研究課題/領域番号 |
23K20909
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補助金の研究課題番号 |
21H01233 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18030:設計工学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
乾 正知 茨城大学, 応用理工学野, 教授 (90203215)
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研究分担者 |
梅津 信幸 茨城大学, 応用理工学野, 准教授 (30312771)
加瀬 究 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 先任研究員 (70270600)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 加工性評価 / 工程設計 / CAM / 自動工程設計 / 加工コスト評価 / 設計支援 / 定量解析 |
研究開始時の研究の概要 |
フライス加工では,部品や素材形状,用いる工具によって加工プロセスが大きく異なる.これは毎回問題解決アルゴリズムを新規に設計しなおすことに相当する.そのためソフトウェアのような計算コストの理論化は困難である.フライス加工用のCAMソフトウェアは大きく進歩しており,除去すべき形状を自動認識し,その部分にフライス加工用の最適工具経路を自動生成できる.さらに切削シミュレーションにより,加工に要する時間(コスト)を評価することも可能となっている.本研究では,この最新のCAM技術の考え方を利用して,与えられた部品の加工に要する手順を自動決定し,切削シミュレーションにより加工コストの定量評価を実現する.
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研究実績の概要 |
最新のCAMソフトウェアは,切削工具と部品形状の幾何的性質に注目して工具経路を生成し最初の加工を行う.以後は削り残り形状の除去を目的に,工具選択と経路生成を繰り返して加工を進めていく.本研究でもこの手法に基づいて加工工程を解析することとし,以下の機能を有するソフトウェア開発を行った.(1)部品を構成する形状特徴を認識する.今回は穴形状と面取り形状,壁形状,床形状を認識する.認識された穴と面取り形状については専用加工の扱いとした.(2)指示された工具を用いて,指定された方向から加工する場合の工具経路を計算する.その際には,壁と床形状については,加工が適切に行われるように経路に修正を施した.(3)次に得られた経路を用いて切削加工シミュレーションを繰り返すことで,部品の加工結果にあたる工作物の形状モデルを計算する.最後に得られた工作物モデルと部品形状のCADモデルを比較し,削り残り形状を抽出する. 令和4年度は,このソフトウェアについて,3つの改良を施した.(1)処理の高速化:抽出された削り残り形状のみ除去するように工具経路の生成アルゴリズムを改良した結果,無駄な加工シミュレーションが減り処理速度が3~10倍程度向上した.(2)削り残りが生じる理由の説明機能の実現:本ソフトウェアを企業に提供し性能評価を実施したところ,なぜ部品が加工できず削り残りが生じるのか説明機能が欲しいと依頼を受けた.部品加工が困難な理由としては,工具干渉,ホルダー干渉,工具形状の不適合の3つが考えられる.このうちホルダー干渉を可視化する機能を実現した.(3)RTコアの導入:シミュレーション処理のさらなる高速化を考え,GPUのRTコアを利用したアルゴリズムを開発し,計算実験を行った.その結果,部品によっては2~3倍程度の高速化が可能なことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実現したソフトウェアを用いて70以上の機械部品の加工工程の評価を行った.その結果,必要な加工方向,必要な工具,放電加工が必要な形状などが自動選択できることを確認した.また処理に要する時間は,1加工当たり2~3秒と十分に高速であること,またその結果も十分に正確であることを確認した.その一方で幾つかの課題も見つかった. (1)加工困難な説明理由の提示:現時点でホルダー干渉の検出のみが可能で,工具干渉や工具形状の不適合に起因する加工困難形状については,まだ理由を示すことができていない.(2)RTコア処理のメンテナンス性の改善:いくつかの処理にGPUのRTコアを用いた高速化技術を導入したところ,数倍の高速化が実現できた.その一方でソフトウェアのメンテナンスが難しい,といった課題も見つかった.(3)加工可能方向の事前検出:現在のアルゴリズムでは,加工方向を事前に定めた6方向に限定しているが,これを部品形状から自動判定する技術が実現できれば,より実際的な加工性評価が可能となる.幾つかの手法を試みたがまだ満足できる結果が得られていない. 以上の理由から概ね順調と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で,用意された工具を用いて加工シミュレーションを繰り返すことで,加工困難形状を高速に抽出する技術についてはほぼ完成した.今後もRTコア技術の利用等を進めさらなる高速化を実現したいと考えているが,同時に開発した技術を用いて,本研究の最終目的である加工コストの評価について研究を進める.具体的には,シミュレーション後に得られた工程を見直すことで,加工に必要な工具や必要な加工方向を決定し,加工コストの見積りを行いたいと考えている.また,必要な加工方向の自動決定技術や,加工が困難な理由の解析技術についても研究を進め,特に工具干渉による加工困難と工具形状の不適合による加工困難を自動認識する技術を実現する.既に本技術を利用したいという企業が現れており,ソフトウェアの性能評価が進んでいる.評価結果に基づいてソフトウェアの改良を進め,本技術を実用化したいと考えている.
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