研究課題/領域番号 |
23K21003
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補助金の研究課題番号 |
21H01527 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24010:航空宇宙工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今村 太郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30371115)
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研究分担者 |
李家 賢一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20175037)
横関 智弘 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50399549)
玉置 義治 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10881203)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | モーフィング技術 / 空気力学 / 構造力学 / 航空機設計 / モーフィング翼 / 風洞試験技術 / 流体構造連成解析 / 低レイノルズ数流れ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、より空力・構造の観点で優れた形状・機構を有する受動的モーフィング翼型を提案することである。“空力性能の高い形状を構造や制御により実現する翼型設計” という一方向の手続きではなく、“空力性能の高い形状を空力と構造の相乗効果により実現する翼型設計”という異分野間の協調的な手続きにより実現される機構であり、ロボットアームの先端に用いられる機構に申請者らが着想を得た独創的なアイディアに基づく。研究成果は、航空機・船舶・自動車といった輸送機器だけでなく、幅広く流体機器の中で使用できる可能性を有している。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者らが提案する「空気力を受動的かつ積極的に利用する新しいモーフィング翼型」について、先行研究で得た変形特性ならびに空力特性を踏まえ、より空力・構造の観点で優れた形状・機構を提案することである。以下に、2023年度に取り組んだ3項目についてまとめる。 1)低レイノルズ数流れにおける受動的モーフィング翼にガーニーフラップを取り付けた時の空力特性を明らかにした。ガーニーフラップとは後縁付近に取り付けられる小さなフラップ状の空力デバイスであり、翼後縁付近の上下面圧力差を大きくする。風洞実験を実施し、受動的モーフィング翼に、コード長に対して1.5%及び3.0%の高さを有するガーニーフラップを取り付けることで、最大揚力係数が0.85から1.10(1.5%C)および1.28(3%C)に増加した。数値流体解析を並行して実施し、ガーニーフラップ周辺に発生する渦流れが、空力特性に影響を与えることを明らかにした。 2)従来、後縁部分のみが変形する受動的モーフィング翼型検討してきたが、本年度は前縁部分も含めて変形する受動的モーフィング翼型の検討を一昨年度から継続して実施した。一般的な翼の上下面圧力差は、前縁近傍で最も大きくなることから、この圧力差を活用できれば、より効率的に変形する受動的モーフィング翼が作成できると考えた。翼断面における柔軟な部分と剛となる部分のレイアウトを工夫することにより、揚力傾斜が顕著に増加する形状を一つ見出すことができた。 3)これまでは、NACA0024やNACA0012といった対称翼型を基準翼型とする受動的モーフィング翼を対象に、風洞試験及び数値解析を実施してきた。本年度は、非対称翼型(Clark Y翼型)について、後縁部が変形する受動的モーフィング翼を設計製作し、風洞試験を実施した。非対称翼型においても対象翼型同様に揚力係数の増加が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度終了時点で、当初想定されなかった問題点などは発生しておらず、予定通りに推移している。本課題は,A)新しい後縁モーフィング翼型のデザイン,B)前縁モーフィング機構のデザイン,C)デザインを支える技術の構築、の3つの大項目からなる。 A)新しい後縁モーフィング翼型のデザイン:従来の対称翼型を対象とした受動的モーフィング翼だけでなく、ガーニーフラップや非対称翼型(Clark Y翼型)を対象に受動的モーフィング翼を設計・製作し、風洞試験が実施できた。従来の受動的モーフィング翼同様の空力性能を有していることが明らかになった。 B)前縁モーフィング機構のデザイン:前縁および後縁にモーフィング機構を組み込んだ翼型を新たに検討し、実際に三次元プリンタを用いて模型製作を行った。後縁モーフィング翼では観察できなかった、後縁が下がる変形が観察され、揚力係数だけでなく、揚力傾斜の増加が初めて観察された。固定翼の揚力傾斜は薄翼理論によると0.11/degであることが知られているが、約2倍近い値を有する受動的モーフィング翼を実装できた。 C) デザインを支える技術の構築:2022年度までに構築した技術を使用し、研究室では風洞試験できない試験条件(レイノルズ数10の6乗)の数値解析を実施した。その結果、レイノルズ数が高くなるにつれて、受動的モーフィング翼の変形に伴う空気力増加が顕著になることが示された。レイノルズ数が高くなると境界層が薄くなるため、キャンバー変形の影響による空力性能向上が期待できることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
2023年までの結果、後縁型受動的モーフィング翼型について当初予定していた対象翼型だけではなく、ガーニーフラップ付きの翼型や非対称翼型に関する知見を得ることができた。また、前縁後縁連動型受動的モーフィング翼という新しいカテゴリーの翼型設計・製作に成功した。この結果をもとに、以下に述べる3項目(内2つは当初の計画に無かった発展的な内容)について重点的に取り組む。 A) 前縁後縁連動型受動的モーフィング翼の空力および変形特性の解明:前縁後縁連動型受動的モーフィング翼の空力および変形特性の解明に取り組む。細かな変形形状を精度良く捉えるための形状取得方法の改良、揚力係数だけでなく、抵抗係数や揚抗比についても評価し、前縁後縁連動型受動的モーフィング翼の特性を明らかにする。 B)【発展的内容】模型の曲げ剛性をコントロール:レイノルズ数が10の6乗での風洞試験を実施するために、風速を約60m/s程度とする必要がある。この時変形量を一定に保つためには、流体の動圧(流速の二乗に比例)と曲げ剛性の比として定義される無次元数(Cauchy数)を一定に保つ必要がある。この場合、受動的モーフィング翼を構成する部材のパラメータを適切にコントロールすることで、受動的モーフィング翼全体としての曲げ剛性を制御できると考えられる。 C)【発展的内容】高速な流体-構造連成解析ツールの構築:2022年度までに、風洞試験だけではなくシミュレーションにより受動的モーフィング翼型の変形特性や空力特性を解析できるようになっているが、構造解析に市販ツールを用いており解析の自動化が困難であった。特に流体解析と構造解析との間で圧力や変形形状をやり取りする手続きは人手によるものであった。流体解析と親和性の高いモデルとして、構造解析において多粒子系モデルを用いることを検討する。
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