研究課題/領域番号 |
23K20918
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補助金の研究課題番号 |
21H01268 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
青柳 学 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (80231786)
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研究分担者 |
田村 英樹 東北工業大学, 工学部, 教授 (90396581)
孔 徳卿 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (50868974)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 浮揚 / 超音波 / マニピュレーション / 多自由度 / 保持力 / 定在波 / 板状物体 / 音響放射圧 / 非接触搬送 |
研究開始時の研究の概要 |
近距離場音波浮揚(NFAL)による板状物体の非接触搬送において,簡便かつ拡張性に優れる方法を考案し,多自由度動作も実現している。本研究ではさらに拡張し,板状物体の6自由度非接触マニュピレーションを実現し,板状物体の安定で実用的な非接触搬送システムの構築を目的とする。非平面音響放射面は板状物体のNFALから定在波音場浮揚(SWAL)に移行するハイブリッド音波浮揚が実現でき,浮揚距離を大きく変えるダイナミックかつアクロバティックな6自由度動作の安定化が図れる。応用として,板状物体の安定なSWAL搬送とNFAL搬送を組み合わせたハイブリッド非接触搬送システムを実現する。
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研究実績の概要 |
本研究では近距離場音波浮揚(NFAL)による6自由度非接触操作可能な安定で実用的な非接触搬送システムの構築を目的としている。具体的には,浮揚物体の縦回転や飛び上がり後に振動面上に非接触で受け止めること,また板状物体の定在波音場浮揚(SWAL)の設計,NFALからSWALへの移行を行った。本年度の研究成果は以下の通りである。 ●テーマ1:6自由度動作システムの開発(Z軸方向移動) 音響放射面に窪み(音響キャビティ)を適切に設けると,NFAL状態から音響キャビティの共振状態に移行し,大きな音響放射力が浮揚物体に印加され物体は突然跳躍する。浮揚物体の重心から離れた位置に力が作用すると縦回転ができる。振動面上に非接触で受け止める実験の結果,浮揚物体と振動面間で発生する定在波共振では大きな音響放射力を受けるため,振動面への接近が困難であり,振動面から離れた位置では姿勢保持が困難であった。浮揚物体の位置による振動振幅制御が必要であり,また複数の振動面で受け止める構成の着想を得た。さらに,小径穴付き板を振動面近傍に配置した際に発生する音響ジェットを利用した新たな非接触操作の着想も得られた。 ●テーマ2:板状物体の定在波音場浮揚の安定化に関する研究 昨年に引き続いて,板状物体のSWALと安定な保持力を得るために有限要素解析により音場設計を行った。基本構成は同じであるが,1次元搬送のため長方形振動面を採用した結果,振動子設計が比較的容易になった。また,振動面間隙間の搬送への影響を調査した結果,浮揚物体が落下しない程度のはみ出しと同程度であれば問題は無かった。さらに,NFALからSWALへの乗り継ぎ方法について研究計画を前倒しで行い,浮揚物体を上下から振動面で挟むことでNFALの保持力が消滅することを解析および実験で明らかにした。NFALからSWALへの移行は重要な技術であるため大きな進展が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づいて,研究を実施した。研究項目ごとの進捗状況は次の通りである。 ●テーマ1:6自由度動作システムの開発 昨年度に引き続き,浮揚物体の姿勢を画像計測により測定し,音響放射力の入力調整により水平姿勢を制御する計画であったが,振動板の設計を変更したため期間内で実験が行えなかった。また,浮揚物体の跳躍や縦回転後に振動面で非接触で受け止めることを試みたが,定在波共振による予想以上の大きな音響放射力のため,姿勢が維持でき無かった。想定外の結果も得られているが,計画期間を超えておらず,解決策も用意できているため,おおむね計画通りに進んでいる,と判断している。 ●テーマ2:板状物体の定在波音場浮揚の安定化に関する研究 昨年に引き続き,板状物体の浮揚と安定な保持力を得るために有限要素解析により音場設計を行った。設計変更を行ったため時間を要し,期間内での大きな進展には至っていない。しかし,解析上ではほぼ検討ができており,現在は実験の準備を進めているため,大きな遅れにならないと予想している。また,NFALからSWALへの移行に必要なNFALの保持力の低下方法の検討は解析と実験を実験計画より前倒しで行い,良好な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は既に解析結果から設計された浮揚搬送システムの試作・実験を中心に行う。新たに見つかった課題に対しては解決を試みる。また,新たな着想を得たものは検討を重ね,本研究の発展形として研究計画を再構築する。まずは研究計画に基づいて次の研究テーマを進める。 ●テーマ1:6自由度動作システムの開発 浮揚物体の位置,姿勢によって変化する音場,音響放射力の検討の重要性が再認識されたため,複数(最小限)の振動面に拡張して,それらの制御による音圧場の設計と制御について検討を進める。有限要素解析を用いて想定できる状態ごとに浮揚物体に作用する音響放射力を明らかにし,ロバスト制御による安定化を行う。また,振動面を複数(最小限)で構成することで能動的な音響キャビティを構成する方式に研究を発展させることを検討する。 ●テーマ2:板状物体の定在波音場浮揚の安定化に関する研究 有限要素解析で設計した音場を実現するため,振動面を製作し,形成された音場の評価を行い,必要に応じて改善を行う。また振動面を搬送方向に並べて,異なる周波数または空間位相の合成による定在波音場を形成し,搬送力の発生を確認する。さらに,複数(最小限)の振動板に拡張した構成により,保持力が大きい音圧場の形成,搬送力の発生の是非を検討する。
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