研究課題/領域番号 |
23K20954
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補助金の研究課題番号 |
21H01374 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
皆川 正寛 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (20584684)
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研究分担者 |
新保 一成 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80272855)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 有機トランジスタ / ワイドギャップ有機半導体 / 有機電界効果トランジスタ / 有機電子注入層 / ウェットプロセス / ポリエチレンイミン / ミストコート / 還元性有機材料 / 酸化銀電極 |
研究開始時の研究の概要 |
義手等に実装可能な人工皮膚シートに向けたフレキシブル圧力センサ回路の開発ニーズは高まっている。しかし,従来のCMOS技術を踏襲したnチャネル形とpチャネル形FETを併用する構造では,二種類の半導体層を精度良く配置する必要があり,フレキシブル基板上への実装は困難とされている。これに対し,一種類の半導体層からなる新規CMOS用FETを作製することでこの課題を解決する。 現状、ホール注入に比べて電子を半導体層に効率よく注入する技術が確立できていない。そこで、電極と半導体層界面に金属配位錯体を形成することにより良好な電子注入性を実現し,一種類の半導体層でも作製可能なCMOSセンサ用FETを実現する。
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研究実績の概要 |
本研究期間では,PEI水溶液を細かな粒子形状でマスク越しに塗布することでパターニングが可能な新たな塗布方法「ミストコート法」を開発し,PEI薄膜の挿入と電極/ワイドギャップ有機半導体(OSC)層界面における電子注入性の関係を明らかにした。さらに,pチャネル型OFETと同一のOSC材料を使用したnチャネル型OFETを実現することを目的とした。 1.ミストコート法で作製したPEI薄膜の物性評価: PEI薄膜の膜厚は塗布時間に比例して増加した。また,作製した試料の仕事関数の測定結果より,PEIの膜厚が1 nm以下の極薄い場合でも約4.0 eVまで低下することが明らかになった。 2.ミストコート法で作製したPEI薄膜の電子注入性評価: PEI薄膜の挿入によって電流密度が増加することが分かった。これは,酸化銀電極の仕事関数 (~4.7 eV)がPEI薄膜の挿入によって約4.0 eVまで低下したことで,電極/OSC層界面の電子注入障壁が低減したため電子注入性が改善されたと考えられた。 3.PEI層を持つOFETの特性評価: 本研究では6種類のPEI膜厚を持つ素子を作製した。しかしながら,作製したOFETの伝達特性の測定結果を見ると,どれもnチャネル型OFETの駆動特性を示さなかった。これは,DPAの電子親和力が光吸収端から推定した値であるため実際には2.9 eVよりも小さい可能性があり,その結果,電極/OSC層界面での電子注入障壁がホール注入障壁よりも大きかったため,ホール電流のみが流れたと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験そのものは順調に進められており,実験手法もこれまでの手法と異なる新たな方法にも挑戦し,縦型素子の場合ではワイドギャップ半導体への電子注入性を一定程度実現できている。 しかしながら,最終目標としているn形トランジスタを駆動するところまでには至っていないことから,やや成果としては遅れが生じていると言わざるを得ない。 nチャネル形トランジスタにした際に駆動できないのは,電子注入性がまだ十分に高くないか,もしくは電子伝導性が極めて低いかのどちらかと考える。しかしながら,本実験で用いているワイドギャップ有機半導体(DPA)は,有機EL素子の発光層材料にも使用されている一般的な材料であり,後者の可能性はそれほど大きいとは考えていない。したがって,成果に遅れが生じている理由は,今年度用いたPEI薄膜では電子注入を十分に行えるだけの電子注入障壁の低減を実現できなかったこと,と考えている。 よって,翌年度に関しては前者を改善すべく,計画当初から予定していたCsや,そのほかの低仕事関数材料を用いて,DPAへの電子注入性を高める実験を引き続き行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,金属-ワイドギャップ半導体層の電子注入障壁を小さくする実験に取り組む。特に,近年では非常に低い仕事関数を示す金属電極を作製する際に用いられるPy-hpp2を用いて,高効率な電子注入性を実現する。さらに,有機半導体中の電子は大気や中の水分や酸素により伝導性が悪化することも以前より指摘されており,本実験にも少なからず影響を及ぼしていると考えられるため,真空-低露点雰囲気一貫の環境下で素子の作製および評価を行えるように装置を改造しながら,nチャネル形ワイドギャップ有機トランジスタの実現を目指す。
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