研究課題/領域番号 |
23K21040
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補助金の研究課題番号 |
21H01627 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70255595)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2021年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 自己集積 / 自己組織化 / バイオミネラル / 結晶成長 / バイオミメティック / 自己集合 / ナノ材料 / ナノ結晶 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、バイオミネラルの階層構造を模倣し、多様な機能をもつ無機結晶ナノブロックのメソクリスタルを有機フレームワークとともにミリメートルスケールで大規模に配列させた階層的構造体を構築する。メソクリスタルが高い強度性・誘電性・磁性・光学特性・イオン伝導性など第1機能を担い、有機フレームと追加挿入された機能分子が柔軟性・電子伝導性・刺激応答性・動的特性などの第2機能を担う。これらの組み合わせにより「融合機能」を開拓し、軽量・高強度・環境親和性・高靭性・耐久性・柔軟性を併せ持つ構造材料、および、圧力・温度センシングや構造色表示およびエネルギー変換や生体親和性などを併せ持つ機能材料を開発する。
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研究実績の概要 |
研究目的は、多様な無機ナノブロックが任意な方位・サイズで規則配列した「メソクリスタル」を大規模化して実用的デバイスへと発展させ、多彩な融合機能を開拓することである。この目的を達成するため、2021年度(第1段階)では、メソクリスタルの構成単位となる無機ブロックの合成手法の確立と配列手法の検討をおこない、2022年度(第2段階)では、機能発現に適した結晶ナノブロックの配列制御、およびデバイスの手本となるバイオミネラルを詳細に解析し、精緻な無機・有機複合構造に関する新たな知見を得た。2023年度では第3段階として、(3-1)無機ナノブロックの配列構造体のさらなる大規模化と階層化、(3-2)配列に由来する機能の評価、(3-3)デバイスの手本となるバイオミネラルの詳細な解析に取り組んだ。 (3-1)ナノブロックの配列制御では、マクロフレームとしてコラーゲンやセルロースを適用し、それぞれミリスケールの配列体の構築に成功した。コラーゲンスポンジに存在するマイクロチャネルにフッ素アパタイトナノロッドを三次元配向配列させ、歯のエナメロイドの類似体が構築された。また、セルロースナノファイバーの集積によるシート内に炭酸カルシウムナノロッドを配列させ、さらに結晶を成長させることで、硬質な貝殻類似の構造が形成された。 (3-2)ハロゲン化鉛ペロブスカイトと有機配位子によって得られる配向配列体において蛍光の高輝度化・安定化と光による可逆的に蛍光強度制御が可能であることを見出した。これは配列に由来する機能として有益な知見である。 (3-3)大規模配列の手本とし、フレキシブルな炭酸カルシウムであるカタツムリの閉弁器官やサメの歯のエナメロイドについて、ナノ構造を詳細に解析するとともに、機械的特性との相関を調査した。有機物含有量の変化による硬質・軟質の二重構造が柔軟性に重要であることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノブロックが規則配列した「メソクリスタル」の実用的なデバイスへの発展を実現させるためには、2021年度(第1段階)では、生体構造材料としてフッ素アパタイトや炭酸カルシウムのナノロッド、環境親和材料として硫酸ストロンチウムナノロッド、蛍光材料としてハロゲン化鉛ペロブスカイトナノキューブ、磁性材料として酸化鉄ナノキューブ、誘電材料としてチタン酸バリウムナノキューブ、光学材料としてシリカナノ粒子や粘土ナノシートの合成に成功した。2022年度(第2段階)では、多様な無機ナノブロックを数ミリメータの範囲で大規模に配列させるとともに、ハニカム状パターン内での集積にも成功した。さらに、配列性に由来する特異な機械的特性・蛍光特性・磁気特性も見い出している。また、バイオミネラルにおける柔軟で高強度な炭酸カルシウムやリン酸カルシウムの階層構造の解析にも大きな進展がみられた。2023年度(第3段階)においては、達成すべきナノブロックの大規模の配列を有機鋳型によって実現し、さらに配列による特異な光学的特性が認められているとともに、手本となるバイオミネラルのナノ構造・階層構造についても新規な知見が得られている。以上の成果は当初の研究計画において期待されたものとほぼ合致していることから、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、研究の最終段階として(1)無機ナノブロックの大規模化・階層化された配列構造の機能発現に注力するとともに、(2)バイオミネラルの解析に基づくナノブロックの配列プロセスの解明とその模倣構造体の構築を試みる。(1)では、3種類の無機構造体の大規模配列構造と配列に由来する機能に着目する。具体的には、(1-1)炭酸カルシウムナノロッドとセルロースナノファイバーの複合化による貝殻類似体の作製とその機械特性の制御、(1-2)ハロゲン化鉛ペロブスカイトナノキューブの大規模規則配列体の作製と特異な光機能性の制御、(1-3)コバルトフェライトナノキューブの大規模規則配列体の作製と特異な磁性機能の制御に取り組む予定である。また、(2)バイオミネラルの解析では、次の3つのバイオミネラルに注力する。具体的には、(2-1)サメの歯のエナメロイドにおけるフッ素アパタイトナノロッド配列体の構造と形成プロセスの解明とその模倣、(2-2)貝殻の交差状構造と形成過程の解明とその模倣、(1-3)イネ科植物表面のシリカ層の構造と形成過程の解明とその模倣に取り組む予定である。
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