研究課題/領域番号 |
23K21072
|
補助金の研究課題番号 |
21H01784 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分28050:ナノマイクロシステム関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
名村 今日子 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20756803)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
|
キーワード | 蒸気バブル / 核形成 / マイクロ物体駆動 / 光熱変換 / ナノ構造薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,水などの流体中でマイクロメートルスケールの物体を操作する技術を開発します.力の強さはmN-μNオーダーで,空間的時間的に自在にものを動かせるような技術を目指します.力の源には加熱によって生じる蒸気リッチな気泡を利用します.まず,蒸気リッチな気泡の生成条件や安定化のメカニズム解明を行います.そして気泡の生成・消滅に伴う衝撃や気泡の激しい振動を利用して,物体駆動に挑戦します.
|
研究実績の概要 |
バブルは表面張力やダイナミックな体積変化,生成消滅が可能であることなどから,ソフト機械部品としてすでに広く注目されている.しかし,μm・nmスケールでの挙動制御は確立されていない.そこで本研究では,ナノ構造光熱変換薄膜を用いた流体の局所加熱によって,蒸気バブル生成消滅過程および周辺に働く力の解明を行っている. 令和3年度は,回折位相法を用いた高速定量位相顕微鏡の試作とバブルが発生する力の評価のための試料・装置作りを進めた.流体の局所加熱によってバブルを生成したり,その動きを制御したりするためには,流体中の温度分布を知ることは重要である.流体の光の屈折率は温度によって変化するので,定量位相顕微を行うことで流体中の温度分布に関する情報を得ることができる.そこで,光熱加熱によるバブルの生成とその定量位相顕微鏡を用いた観察を同時に行うことができる光学系を作製した.そして,空気バブルが生成する時の周辺流体中の位相分布の変化を捉えることに成功した.さらに,位相分布から温度分布への逆変換にも成功した.今後は高速度カメラの導入等により定量位相顕微の高速化を行う. また,バブルダイナミクスおよび周辺温度の測定と発生する力の評価のための試料・装置作りでは,光熱変換薄膜をつけた数百μm程度の大きさのチップを作製した.また,チップにレーザーを照射しながら,チップの動きを多方向から捉えるための光学系を作製した.さらに,チップ上でのバブル生成密度を高めるために,光熱変換薄膜の非稠密パターンを作製する手法を検討した.その結果,チップと同程度の範囲に最大5個のバブルを同時に生成し,強い対流を生むことに成功した.今後はチップの動きの評価などを行っていく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,(A-1)回折位相法を用いた高速定量位相顕微鏡の試作および(B-1)バブルダイナミクスおよび周辺温度の測定と発生する力の評価のための試料・装置作りを進めることを予定していた.これらについて,以下の通り進捗があったので,本研究課題は概ね順調に進んでいると判断した. まず(A-1)回折位相法を用いた高速定量位相顕微鏡の試作について,基礎的な装置の作製と位相像取得の原理確認を行った.光熱加熱によるバブルの生成とその定量位相顕微鏡を用いた観察が行える光学系を自作した.そして,空気バブルが生成する時の周辺流体中の位相分布の変化を捉えることに成功した.この位相分布の変化は液体中の温度分布の変化に対応しているので,位相分布から温度分布への逆変換を行った.そして,得られた温度分布が妥当な物であることを確認した.進捗は予定通りであり,今後は高速度カメラの導入等により定量位相顕微の高速化を行う. また,また,(B-1)バブルダイナミクスおよび周辺温度の測定と発生する力の評価のための試料・装置作りでは,光熱変換薄膜をつけた数百μm程度の大きさのチップを作製した.また,チップにレーザーを照射しながら,チップの動きを多方向から捉えるための光学系を作製した.さらに,チップ上でのバブル生成密度を高めるために,光熱変換薄膜の非稠密パターンを作製する手法を検討した.その結果,チップと同程度の範囲に最大5個のバブルを同時に生成し,強い対流を生むことに成功した.以上の進捗は予定通りであり,今後はチップの動きの評価などを行っていく.
|
今後の研究の推進方策 |
バブルの核形成条件と蒸気バブル連続生成条件の解明し,それを物体駆動に応用するためには,バブル生成直前の液体温度やその分布を明らかにする必要がある.令和4年度は,前年度検討しておいたカメラ等の研究設備を購入し,(A-1)の高速定量位相顕微鏡を完成させる.特に,撮影速度10 Mfps以上かつ5万画素以上の高速度ビデオカメラシステムを導入することで,世界最高速の温度解析を行うことができるようにする.また,これを用いて,(A-2)高速定量位相顕微鏡を用いたバブル核形成条件の解明を行う.バブル核形成には,流体の沸点以上の高温が必要であることが知られている.局所加熱時の昇温速度や温度分布を系統的に変え,バブル核形成時の周辺温度分布が,バブルサイズやジェット流速度・方向などに与える影響を明らかにする.さらに,蒸気ジャイアントバブルが生成した後,通常は空気バブルの成長が始まるが,この過程を詳しく調べることで,(A-3)の蒸気バブル連続生成条件の探索に着手する. また,前年度に作製した試料・光学系を用いて,(B-1)バブルダイナミクスおよび周辺温度の測定と発生する力の評価を行う.光熱変換薄膜を持つマイクロチップを作製し,その上でバブルの生成を行う.マイクロチップの動きから発生する力の評価を行う.さらに,(B-2)壁面状態が気液固境界の滑りに伴う力の発生に与える影響の解明に着手するために,構造や表面化学状態を系統的に変えた光熱変換ナノ構造薄膜を作製する.特に,動的斜め蒸着を用いて作製した斜めコラム構造を利用して,異方性をもった構造が気液固境界線の動きに与える影響を明らかにする.以上の計画を進めるため,流体観察用材料,薄膜材料,物体駆動観察用チップ,化学薬品等の消耗品を購入する予定である.また得られた成果は応用物理学会などで発表する予定である.
|