間で比較する。さらに、昨年度までに精度評価を行った連続観測可能な上記の重力計と、既存の重力計とを組み合わせたハイブリッド重力観測を、短期・長期スロースリップの両方が生じている東海地方で開始する。得られた重力データを解釈するための理論開発を継続する。東海地方では、2011年東北地震の余効変動により、2011年以降のデータの解釈の際にこの影響を除去する必要がある。そこで、これまでに開発した球体モデルにより余効変動の寄与を見積もる。また、スロー地震発生域における水の移動を定量的に記述するため、間隙弾性体理論に基づく定式化を行うとともに、数値シミュレーションによる、スロー地震に伴う水の移動の再現を試みる。
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