研究課題/領域番号 |
23K21045
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補助金の研究課題番号 |
21H01655 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2024) 大阪府立大学 (2021) |
研究代表者 |
沈 用球 大阪公立大学, 国際基幹教育機構, 教授 (20336803)
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研究分担者 |
金 大貴 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00295685)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
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キーワード | 光誘起変形 / 光物性 / 機能性材料 / 弾性波 / 光熱変換 / 光駆動 / 光学素子 / 光学特性 / 過渡応答特性 / 光誘起 / 光エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,半導体材料である3元タリウム化合物において観測された,光照射により巨大で局所的な変形を示す現象の発生メカニズムを解明することで,光エネルギーの新たな利用価値を見いだすものである。 ここでは,この3元タリウム化合物を対象とし,光照射時の変形量や光学特性の変化およびそれらの過渡応答特性を調べることで,本現象が生じるメカニズムを解明する。さらに,得られた基盤データから,本現象を利用した光駆動装置の試作を実際に行う事で,本現象を利用した新たなマクロスケールでの光駆動機構開発の可能性を示す。
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研究実績の概要 |
当該年度は、3元タリウム化合物の光誘起変形現象の応用に焦点を当て、その光制御の機構を探るために光照射位置による変形の空間制御性を調査した。また、光学素子への応用として、光照射による光学定数の変化を明らかにする研究を行った。 光誘起変形現象において、その過渡応答特性の位置依存性を調査し、光照射中心部とその周辺部での変形の過渡応答特性を明らかにした。円形のガウシアン分布の光照射に対し、光照射スポット中心部では、直接加熱による速い成分が支配的であり、中心からの距離が離れると、徐々に速い成分が無くなり熱伝導による遅い成分が支配的となることがわかった。この結果は、試料表面形状の変化による光駆動機構を設計する場合、ポンプ光照射領域によりその速度制御が可能であることを意味しており、変形速度が速い領域と遅い領域を試料表面上に形成させることで、例えば光により試料表面を波状に変形させ物質を駆動させる駆動機構が設計可能であることを示した。 さらに、光照射時の変形が試料の光学定数(屈折率およびその異方性)に与える影響を調査した。このために、2次元イメージング計測が可能なミュラーマトリクス測定系を用いた。その結果、局所的な光照射により試料表面付近に大きな弾性歪が発生し、光弾性効果による光学定数変化が観測された。また、ポンプ光形状を変化させることで、光学定数変化の面内分布が変化することを明らかにした。この結果は、光の照射位置やポンプ光形状により、試料を透過する光の位相の空間的制御が可能であることを意味しており、この現象を利用した新たな光学素子の提案が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポンプ光としてミリ秒パルスレーザーを用いた光誘起変形現象の過渡応答特性の空間制御性を調べた実験では、予定通り研究が進捗し成果の発表も行った。また、測定機器としてマルチカラーレーザー変位計を導入することで光照射時の変形量の絶対値を正確に測定可能にし、本現象の原因解明に向けた研究を進めることができた。さらに、ポンプ光照射による光学定数の面内分布計測やポンプ光形状によるその変化に関する研究についても成果が得られ、学会発表や論文発表を行った。 一方、ナノ秒パルスレーザーを用いた過渡応答特性や弾性波発生に関する研究では、干渉系を用いた測定系では観測が困難と判断し、ナイフエッジ法を用いたより感度の高い測定方法に切り替えて実験を行っている状況である。次に、この手法による光誘起弾性波の観測とその特性評価を実施し、光駆動機構の試作を可能にする。 本現象の原因解明という点では、光誘起変形現象の過渡応答特性から、関係している物理現象を明らかにした。残る課題は、変形量の絶対値がシミュレーション計算結果との乖離が生じる原因を解明することである。 このように、一部、光誘起弾性波の観測という点で当初の予定より研究が遅れているものの、全体としては、得られた研究成果の発表を行い順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
光誘起変形現象の過渡応答特性について、その変形量の絶対値を正確に測定し、シミュレーション計算結果と比較し、本現象の原因解明を行う。ナノ秒パルスレーザーを用いた光誘起弾性波の観測については、新たに構築したナイフエッジ法による測定を併用し、表面弾性波やバルク弾性波の観測を実現し、その特性を明らかにする。 基礎研究面では、国際共同研究によるフォノンに関する理論計算を継続し、残された課題である実験値とシミュレーション計算結果との変形量の乖離について原因を明らかにする。 薄膜での本現象観測を行うため、3元タリウム化合物の薄膜化にも挑戦する。 これらの研究結果をまとめて、本研究の目的である3元タリウム化合物の光誘起変形現象を用いた光駆動機構や光制御光学素子の設計を行い、実際に応用への可能性を示す。
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