研究課題/領域番号 |
23K21076
|
補助金の研究課題番号 |
21H01790 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
下谷 秀和 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60418613)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
|
キーワード | 有機電界効果トランジスター / 有機半導体レーザー / 有機電界効果トランジスタ / 有機半導体 / 有機レーザー / 電界効果トランジスター / レーザー / 有機エレクトロニクス / 電界効果トランジスタ |
研究開始時の研究の概要 |
有機半導体は様々な発光波長の材料を容易に合成できることや発光効率の高さから発光素子への応用が期待されている.なかでも有機レーザーは幅広い波長領域をカバーするため光励起の色素レーザーが実用化されているが,別途励起光源が必要なため大型で高価である.そこで,無機半導体レーザーのような電流注入による有機半導体レーザーの実現が当該分野の大きな挑戦となっている. 本研究では研究代表者がこれまでに開発したレーザー素子の作製方法の改良により安定性の向上を図り,このレーザーの特性を明らかにするとともに,新規素子構造の開発により閾値電流と駆動電圧の低減および空気中での動作の実現を目的とする.
|
研究実績の概要 |
有機半導体電界効果トランジスタの不安定性の大きな要因に不純物によるキャリアのトラップがある.また,不純物はキャリア易動度の低下の原因ともなりうる.本研究の最終目的のためには有機半導体単結晶を用いた電界効果トランジスタにおいて高い安定性とキャリア易動度が必要である.有機半導体材料は一般に溶解度が低いため,溶媒を用いた精製法や結晶成長法を利用できない.そのため,昇華精製した後,物理気相輸送法で単結晶が作製されている.不純物が高濃度のときは堆積物の色で目的物質と不純物を見分けることができるが,純度の良い材料をさらに高純度にしようとすると目視では不純物濃度を判別できない.そこで,昇華精製と物理気相輸送法に緩やかな温度勾配をつけて位置ごとに堆積物を採集し,体積位置の温度と不純物濃度の関係を明らかにした.不純物濃度は示差走査熱量計(DSC)による熱測定から凝固点降下法により求めた.その結果,昇華位置ごとの不純物濃度を明らかにし,昇華後に回収すべき領域を決定した.さらに,昇華精製の回数と不純物濃度の関係を明らかにすることができた.また,time-of-flight法とトランジスタ特性から,それぞれキャリア易動度を測定し,4端子法によるトランジスタ特性の温度依存性測定から,トラップ準位密度のエネルギー依存性測定を行った.以上より,電子および正孔の易動度の不純物濃度依存性を明らかにし,また,それをトラップ準位密度のエネルギー分布の違いから説明することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は期間中に以下の4項目を計画している. (1) 素子の安定性向上.(2) 発光の時間的・空間的コヒーレンスの測定: 前項で出力が安定すると測定が可能になるので,干渉計を構築し,時間的・空間的コヒーレンスを測定する.(3) 有機レーザーFETの性能向上: 本研究の有機レーザーFETは絶縁層表面に回折格子を持つDFB共振器を用いる.これは半導体と絶縁体の界面にポテンシャルの揺らぎをもたらす.FETではキャリアは半導体の絶縁層近傍を流れるため,ポテンシャルの揺らぎによりキャリア易動度が低下する.そこで,回折格子をキャリアの輸送に影響しない単結晶上部に作製する.(4) 空気中での動作可能な有機レーザーFETの開発: 有機単結晶への電子注入には電極にカルシウム等の仕事関数の小さい金属がもちいられるが,それらは反応性が高く空気中での使用に適していない.そこで,応募者らが開発した仕事関数の大きい金属から低抵抗で電子を注入できる電極構造(T. Kanagasekaran, H. Shimotani et al., Nature Commun. 8, 999-1-9 (2017))を導入する.さらに,機半導体単結晶を他の有機素子で用いられるような封止材で覆うことにより有機半導体レーザーFETの空気中での動作を目指す. 2023年度中に(1)が達成されており,(4)は(1)~(3)に比べて要する時間が短いことを考えると,おおむね予定通りに進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は以下の課題に取り組む. - 発光の時間的・空間的コヒーレンスの測定: 発光がレーザー光であることの確証を得るには発光の時間的コヒーレンスと空間的コヒーレンスを測定する必要があるが,これまでのところ出力が時間依存するために得られていない.本研究により前項で出力が安定すると測定が可能になるので,干渉計を構築し,時間的・空間的コヒーレンスを測定する. - 有機レーザーFETの性能向上: 本研究の有機レーザーFETは絶縁層表面に回折格子を持つDFB共振器を用いる.これは半導体と絶縁体の界面にポテンシャルの揺らぎをもたらす.FETではキャリアは半導体の絶縁層近傍を流れるため,ポテンシャルの揺らぎによりキャリア易動度が低下する.そこで,回折格子をキャリアの輸送に影響しない単結晶上部に作製する.その方法としては,干渉光によるレーザーアブレーションがあるが,本研究で用いているような昇華温度の高い単結晶では高出力レーザーを要し,結晶がダメージを受けてしまう.そこで,単結晶上にアブレーションしやすい別材料の薄膜を作製しこれを干渉加工することにより,易動度を損なうことなくDFB共振器を作製する.また,現状の有機レーザーFETは利得導波型構造だが,有機半導体単結晶表面に帯状に物体を付加して実効屈折率を増加させることにより,屈折率導波型構造にする. - 空気中での動作可能な有機レーザーFETの開発: 有機単結晶への電子注入には電極にカルシウム等の仕事関数の小さい金属がもちいられるが,それらは反応性が高く空気中での使用に適していない.そこで,応募者らが開発した仕事関数の大きい金属から低抵抗で電子を注入できる電極構造を導入する.さらに,機半導体単結晶を他の有機素子で用いられるような封止材で覆うことにより有機半導体レーザーFETの空気中での動作を目指す.
|