研究課題
基盤研究(B)
地球深部の地震波速度データを精度よく解釈するために必要な鉱物の弾性波速度の精密測定システムを開発する。特に大型プレスとSPring-8の放射光を利用することで、マントル遷移層から下部マントルに至る高圧高温条件下においても1%以下の高精度での弾性波速度測定が可能となる。
本研究では下部マントルの圧力・温度条件下で、マントル構成鉱物の弾性波速度を高精度で測定するため、超音波エコーやX線回折・吸収イメージングの測定システムの開発を目指している。下部マントルの化学組成、延いては全マントルの化学組成の解明のためには、本研究で開発したシステムを使用した、マントル構成鉱物の弾性的データの蓄積が今後非常に重要となる。2021年度は弾性波エコー測定システムのための任意波形発生機の導入、試料の全周のデバイリングから偏差応力を測定するためのコーン付き超硬合金(タングステンカーバイト)製アンビルの製作、更に高回折角のX線回折を測定するために、X線透光性アンビル(立方晶系窒化ホウ素製:cBN)の試作を行なった。cBNアンビルについては、既に6-6型川井式高圧発生装置での加圧試験を実施したが、比較的低荷重下で破壊され、マントル圧力条件下での実験実施は不可能であった。現在、SiC等の他のX線透過性ハードセラミックス素材の検討やアンビル形状について検討している。高分解能のX線吸収像の取得のためには、従来よりも薄いX線蛍光板を使用する必要がある。厚さ数10μmのX線蛍光板を使ったイメージングシステムの構築のために高効率のX線蛍光板(GAGG結晶)の導入や正確な光軸調整のための各種光学コンポーネント用の自動ステージ等の整備をおこなった。こうした整備の効果については、次年度、2022年度のSPring-8の放射光実験によって詳細に検討する。
2: おおむね順調に進展している
2021年度に必要な機器の導入や2022年度以降に整備予定の開発品について、会社等と順調に打ち合わせ等が進んでいる。
2022年度以降は2021年度に導入した超音波測定システムの検証をSPring-8の放射光実験により詳細に検討する。SPring-8のユーザー実験は年二回の公募のため、上記のように機器開発と検証に若干のタイムラグが生じる。更に2022年度は特にX線光学系の開発に注力する。X線屈折レンズの導入により、試料の偏差応力の迅速測定が可能となり、圧力-温度-偏差応力-弾性波速度の測定ができる。これは、マントル対流やプレートの沈み込みなどの地球ダイナミクス研究に不可欠なデータである。本研究の目的であるマントル鉱物の弾性的性質の解明に向けて、2022年度以降も機器開発を中心に進めていく。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件)
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