研究課題/領域番号 |
23K20960
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補助金の研究課題番号 |
21H01394 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21060:電子デバイスおよび電子機器関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
永瀬 雅夫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (20393762)
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研究分担者 |
影島 博之 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (70374072)
大野 恭秀 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (90362623)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | グラフェン / テラヘルツ / SiC基板 / 積層接合 / 負性微分抵抗 / プラズモン / SiC / 遠赤外線 |
研究開始時の研究の概要 |
単結晶グラフェンを用いた高出力テラヘルツLEDの実現を目指す。SiC基板上にエピタキシャル成長した単結晶グラフェン同士を直接接合するこ とにより積層接合を形成する。接合部に一定以上の電圧を印加するこによりホット化されたキャリアをグラフェンに注入することによりプラズ モンを直接誘起することを目指す。誘起したプラズモンとグラフェンのフォノンをカップリングさせることによりテラヘルツ放射を実現する。
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研究実績の概要 |
グラフェン積層接合に於いて電圧印加により高抵抗相から低抵抗相へ変化するスイッチングデバイスの創出に成功した。低電圧領域の高抵抗相の抵抗は、接合の状態により12桁以上変えることが出来ることが判った。1GΩ以上の高抵抗状態では、Fowler-Nordheim(FN)トンネル現象が観察され、グラフェン接合間距離は最大で6nm程度離れていることが判った。接合部にかかる5GV/mを越える強電界により、グラフェン間距離が減少しグラフェン同士が強く接触することにより低抵抗相へ遷移するメカニズムが推定される。低抵抗相においてS字(電流の増加に従って接合電圧が低下する)タイプの負性微分抵抗現象が観測された。低抵抗状態での電気特性はどのデバイスでもほぼ一致することから、接合状態でのグラフェン積層の電子状態を反映していることが推測される。今後、低抵抗状態での負性微分抵抗発現の原理解明が課題となるが、電子デバイスとして考えた場合、双方向サイリスタ的なスイッチングデバイスのみならず発信器等への応用展開可能性がある。 電流注入によるグラフェンからの遠赤外線放射に関しては、放射スペクトル形状の詳細な解析から、放射の黒体輻射相当温度が243Kであること、及び、0.41Wの電力投入時における黒体輻射相当の温度上昇は14Kであることが判った。これらの事実は、SiC上グラフェンからの黒体輻射状の遠赤外線放射はジュール熱では無くグラフェンプラズモンーSiC表面フォノンカップリングにより生成されたエキシトンからの放射の可能性が考えられる。また、赤外カメラによる観察によりグラフェンからの遠席外線放射は主に水平方向になされていることが明らかとなった。これは近接場領域ではグラフェンの膜厚程度のナノ遠赤外線光源が実現されていることを示唆しており、ナノ赤外線イメージング等への応用展開が予測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
接合デバイスにおいて再現性のある負性微分抵抗現象を含む非線形特性の発現を発見した。このような現象はこれまでに報告が無い。負性微分抵抗現象は発信器等へのアクティブデバイスへの応用が想定されるため、重要な発見である。 遠赤外線放射デバイスにおいてはスペクトルの詳細な解析により放射スペクトル中のジュール熱成分の定量化に成功した。照射原理を考察する上で非常に重要な進展である。
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今後の研究の推進方策 |
積層接合に関しては、低電界状態の高抵抗相と、高電界状態の低抵抗相、それぞれの特性についてその原理解明を中心に進める。低電界状態では接合部のグラフェン間に距離がある場合は既に既存のトンネル現象により説明が可能であるが、実質的に接触している状態では量子化抵抗程度の抵抗値が再現して観察されており、量子ポイントコンタクト状態となっていることが予測される。これについて理論的に検討を行う。また、低抵抗相で発現する負性微分抵抗状態について、接合角依存性等の検討を行うことにより、その実体の解明を進める。 グラフェンからのテラヘルツ波放射の検討に関しては、改造したFTIR装置において1.5-10THzの帯域が観測可能となったことを既に確認済である。今後は、グラフェン積層デバイスからのTHz放射の実験を行う予定である。
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