研究課題/領域番号 |
23K21065
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補助金の研究課題番号 |
21H01748 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28020:ナノ構造物理関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤井 稔 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00273798)
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研究分担者 |
杉本 泰 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40793998)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | トロイダル双極子共鳴 / メタサーフェス / 光電流 / シリコン / 近赤外 / 吸収増強 / 光電流増強 / トロイダル双極子 / 光検出器 / シリコンナノディスク / アナポール状態 |
研究開始時の研究の概要 |
高屈折率誘電体のナノ構造は,電気・磁気多重極子モードに加えて,トロイダル多重極子モードを保持する.トロイダルモードは,トーラスの表面のメリディアンに沿って変位電流が流れるモードであり,トーラス内を磁場が周回する.電磁場がトロイダルループ内部に強く閉じ込められているため放射損失が小さく,電気・磁気モードとは異なる電磁場応答を示す.そのため,トロイダルモードの特性を積極的に利用すると,電気・磁気モードでは実現困難な機能を有するメタサーフェスを実現できる可能性が高い.本研究では,トロイダル双極子共鳴を様々な光・電子デバイスに応用するためのメタサーフェスプラットホームを実現する. .
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研究実績の概要 |
これまでに,シリコン薄膜上にアスペクト比が小さいシリコンナノディスクのHexagonal arrayを配列した構造について,シミュレーションにより基本特性の解析を行ってきた.それにより,構造パラメータと共鳴モードの関係を明らかにし,目的の波長で高い吸収増強度と高Q値を同時に実現する構造の探索を行った.また,前年度に引き続きシミュレーションにより決定したナノディスクアレー構造を大面積に形成する技術の開発を行い,光吸収特性と光電流特性の評価を行ってきた.さらに,前年度に見出したシリコンナノディスクアレーとミラーを組み合わせた新構造(Fabry-Perot bound states in the continuum(FP-BIC)の発現により入射光の完全吸収を実現できる構造)を実現すべく,プロセスの開発を行った.作製した構造を評価したところ,シリコンナノディスクアレーとミラー間のスペーサーを変化させると光電流量が変化することを実験で観測した.これらの研究と並行して,トロイダル双極子共鳴の光磁場増強効果を利用して分子の一重項-三重項間の直接遷移を可能にし,それにより三重項状態を介した化学反応を促進する研究を実施した.その結果,一重項-三重項間直接遷移により一重項酸素生成の光増感剤となる分子を直接励起可能である事を実験的に示すことに成功した.得られた結果は,Small誌(インパクトファクター:13.3)に発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シリコンナノディスクアレーメタサーフェスのトロイダル双極子共鳴による狭帯域近赤外光吸収とそれによる光電流増強に関して、当初予定していた研究をほぼ終了し論文を執筆した.論文はACS Photonics誌に発表した.さらに、研究の新しい展開として,シリコンナノディスクアレーとミラーを組み合わせた構造において,Fabry-Perot bound states in the continuum(FP-BIC)の発現により入射光の完全吸収を実現できることをシミュレーションにより示した.シミュレーションの結果を論文にまとめJournal of Applied Physics誌に発表した.また,トロイダル双極子共鳴の光磁場増強効果を利用すると分子の一重項-三重項間の直接遷移が可能になり,それにより三重項状態を介した化学反応を促進されることを実証し,成果をSmall誌に発表した.
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今後の研究の推進方策 |
シリコンウエハ上に金ミラーを形成し、その上にシリカのスペーサーを介してナノディスクアレーを形成するプロセスを確立する。特に、スペーサー厚がFP-BICの特性を決める重要なパラメータであるため、その依存性を実験的に検証する。作製した構造に対して積分球を用いた拡散反射特性と拡散透過特性の測定を行い、吸収スペクトルを得る。得られた結果とシミュレーション結果を比較することにより、構造パラメータの最適化を行い、最終的には本構造が完全吸収を示すことを実証する。光学測定による吸収増強の実証の後、デバイス上部両端に電極を形成し光電流測定が可能な構造を形成する。各種構造パラメータと光電流スペクトルとの関係を詳細に調べ、完全吸収による光電流増強を実証する。助成金は、ナノディスクアレー構造の評価に用いる走査型電子顕微鏡の購入費用の一部に充てる(他の予算との合算)。 提案している構造では、シリコンのバンドギャップ内に形成された欠陥準位を介した電子励起を用いる事により、バンドギャップ以下の波長領域で光電流を生成している。しかしながら、欠陥準位を介した光電流生成の効率は非常に低く、それが受光感度を制限する主な要因になっている。これまでは、スパッタリングにより堆積したアモルファスシリコンを熱処理することにより形成した多結晶シリコンの欠陥準位を用いており、それを積極的に制御することを行っていなかった。そこで、今年度はドーピング及び太陽電池用のブラックシリコンの作製に用いられている欠陥制御技術を導入し、欠陥準位を介した光電流生成効率の増大の検討を行う。それにより、トロイダル双極子共鳴とFP-BICを融合した構造において、高い受光感度を実現する。
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