研究課題/領域番号 |
23K21006
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補助金の研究課題番号 |
21H01541 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分24020:船舶海洋工学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
井田 徹哉 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80344026)
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研究分担者 |
綿崎 将大 広島商船高等専門学校, その他部局等, 講師 (50791125)
山口 康太 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60881216)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 海洋発電 / リニア発電モジュール / アンジュレータ型潮流発電機 / ダイレクトドライブ型波力発電機 / 高温超電導バルク / 海洋エネルギー発電 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国における潮流発電と波力発電による海洋エネルギー発電の実用化を目標に、海洋エネルギー発電に適合した小形リニア発電モジュールの研究開発を行う。タービンを用いず直接的に海洋からエネルギーを低損失に取り出し得るダイレクトドライブ型波力発電機とアンジュレータ型潮流発電機は共に幅広い沿岸海域で小規模な発電を実現できる。回転機による発電とは異なり、リニア発電機では長い直線状の機構を要し、低流速かつ短ストロークであることから高い発電効率を達成し難い。加えて、海洋発電に向けて高い制動性が要求される。本研究は海洋エネルギー発電に向けたリニア発電モジュールの研究開発を行い、海洋エネルギー開発の推進を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、回転タービンを持たないアンジュレータ型潮流発電やダイレクトドライブ型波力発電に適合する海洋エネルギー発電のためのリニア発電モジュールの開発を行うことによって我が国おける海洋エネルギー発電の実用化を目的として実施された。アンジュレータ型潮流発電システムは潮流を膜のうねりに変換して発電を行うもので、回転タービンを用いないことから、発電に必要な最低流速は0.4 m/s程度と低く見積もられ、我が国の近海に適した発電手法といえる。膜のうねりから発電をするためには、直線運動から電力を得るリニア発電モジュールを用いる必要がある。しかし、1個のリニア発電モジュールにおける変位量は20cm余りと小さく、駆動周波数も0.4Hz程度と小さい。そして、空気と比べて約840倍の密度を持つ海水の生み出す力は風力発電などのそれと比べて大きく、発電機にはそれに十分耐えるための構造が必要となる。従って、(1)低流速駆動(2)短ストローク(3)高制動性という条件の下で十分な発電出力を得ながら小型化を果たすためには、発電機の内部構造において相応の工夫が必要となる。本年度は昨年度に検討を行った発電部について、有限要素法電磁界解析とミニチュアモデルの試作を通じて概念設計を行った。試作機の界磁子についてはNd-Fe-B系永久磁石の採用を考え、また将来的な性能向上のために高温超電導バルク磁石の採用についてそれぞれ検討を重ねた。一方、電機子コイルについては、当研究室で回転機の駆動に使用実績のある渦巻型コイルを使用する予定であったが、発電部周辺の磁束密度分布に関する解析及び実験を通じて渦巻型コイルを改良した新型コイルの発案に至った。この「多層鉄芯入渦巻型コイル」は発電出力の大幅な増加をもたらす可能性が示唆されており、今後はこのコイルを電機子に採用することとして発電部ならびに機構部の設計を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リニア発電モジュールの実用例は少なく、また海洋発電を想定した製品は市場に見られないため、既存の製品を参考にすることが難しいことから、前年度には高い発電出力を実現するための方策について検討を重ねた。本年度は小型のリニア発電モジュールを実現するために、新たに「複層ハルバッハ配列」を考案し、それを界磁子に採用することを検討した。複層ハルバッハ配列は多層化したデュアルハルバッハ配列において重量と容積を軽減しながら出力の減少を抑えた構造であり、リニア機のみならず回転機においても適用が可能な技術である。一方、電機子に関しては、発電部の磁束密度分布に関する有限要素法電磁界解析と実験によって「多層鉄芯入渦巻型コイル」を発案した。以前から本研究室でよく用いてきた渦巻型コイルには鉄芯を挿入しても電機子出力の向上を期待できないという欠点があったが、多層鉄芯入渦巻型コイルにであれば鉄芯の効果によって総磁束を大きく増加させることが可能となる。この多層鉄芯入渦巻型コイルを電機子に採用した場合に、発電出力が大きく増加することが示唆されており、本年度は多層鉄芯入渦巻型コイルの採用を前提に概念設計を進めることができた。この複層ハルバッハ配列と多層鉄芯入渦巻型コイルについては特許出願を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度はリニア発電モジュールを製作し、その発電特性について評価を行う。それに先立ち、評価のための試験装置を製作し、リニア発電モジュールと結合して使用する。発電出力の評価に関しては、電力計と電子負荷を利用することとして、それらへ電力を通電するための試験回路を合わせて製作する。また、電機子と界磁子については、それぞれ電気・磁気特性について個別に評価を行い、その結果をリニア発電モジュールの性能評価へ適用する。発電に際して必要な負荷の大きさについては、アンジュレータ型潮流発電システムのためのメンブレン構造の試作機を元に算出し、それを評価の際に適用する。また、波力発電についても一般的な動作条件を想定して評価に適用する。リニア発電モジュール以外の課題として、本年度は発電値として見いだした鳥羽市における潮流の流速に関して引き続き計測を行い、本研究の次段階となる潮流発電機の開発に向けての基礎データの収集を行う。また、昨年度に行った特許出願については関係各所との協議を進め、特許庁からの連絡を待って審査請求を行って知財化を目指す。
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