研究課題/領域番号 |
23K20980
|
補助金の研究課題番号 |
21H01471 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分22060:土木環境システム関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黒田 恭平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (50783213)
|
研究分担者 |
成廣 隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (20421844)
延 優 (NOBUMASARU・KONISHI) 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 主任研究員 (40805644)
佐藤 久 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80326636)
山田 真義 鹿児島工業高等専門学校, 都市環境デザイン工学科, 教授 (80469593)
野口 太郎 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90615866)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
|
キーワード | DPANN / アーキア / 超微小微生物 / 廃水処理 / 二者培養 / 培養 / 共生 / 寄生 / ショットガンメタゲノム解析 / メタトランスクリプトーム解析 / CPR/Patescibacteria / 診断技術 / トランスクリプトーム解析 / トランスクリプト-ム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,我々が独自に見出した嫌気性廃水処理反応槽内でメタン生成アーキアに寄生すると考えられる極小未知微生物群の廃水処理への影響を微生物学・工学的観点から明らかにすることで,これら極小寄生微生物群を廃水処理の新奇指標微生物として診断・制御する技術を開発することを目的とする。培養と情報科学・ 微生物代謝能の観点から学術的に解明することで、廃水処理技術の安定化へ寄与する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高有機物負荷,高窒素負荷,高カチオン濃度の廃水処理汚泥中で優占化する「DPANNアーキア」を廃水処理の新奇ストレス指標微生物として診断する技術を開発し,その“真”の機能を培養法とトランスクリプトム解析等により明らかにすることである。「DPANNアーキアは廃水処理のストレスを評価する新奇指標微生物になり得るのではないか?」という問い(仮説)について,培養と情報科学・微生物代謝能の観点から学術的に解明することである。2023年度は,(1)DPANNアーキア優占化反応槽の運転管理と診断技術の開発,(2)DPANNアーキアの二者培養系の確立と廃水処理システム内でのDPANNアーキアの“真”の機能解明について、研究を実施した。(1)では,DPANNアーキアを優占化させることに成功したUASB反応器について微生物群集構造解析、ショットガンメタゲノム解析と運転管理データの総合的な解析を行った結果、DPANNアーキアの突発的な増殖にはUASB反応器の温度変化が重要であることが示唆された。さらに、DPANNアーキアがUASB反応器保持汚泥の肥大化およびバルキング現象発生に寄与していることを示唆した。(2)では,DPANNアーキアと同様な生態を持つと想定されるCandidatePhylaRadiation(CPR)/Patescibacteriaに属する3種の系統の集積培養に成功し、集積培養系のメタトランスクリプトーム解析によりこれらCPRバクテリアの機能推定を行い、DPANNアーキアの二者培養系確立に向けた宿主と共生細菌の動態に関する重要な情報を得た。加えて、DPANNアーキアが優占するUASB反応器のマイクロバイオーム解析によりDPANNアーキアがメタン生成アーキアと共生することを示唆する結果を得た。DPANNアーキアのメタゲノム情報から、DPANNアーキアの生活環を予測することに成功し、宿主への接着や基質のやり取りに重要な遺伝子群の同定に成功している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は,UASB反応器におけるDPANNアーキアの突発的な増殖の鍵となる要素としてフェノール以外に温度変化が重要である可能性を見出した。加えて,DPANNアーキアを含むUASB反応器保持汚泥の微生物群集構造解析により,DPANNアーキアがメタン生成アーキアと共生する可能性を示唆する結果を得た。さらに,DPANNアーキアのゲノム情報から宿主への宿主への接着や基質のやり取りに重要な遺伝子群の同定に成功している。特筆すべきは、DPANNアーキアと同様の生態を持つと予測されるCandidatePhylaRadiation(CPR)/Patescibacteriaに属する3種の系統の集積培養に成功し、メタン生成アーキアへ寄生すること,その寄生において重要となり得る細胞外分泌酵素の同定に成功し、3種のCPRバクテリアにおいて類似した立体構造を持つ細胞外分泌酵素が高発現していることを確認した。このようにDPANNアーキアに加え,同じ超微小微生物として知られるCPRバクテリアの生態解明にも成功しており,本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、(1)DPANNアーキア優占化反応槽の運転管理と診断技術の開発については、2020年度にスタートアップさせたDPANNアーキア優占化のためのフェノール模擬廃水処理UASB反応槽について、マイクロバイオーム解析を並行しながら有機物負荷や温度を変化させた場合におけるDPANNアーキアの動態を評価する。DPANNアーキアの診断技術については、新たに設計・条件を設定した標的DPANNアーキア特異的なプライマーセットを用いてモニタリングする。加えて、(2)DPANNアーキアの二者培養系の確立と廃水処理システム内でのDPANNアーキアの“真”の機能解明については、DPANNアーキアのゲノム情報に基づいた機能に基づいてDPANNアーキアの培養を行う。加えて、集積培養に成功したPatescibacteriaとその宿主の機能をメタトランスクリプトム解析により明らかにすることで、DPANNアーキアの培養に向けた機能情報の獲得を行うとともに、ゲノム情報から見出した培養条件を設定し、引き続きDPANNアーキアの培養を試みる。DPANNアーキアの定量は(1)で設計した金ナノ粒子プローブ法も用いる。さらにDPANNアーキアと宿主の特定には蛍光in situハイブリダイゼーション法などを用いる。また、UASB反応槽もしくはバイアル瓶を用いてDPANNアーキアを数%程度もしくはそれ以上の存在割合で集積培養できた暁には、その培養系のショットガンシークエンス及びRNA-Seqを行い、DPANNアーキアの機能発現解析を行い、その機能を推定する。
|