研究課題/領域番号 |
23K21019
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補助金の研究課題番号 |
21H01570 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳澤 大地 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70611292)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 群集 / ボトルネック / 退出 / 流入 / 待ち行列 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ボトルネックに関するの五つのテーマ (1) ボトルネック背後の部屋の大きさの影響、(2) ボトルネック前の経路の影響、(3) 通過するボトルネックと引き返すボトルネックの違い、(4) ボトルネックの数の影響、(5) ボトルネック手前の構造や障害物・残る人などの位置の影響について研究を行い、最終的に五つを統一的に扱うことができるモデルを作成する。そして、総退出時間や待ち時間・サービス窓口の利用率などをすぐに見積もることができる理論式を導出する。またモデルを解析したりシミュレーションを行ったりすることにより、群集の流れをスムーズにするボトルネック周辺の構造を提案する。
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研究実績の概要 |
本研究対象の1つである「ボトルネックの数の影響」に関してさらに進展があった。昨年度は、複数のボトルネックが直列に繋がっている場合に、入口のボトルネックでの流入を制限し、ひとりひとりの総通過時間を増加させることなく系内の混雑度を減少させ、より快適な移動を実現できることを理論的に明らかにした。今年度は、この結果が規制退場というより現実的な枠組みの中で有効であることを示した。 イベント会場周辺の駅では、極度の混雑を避けるために、大規模なイベント後に規制退場が行われることがある。規制退場では、人々はいくつかのグループに分けられ、グループごとに順番に退出する。そして、グループ数と各グループの退出開始時刻の間隔を調整することで、一度に大勢の人が駅に向かってしまうことを防ぎ、混雑を緩和することができる。 まず本研究では、Level Of Service (LOS) という群集運動でよく用いられる指標を発展させた Level Of Discomfort (LOD) を新たに開発した。LOD は、群集密度とその密度(混雑)持続時間の積であり、規制退場を通じて蓄積された不快感を表現することができる。 また LOD に含まれるパラメータを決定するためにアンケート調査も実施した。 今回想定した条件下では、アンケート結果を反映させたモデルの計算結果から、来場者を 2 つまたは 3 つのグループに分けることで、効果的な規制退場が行えることが分かった。さらに 2 種類の LOD 関数の結果を比較し、有効なグループ数は LOD 関数の詳細な形に強く依存しないことも確認できた。 また、このボトルネック手前の流れを制御する方法を交通流に応用した研究でも成果を挙げることできた。さらに分岐と合流により構成されるボトルネックでは、流入方法によっては混雑が発生しない流れのメタ安定状態が生じることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
規制退場という人が複数のボトルネック(イベント会場からの退出、狭い歩道、駅での待ち時間など)を通過する現実的なシチュエーションを対象にした研究を行うことができた。また、Level Of Discomfort (LOD) の新規開発などの理論的な成果に加えて、アンケート調査の結果も得ることができた。さらに、交通流などの群集以外の流れや道のネットワーク構造により生じるボトルネックがある流れに関しても、流入のコントロールが有効であることが分かった。 従って、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションでは、引き返すボトルネックの研究に特に力を入れる。チケット販売窓口などはチケットを購入したあと引き返すような動線になっていることも多い。ファーストフード店などでは、窓口付近で待機し、受け取り後に待機している人の中を通過しなくてはならない場合もある。また、マラソンにおける給水所のように走っていたコースに戻るタイプもある。このような引き返すタイプのボトルネックでは、サービスを終了した人が、あとから来る人との衝突を避けなければならない。単純なモデルでこれをシミュレーションすると、現実では起こりえないデッドロック(人が詰まって動けなくなってしまう)現象が見られることが知られている。デッドロックを回避する方法は対向流のシミュレーションで十分に研究されているが、対向流のような単純な流れで有効なモデルで、上記で例示したような現実の引き返すボトルネックをシミュレーション可能かどうかは定かではない。そこで、既存の対向流の成果を活用しつつ現実の引き返すボトルネックをシミュレーション可能なモデルを完成させる。 また、ボトルネック背後やボトルネック前の経路の影響を明らかにするための基礎的な群集実験も行う。ボトルネック前後の状況は、ボトルネック通過時間に大きく影響するといわれることが多いが、そこに焦点を当てた研究は非常に少ない。そのため実験データをまとめるだけでも未来の群集運動の研究に大きく貢献できると考えられる。また、これらの影響をパラメータとしてモデルに組み込むことができれば、現実的で実用的なシミュレータを構築することができる。
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