研究課題/領域番号 |
23K20903
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補助金の研究課題番号 |
21H01200 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
赤沼 哲史 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10321720)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 生命の起源 / 原始タンパク質 / RNA結合タンパク質 / 触媒 / プレバイオティックアミノ酸 / リボソーム蛋白質 / ヌクレオシドニリン酸キナーゼ / ATP生成 |
研究開始時の研究の概要 |
「生命の起源」に関する未解決課題の一つに「RNAワールドにどのようにタンパク質が誕生したか?」が挙げられる。アミノ酸生合成経路の誕生以前は、原始環境中に存在したアミノ酸だけから機能を持ったタンパク質が合成されたはずである。本研究では、祖先型再構成したリボソーム蛋白質S8とヌクレオシドニリン酸キナーゼを、それぞれ少数のアミノ酸種類からさらに再構成することによって、RNA結合や酵素活性といった機能を持つタンパク質の誕生に必要な最少アミノ酸種類を明らかにする。次いで、原始地球に多く存在したと推定されているアミノ酸と比較し、原始タンパク質のアミノ酸組成を探る。
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研究実績の概要 |
本研究では、「生命の起源」に関して解決するべき課題の一つである「RNAワールドにどのようにタンパク質が誕生したか?」に答えることを目指し、宇宙から運ばれた可能性のあるアミノ酸種、あるいは、原始地球環境において化学進化によって合成された可能性が指摘されているアミノ酸種だけを用いて機能を持ったタンパク質が合成可能か検討をおこなっている。これまでの研究で、現存生物が共通してタンパク質合成に用いている20種類のアミノ酸のうち、隕石や小惑星から見つかっている、あるいは、原始地球環境を模倣した条件下での放電実験で生成が確認されている10種類のアミノ酸種にリジンとアルギニンを加えた12種類のアミノ酸から構成されたヌクレオシドニリン酸キナーゼ(Arc1-12KR)とArc1-12KRのアルギニン残基をすべてリジンに置換したArc1-11Kが、本来の酵素活性とは異なる反応を触媒する活性を示すことを見出してきた。 2023年度には、Arc1-12KRとArc1-11Kが、本来ヌクレオシドニリン酸キナーゼが触媒する反応ではなく異なる反応を触媒するようになったメカニズムの解明を目指すため、Arc1-12KRのX線結晶構造解析を理化学研究所の田上俊輔博士、八木創太博士の協力を得て実施した。当初、Arc1-12KRとADPとの複合体結晶構造の解明を試みたが、活性部位を構成する一部のループ領域のフレキシビリティーが高いためか、ADPの結合した結晶構造は得られていないが、アポ酵素の構造を得ることができた。この成果により、次年度以降にこの結晶構造をもとに触媒活性機構の解明を目指していくことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、宇宙から運ばれた可能性のあるアミノ酸種、あるいは、原始地球環境において化学進化によって合成された可能性が指摘されているアミノ酸種だけを用いて機能を持ったタンパク質が合成可能か検討することを目的としている。これまでの研究で、祖先型リボソーム蛋白質uS8から系統的にアミノ酸種類を減らすことによって、13種類のアミノ酸からRNA結合活性を持つタンパク質を合成できることを明らかにし、論文報告をしている。また、原始地球環境に比較的豊富に存在したと推定されている10種類のアミノ酸に塩基性アミノ酸であるリジンを加えた11種類のアミノ酸だけから触媒活性を持つタンパク質Arc1-11Kが合成できることを示した。さらに、12種類のアミノ酸だけから再構成したArc1-12KRを用いてX線結晶構造解析をおこない、アポ酵素ではあるが構造決定に至った。この成果により、次年度以降にArc1-12KRとArc1-11Kが、本来ヌクレオシドニリン酸キナーゼが触媒する反応とは異なる反応を触媒するようになったメカニズムの解明をおこなう足がかりを得ることができた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、祖先型リボソーム蛋白質uS8から系統的にアミノ酸種類を減らすことによって、13種類のアミノ酸からRNA結合活性を持つタンパク質を合成した。今後は深層学習に基づくアミノ酸配列設計プログラムであるProteinMPNNなどを利用しながら、さらに少ない種類のアミノ酸だけからRNA結合活性を保持しリボソーム蛋白質uS8の再構成を試みていく。 2023年度に、12種類のアミノ酸から構成され、本来ヌクレオシドニリン酸キナーゼが触媒する反応ではなく異なる化学反応を触媒するArc1-12KRの結晶構造を得たので、この構造をもとに、分子動力学計算に基づくドッキングシミュレーションと部位特異的変異解析によって、新しい反応を触媒するメカニズムの解明を目指す。 原始地球環境に比較的豊富に存在したと推定されている10種類のアミノ酸にリジンを加えた11種類のアミノ酸だけから触媒活性を持つタンパク質Arc1-11Kは22残基のリジンを含むが、このリジン残基を出来る限り減らすことを試みる。ただし、リジン残基(塩基性アミノ酸)の減少はタンパク質全体の電荷を負に偏らせることになり、そのことがリジン残基を減らす妨げとなる可能性もある。そこで、溶媒条件の検討も同時におこなっていく。
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