研究課題/領域番号 |
23K20929
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補助金の研究課題番号 |
21H01313 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
下村 直行 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (90226283)
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研究分担者 |
宇都 義浩 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (20304553)
親泊 政一 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (90502534)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 電気生体作用 / パルス電界 / がん / 小胞体ストレス応答 / ナノ秒パルス電界 / 生体作用 / 癌細胞 / アポトーシス / バイオエレクトリクス |
研究開始時の研究の概要 |
パルス電界の生体に対する影響を検討する。例えばパルス電界は,細胞死を誘導したり,この細胞死を回避させたりする。これらをパルス電界の条件によりコントロールできれば,新たな医療技術に繋がる。ナノ秒パルス電界による小胞体ストレス応答誘導とがん細胞のアポトーシス誘導を対象に,ナノ秒パルス電界の影響と応答反応の機序を実験研究する。がん細胞にアポトーシスを効果的に誘導できれば,低侵襲ながん治療技術となる。小胞体ストレスは糖尿病などの原因とされており,小胞体ストレス応答の誘導方法として確立できれば,あらたな医用技術となる。
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研究実績の概要 |
低侵襲な医用技術に結びつけることを目的に,ナノ秒パルス電界印加の生体に対する影響と応答反応の機序を実験研究する。ナノ秒パルス電界のがん細胞への印加実験と小胞体ストレス応答の誘導実験,およびパルス電界印加技術の開発を進めた。 がん細胞へのナノ秒パルス電界印加実験は,マウス由来乳腺癌細胞(EMT6)の細胞懸濁液に対してパルス幅20ns,65nsのパルス電圧を印加した。アポトーシステストを合わせて行ったところ,65ns印加時はネクローシスと考えられる細胞死が大部分を占めた。20nsでは,印加電界と印加回数の増加に伴って細胞死が増えたが,45kV/cm,1000shotsの時にアポトーシスの割合が大きかった。発育鶏卵法を用いた固形腫瘍へのパルス電界の印加実験に着手した。線対線電極と線対リング電極を用意し,固形腫瘍にパルス幅20nsのパルス電界を印加した。いずれの電極も固形腫瘍の成長を抑制する傾向があったが,実験技術不足と少サンプル数のため,実験条件による明確な差は判断できなかった。 ナノ秒パルス電界印加による小胞体ストレス応答誘導の実験は,ヒト腎由来EGFP-293Aの細胞懸濁液に対してパルス幅20ns,65ns,200nsのパルス電圧を印加した。パルス幅が長くなるにつれて細胞生存率は減少した。GFPの蛍光輝度は,未処理細胞に対して,20nsで減少傾向,65nsで増加傾向,200nsで同程度であった。65nsのパルスの印加により,小胞体ストレス応答を誘導した可能性があるが,その程度は小さい。200nsでは未処理細胞程度の蛍光輝度であったが,その細胞生存率は非常に低かった。細胞生存率を用いた正規化によりポジティブコントロールに近い蛍光輝度が見積もられた。つまり小胞体ストレス応答誘導と細胞死を起こす条件が近い可能性があり,これらを分離する条件の探索が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
がん細胞に対するナノ秒パルス電界の印加実験では,各実験条件における細胞生存率の測定を行った。不調であった学内設備のフローサイトメーターが修理され,フローサイトメーターを用いたアポトーシステストを導入した。この測定結果から,実験条件と細胞死の関係をある程度は評価することができたが,実験条件によっては十分な解析ができなかった。発育鶏卵法を用いた固形腫瘍へのパルス電界の印加を導入した。実験サンプル数が十分に確保できず,パルス電界印加用の電極の開発は限定的であった。細胞操作等の実験技術が十分とは言えず,特に新規導入の発育鶏卵法の実験技術が未熟であった。 ナノ秒パルス電界による小胞体ストレス応答誘導の実験においては,誘導に有効なパルス条件の探索が進んだ。しかし不調であった学内設備のマイクロプレートリーダーは完調したとは言えず,データの取得に苦労して実験回数が増え,そのパルス条件の探索は限定的であった。またその中で,小胞体ストレス応答誘導と細胞死発生のパルス条件が近い可能性があり,小胞体ストレス応答誘導に適した条件の特定を妨げた。細胞操作等の実験技術が十分とは言えないこととパルス電源動作の安定性もこの特定に影響した。 パルス電界の発生・印加技術の開発に使用するネットワークアナライザが故障したこと,およびその修理に予定外の費用が発生したことが,研究遅れの一つの原因となった。
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞に対するナノ秒パルス電界の印加実験では,フローサイトメーターを用いたアポトーシステストを重ねて,実験条件と細胞死の関係を明確化する。このため実験条件によらないアポトーシステストの実験プロトコルの改良・開発を行う。発育鶏卵法を用いた固形腫瘍へのパルス電界の印加実験を継続し,固形腫瘍の縮小に適したパルス条件を探索し,パルス電界印加技術の開発を行う。実験を行いながらその中で実験技術の向上を図る。 ナノ秒パルス電界による小胞体ストレス応答誘導の実験においては,実験技術の向上を図り,パルス電源動作の安定性を改善して,小胞体ストレス応答誘導に適した条件の特定実験を継続する。この実験でもアポトーシステストを導入して,細胞死の発生条件からの分離を試みる。必要なら装置を開発してマルチパルス電界の印加実験を行う。小胞体ストレス応答誘導の優勢な条件を特定できれば,発育鶏卵法を用いた固形腫瘍へのパルス電界の印加実験を行う。まずはEGFP-293A細胞も鶏卵上に腫瘍を形成するかどうか試験する。
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