研究課題/領域番号 |
23K20952
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補助金の研究課題番号 |
21H01365 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
久米 徹二 岐阜大学, 工学部, 教授 (30293541)
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研究分担者 |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 教授 (10264368)
鵜殿 治彦 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (10282279)
大橋 史隆 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20613087)
今井 基晴 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 電子・光機能材料研究センター, NIMS特別研究員 (90354159)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2021年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | 半導体クラスレート / SiGe混晶クラスレート / SiGeクラスレート薄膜 / 半導体クラスレート薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、半導体として汎用されている結晶構造とは異なるシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の材料である「IV族半導体クラスレート」を開発し、その特長である「可視光領域のエネルギー可変バンドギャップ」「直接遷移」「環境に優しいIV族材料」「高耐久性」を生かした新規半導体の創成と応用を目的としている。 これまでの取り組みにより我々は、世界に先駆けてSiおよびGeクラスレートの薄膜化に成功しているが、本課題ではそれをさらに進め、Si1-xGex混晶クラスレートの薄膜作製技術を確立し、その半導体としての性質を詳細に調べ、半導体材料としての将来性を見極める。
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研究実績の概要 |
Siリッチ組成クラスレート薄膜作製のための新しい装置構築を完了した。この装置は、真空下におけるNaの蒸着と高温(700℃)の基板(Si基板または非晶質Si薄膜)との反応によるNaSiの生成と、それに続いて400℃付近での熱処理によるクラスレート化を可能にするものである。試料作製法についての新しい取り組みを行った結果、これまで課題の多かった透明基板上へのSiリッチクラスレート薄膜作製について目途がついた。 これに並行して、昨年度より引き続き従来装置によるGeリッチ組成の試料作製を行い、XRD、ラマン散乱、SEMにより構造・組成の評価を行うと共に、可視紫外吸収分光、赤外吸収分光、電気伝導度測定により光物性、電子物性の解明を行った。その結果Siが15%までの組成について、非晶質、ダイヤモンド構造をほとんど含まない単相SiGeクラスレート薄膜の合成に成功し、その吸収端の高エネルギーシフトをはっきりと観測した。さらにSi/Ge組成の関数として光学バンドギャップを評価した。一方、電気伝導度の温度依存性測定からは、残存Naによる高いキャリア濃度が示され、より一層のゲストフリー化(Naの減少)の必要性が示唆された。 Geクラスレートへの不純物ドーピングについて、Cuの添加を試みた。XRD、SEM-EDX等の分析より、Cuの添加量に応じて、I型、II型クラスレートの形成が認められた。また、Al添加の場合と異なり、クラスレートの結晶子サイズの顕著な減少は観られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、Siリッチクラスレート作製装置の立ち上げを完了し、いくつかの作製条件で試料作製を試みた。透明基板上へのSiリッチ(又は純粋なSi)クラスレート薄膜作製については、膜の酸化や不均一性、不純物の生成など、これまで問題点が多かった。しかしながら新装置による試行の結果、NaSiが蒸着可能であること、またそれによるクラスレート化が確認されたため、今後良質なSiリッチクラスレート薄膜の合成が可能になると期待できる。 Geリッチクラスレートの物性解明については、予想通り残留Na量の電子物性への大きな寄与が明らかになった。今後、残留Naをいかに低減するのかがキーポイントになるが、真空熱処理に工夫を施すことによりクリアできるものと考える。Geクラスレートへの不純物ドーピングについては、従来のAlの他、CuやInも試行しており、元素によらず添加そのものは比較的容易であることが確認されつつある。今後その電子物性を明らかにすると共に、ドープ量の制御を行う予定である。 以上のように、並行して行っているテーマのいずれについても進捗が見られており、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに構築を完了した試料作製装置により、Siリッチ組成クラスレート薄膜の作製を確立することを目指す。具体的には、NaSiを原料とした真空蒸着による前駆体NaSi膜の作製と、その後の真空下における赤外ランプ加熱プロセスにより、良質なクラスレート薄膜を得るための最適条件を探る。さらにSi/Ge組成を変化した試料に対して、結晶構造の他、光物性、電子物性を明らかにしていく。 Geリッチ組成のクラスレートについては今後、残留Naを更に減少させ良質な半導体特性を得ることに注力する。Naの低減に関しては、真空下熱処理と表面洗浄(ドライまはたウェット)の繰り返しなど、いくつかの手法を検討する。残留Naによるキャリア密度の簡易的な評価は、IR領域でのフリーキャリア吸収にて行う。 さらに、不純物ドープによるP型伝導の実現に昨年同様に注力する。出発材料(Ge薄膜またはSiGe薄膜)作製時に、各種ドーパント原料(Al、Cu、In、P、Gaなど)を同時スパッタリング法により製膜する。これを原料にクラスレート膜を作製し、ノンドープの試料と物性データを比較し、ドーピングの効果を確かめる。これらにより、ショットキーデバイス、PN接合デバイスの試作および評価を行う。 上記において作製された試料は従来より引き続き、下記の評価を行う。構造・組成・欠陥に関する試料のキャラクタリゼーションを行ったうえで、近赤外・可視・紫外領域の透過率測定、発光測定等から吸収係数、バンドギャップ(光学ギャップ)を評価し、電気伝導度の温度依存性をもとに活性化エネルギーの算出を行う。また、各種光学測定により光吸収キャリアの再結合過程、ホール効果測定により、不純物準位、キャリア密度、移動度、伝導機構などの重要な物性を明らかにする。 上記よりSiGeクラスレートの発光材料としての可能性を総括し、デバイス応用への指針を得る。
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