研究課題
基盤研究(B)
地球深部の地震波速度データを精度よく解釈するために必要な鉱物の弾性波速度の精密測定システムを開発する。特に大型プレスとSPring-8の放射光を利用することで、マントル遷移層から下部マントルに至る高圧高温条件下においても1%以下の高精度での弾性波速度測定が可能となる。
本研究では下部マントルの圧力・温度条件下で、マントル構成鉱物の弾性波速度を高精度で測定するため、超音波エコーやX線回折・吸収イメージングの測定システムの開発を目指している。全マントルの化学組成の解明のためには、本研究で開発したシステムを使用した、マントル構成鉱物の弾性的データの蓄積が今後非常に重要となる。本研究では、超音波測定システム、X線回折測定用光学系、X線吸収イメージング用カメラなど、各要素技術の開発を実施してきた。2023年度は、2022年度繰越のX線屈折レンズの開発とともに特にX線光学系に重点を置いた技術開発を実施した。SPring-8のBL04B1ではSi(111)の二結晶モノクロメーターによって、狭帯域の単色X線を分光している。モノクロメーターは一万分の一度の角度分解能での回折角の調整が求められ、温度、振動などによって、X線強度が大きく変化する。特に高圧実験のように、長時間にわたって圧力・温度などを変化させながら実験する際は、そのX線強度の測定と調整が非常に重要となる。本研究では、高エネルギーX線強度モニターとして新たにSi型のフォトダイオードセンサーを開発して、X線強度の常時モニターを可能にした。本センサーは従来のArガス流下型のイオンチャンバーに較べて定量性と安定性に優れる。これにより、特に高圧生成相や結晶選択配向の定量的な評価が行えるようになる。また、本研究で新たに開発したX線屈折レンズの調整などにも使用される。
3: やや遅れている
本研究の重要なパーツであるX線屈折レンズの作製が、ウクライナ‐ロシア問題に伴う電力不足により、完成が一年遅れた。また、これによりSPring-8における放射光X線を利用した高圧実験の予定にも遅れを生じている。
2024年度初頭にSPring-8のBL04B1において、X線屈折レンズの集光特性の評価を実施する。この評価結果を基に、高温高圧実験の実施計画を立て、SPring-8の2024B期の研究課題に応募する。無事、研究課題が採択された際には、マントル構成鉱物の高温高圧下での弾性波速度測定と偏差応力の同時測定を実施する。
すべて 2023 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件)
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