研究課題/領域番号 |
23K21020
|
補助金の研究課題番号 |
21H01571 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25020:安全工学関連
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
若月 薫 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60408755)
|
研究分担者 |
森川 英明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10230103)
鮑 力民 信州大学, 学術研究院繊維学系, 特任教授 (10262700)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
|
キーワード | 防護服 / 高性能繊維 / 産業資材 / 紫外線 / 力学特性 / アラミド繊維 / 紫外線ばく露 / 引張強度 / 織物構造 |
研究開始時の研究の概要 |
織物が持つ力学的物性は,①素材の性質,②糸の物性(引張,曲げ,圧縮),③織物構造の組合わせにより発現する.全ての素材は,紫外線により劣化を生じることは明らかであるが,アラミドをはじめとする高性能繊維はその度合いが著しい.防護服・産業資材は,使用される用途ごとに各種高性能繊維をブレンドし,用途にあわせた織物構造で作るため,糸の力学的特性の劣化パターンは無限に発生する.ゆえに,チャレンジすべき課題は,産業資材・防護服・e-Textileに使用されるアラミド等の高性能繊維織物の紫外線に対する引張強度の劣化を紫外線ばく露された糸の物性(引張,曲げ,圧縮)と織物構造から予測する手法を確立することである.
|
研究実績の概要 |
第一期後期としてアラミド糸の紫外線に対する力学的特性の評価及びモデル化(糸モデルの作成)を実施した.紫外線ばく露量は,過去に防火服生地の紫外線ばく露による引張強度の劣化について研究を活用し, 34,68,102,170,204 及び340 MJ/m2とした. 使用した全ての紡績糸において,強度保持比は,紫外線ばく露エネルギー比の増加に伴い,指数関数的に減少した.紫外線ばく露エネルギー比に対する強度保持比のカーブフィッティング行い,m-Aramidの混紡率が40 %以上の時,60 %以下の時を基準とした2種類の劣化係数に分類できた.糸,生地におけるm-Aramid及びp-Aramidの混紡率に対する劣化係数αy及びαf は,定性的に同じであったが,混紡率m-Aramid 0%から40%のグループのαy及びαfの差率は27.1 %(SD = 3.7)であった.混紡率m-Aramid 60%から100 %のグループの平均αy及び平均αfの差率は23.5 %(SD = 4.7)であった.この差は,糸の破断に対する生地の構造及び破断メカニズムが及ぼすギャップと考える.この数式モデルの活用は,高性能繊維の織物が紫外線ばく露を受けた際に生じる引張強度の低下を糸の引張強度と織物構造に起因する補正を行うことで予測可能であることを明らかにした. 次に,構造の異なる紡績糸(二重構造糸及び2種類の繊維混紡率の撚糸)の引張強度を測定し,糸の強度劣化モデルの適用範囲を調べた.二重構造糸及び撚糸のαyは,それぞれ0.47及び0.65であった.他方,二重構造糸及び撚糸のαfは,それぞれ0.35及び0.50であった.これら結果は糸の二重構造は劣化指数αを減少させることを示している.高強度かつ紫外線による劣化の速いp-Aramidをm-Aramidで覆う構造が劣化を遅くしたものと考える.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第二期までの研究を通して,紫外線ばく露による糸の引張強度の特徴は定性的に織物と比べて速く低下することを明らかにした.この差は,糸は織物と比較し紫外線を受ける表面積が大きいこと,紫外線が糸内部に到達した深さは,糸単独の場合と織物の場合と異なること,織物の経糸, 緯糸の交差部で紫外線ばく露の影になる点が構造上生じること,及び織物の引張時の破断は糸の破断に加え,織物を引っ張る際に経糸と緯糸の交差部で生じる曲げ,圧縮による複合的な抵抗力が生じることと考える.第二期で予定した紫外線照射時に縦糸・横糸の重なりで生じる影の力学的物性への影響(R4年度)における,紫外線照射時の糸と糸が交差する際に生じる影の影響について,SEMなどの外観観察による影響を評価できなかった(現在進行中).ついては,R5年度前期にこの課題は終了させる予定である.ただ,予定していた高性能繊維の織物が紫外線ばく露を受けた際に生じる引張強度の低下を糸の引張強度と織物構造に起因する補正を行うことで予測可能であることを明らかにしたことは,残り期間における研究の進め方に大きな成果を上げたと考える.
|
今後の研究の推進方策 |
第三期:高性能繊維糸を用いた平織物における紫外線に対する強度劣化の実施と糸モデルの平織物モデルへの展開(R5年度).第二期で得られた糸の重なり合いによる影響調査を基に,第一期で作成した紡績糸を使用した平織物を製作し,紫外線ばく露を行い,引張強度を測定する.この実験において製作する平織物は,仕様を糸番手20及び40,目付を200g/m2, 300g/m2とすることで,織物における紫外線に対する引張強度劣化の構造依存性を評価する.この仕様は防護服や作業資材の織物として使えるしなやかさの範囲である.第一期の糸モデルの平織物への応用展開を行い,織物構造(糸番手,目付)による補正パラメータを加えた織物モデルとする. 第四期:高強度織物構造(リップストップ)を加えた平織物に対する紫外線に対する強度劣化の実施(平織物の高強度構造織物への適用,R6年度)高性能繊維織物は引裂防止の目的でリップストップ(太い繊維を格子状に入れる織物構造)を加えている.第三期で製作した織物構造にリップストップを単数・複数加えた織物を製作し,紫外線ばく露及び引張強度を測定する.第三期で得た結果と比較することで,紫外線に対する引張強度劣化の高強度織物構造による効果を評価する. 第三期の織物モデルに高強度織物構造(リップストップ本数)による補正パラメータを加えた最終モデルを完成させる.
|