研究課題/領域番号 |
23K20931
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補助金の研究課題番号 |
21H01318 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21020:通信工学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
本間 尚樹 岩手大学, 理工学部, 教授 (70500718)
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研究分担者 |
村田 健太郎 岩手大学, 理工学部, 助教 (20848030)
小林 宏一郎 岩手大学, 理工学部, 教授 (60277233)
岩井 守生 岩手大学, 理工学部, 助教 (60825876)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
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キーワード | マイクロ波 / バイタルサイン / アレーアンテナ / バイタルセンシング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,マイクロ波帯におけるMIMOレーダにおける空間軸と時間軸の究極的な拡張を行うことで,生体センシングの感度を飛躍的に向上可能な技術を確立する.大規模MIMOアレー装置を構築し,ヒトからの反射波を解析することで,従来は解析が困難であった,精密なバイタルサインや,ヒトの位置だけではなく体格等の詳細な空間的情報を取得する技術を確立する.
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研究実績の概要 |
本研究では,マイクロ波を用いた非接触・非侵襲なヒトのバイタルセンシング技術において,MIMO (Multiple-Input Multiple-Output) による空間軸の拡張と,時間信号処理による時間軸の拡張を組み合わせによって,感度を究極的に拡張した新しいセンシング手法を確立することを目的としている. 本研究で取り扱う課題は,主にA) 血圧推定,B) 生体認証,C) 行動予知,の3項目に大別される.課題Aに関しては,時間領域波形を学習させ,kNN (k-nearest neighbors) と呼ばれる分類手法を用いることによって,時々刻々と変化する電波応答と血圧値を関連付け,電波応答だけに基づき血圧値をリアルタイムに推定する手法について取り組んでいる.特に,学習データとテストデータが同一人物である場合,高い相関値にて血圧をリアルタイム推定できることが実験的に明らかになった.課題Bの生体認証に関しては,屋内空間に人物が存在する場合のMIMOレーダチャネル応答を事前に学習し,そのデータに基づいて存在する人物の特定を行う方法を開発した.特に,MIMOレーダのアレーアンテナの方向を垂直アレーとすることによって,人物の特徴をとらえやすくするとともに,人物位置によるデータの変化を抑制し,識別精度を高める方法を考案した.課題Cの行動予知に関しては,MIMOレーダのチャネルの時間応答に対して線形予測を適用し,人物の位置と速度の両方を推定することで,レーダによる測位精度を向上する方法について取り組んだ. 以上に述べたとおり,当該年度の研究によって時空間信号処理によるヒトセンシング技術の有効性を示す基礎データを得ることができた.次年度は得られた技術・知見を活かし,引き続き時空間信号処理によるヒトセンシング技術の深化を図る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マイクロ波による空間軸と時間軸を拡張した高感度ヒトセンシング手法について取り組んでいる3項目について,次のように進捗状況をまとめる. 課題A 血圧推定:送受信アレー前に被験者が静止しかつ正対する場合に,マイクロ波によるMIMOチャネル時間応答を観測すると同時に,カフ式リアルタイム血圧計により血圧の時間応答を観測する実験を行った.様々な被験者に対し同様の実験を行い,学習データ群を構築した.さらに,テストデータとして同様の実験を行い,事前に取得した学習データを用いてkNNにより血圧値の分類を行った.実験の結果,学習データと同一人物であれば,マイクロ波のみにより良好な精度で血圧推定が可能であることが確認された. 課題B 生体認証:事前の予備検討により,マイクロ波を用いたヒトの非拘束認証方式では,学習データとテストデータを取得したときのヒトの立ち位置の違いが認証精度に大きく影響することが分かっている.垂直方向にアンテナをアレーすると,立ち位置の違いに対して識別性能がロバストになることが分かったため,アレーアンテナの再設計を行い,垂直アレーアンテナを用いた実験系を完成させた.これを用いた基礎実験により,従来の水平アレーと比べて識別性能が大幅に向上することが明らかになった. 課題C 行動予知:アレーアンテナ素子数の拡張作業について主に取り組んだ.特に受信系統を増やすべく受信系ハードウェアを拡充した.多ポートデータロガは翌年度(令和4年度)に調達するため,現在はアンテナおよびダウンコンバータのみが拡充された状態であり,次年度に向けた準備を順調に進めることができた.また,先行して測位法のアルゴリズム開発に着手しており,MIMOチャネル応答の時間方向線形予測によって,歩行中人物のトラッキング精度が向上することが明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り,当年度は予定以上に研究を進捗させることができ,順調に計画が進行している.よって,概ね当初の計画通り検討を進めるものとしたい.以下課題項目ごとに推進方策をまとめる. 課題A 血圧推定:血圧推定の検討を進めるうえで,バースト的に推定精度が劣化するケースが存在することが明らかになった.解析の結果,マイクロ波による心拍推定に失敗すると血圧推定が正しく動作しないことが分かった.したがって,血圧推定の検討と並行して,心拍推定精度を高めるアルゴリズムを追加実装することを計画している.具体的には,生体活動により生じるマイクロ波応答の特徴を活かし,不要な外乱(人体周囲のクラッタ,体動)を抑圧するアルゴリズムの開発を行う.これにより,血圧推定アルゴリズムの動作安定化を図る. 課題B 生体認証:課題Cと合わせて装置の拡充を行うことを計画している.令和4年度は多ポートデータロガの調達を行う予定であり,これまで試作してきたハードウェアとの結合部の試作(コネクタアレー)も実施する予定である.これによって大規模アレーによるヒトセンシングが可能となり,生体認証に必要なより多くの特徴を観測できるようになる見込みである. 課題C 行動予知:アンテナアレーの拡充によって,より高いヒトトラッキング精度が得られるようになる見込みである.令和4年度は,これによる測位性能向上効果を評価するとともに,この知見を翌年以降の行動・イベント予知に活かすべく検討を進める.
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