研究課題/領域番号 |
23K21077
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補助金の研究課題番号 |
21H01799 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
大江 純一郎 東邦大学, 理学部, 教授 (40510251)
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研究分担者 |
河野 浩 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (10234709)
安立 裕人 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (10397903)
大槻 東巳 上智大学, 理工学部, 教授 (50201976)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | スピントロニクス / 異常ネルンスト効果 / 熱電効果 |
研究開始時の研究の概要 |
排熱や温度差を電気エネルギーに変換できる熱電効果において、従来のバルク電子系の枠組みを超えたエネルギー変換機構が求められている。特に、磁性材料を用いた熱電変換では、マグノン・電子相互作用により、大きな熱電効果を生み出すことができる。 本研究は、従来の一様磁化を用いた磁性熱電効果を発展させ、非一様磁化構造の磁化ダイナミクスから誘起されるマグノンドラッグ効果に着目した巨大磁性熱電効果の理論的研究を行う。特に、トポロジカルに保護されたねじれた磁化構造中に誘起されるスピン波や、磁気超格子における指向性スピン波を利用した新しい磁性熱電効果の提案を行う。
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研究実績の概要 |
ねじれた磁化構造を有する磁性体中の磁化ダイナミクスや、スピン起動相互作用を用いた伝導電子スピン流制御について理論的研究を行った。特に、1次元的ならせん構造を有するヘリカル磁性体では、らせん構造を通過する伝導電子に非自明なスピン分極が誘起され、その分極の向きがらせん構造の右巻き・左巻きによって異なることを示した。このことにより、らせん磁性体を用いた新しい記録素子の読み込み・書き込み機構を提案した。一方、ラシュバ型のスピン起動相互作用と三角型導波路を組み合わせることで、伝導電子スピンフィルタが可能であることを示した。分担者の大槻は量子畳み込みニューラルネットワーク(QCNN)を用いて,磁性体の相判定を行った。従来のQCNNは中間層で行う観測で得られた量子ビットの情報を捨てていたが,これを積極的に活かすことで判定の精度が大幅に上昇することを示した。分担者の河野は、反強磁性体中のスカーミオン構造およびメロン構造において、トポロジカル・スピンホール効果の解析を進めた。その結果、メロン構造においてベクトル・ニールカイラリティというトポロジカル量を導入し、この量がホール係数を決定していることを明らかにした。この量はスカーミオン構造ではゼロになってしまうため、新しいトポロジカルホール効果と呼ぶことができる。また、ラシュバ強磁性体におけるジャロシンスキー・守谷相互作用の微視的計算を、面内磁化成分をもつ場合に拡張して行った。ラシュバ系において動的格子歪が誘起するスピン流を微視的に調べた。強束縛模型から出発して導いた有効ハミルトニアン(ラシュバハミルトニアン+格子変形の効果)に基づいて久保公式で計算し、四重極スピン流・垂直スピン流・ヘリシティ流といった多彩なスピン流が誘起されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、磁化ダイナミクスを計算するための数値計算プログラムや、磁化構造中を通過する伝導電子スピン流を計算するプログラムを開発し、GPUを用いた並列化を行った。特に、磁気フラストレーションを引き起こす長距離交換相互作用、強磁性結合、ジャロシンスキー・守谷相互作用、双極子相互作用などを取り入れ、大規模な系の磁化ダイナミクスの計算が可能になった。1次元らせん磁性体中を通過する伝導電子のスピン流計算によって、フラストレーション系のらせん構造の右巻き・左巻きを制御できることを示した。また、円偏光照射下の伝導電子スピンと局在磁化間のsd相互作用を考慮した磁化ダイナミクスを計算可能にした。これらのプログラムを用いて、2次元スカーミオン構造のトポロジカル量を制御する方法を提案した。このようにトポロジカル量を制御した磁化構造における磁性熱電効果を計算するためのプログラム作成を行っている。さらに、スピン波波動関数の時間発展を用いて機械学習を行うため、動画判別プログラムの作成を行った。
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今後の研究の推進方策 |
スピン波波動関数の時間発展を計算し、トポロジカルスピン波エッジ状態から誘起されるマグノンドラック効果について解析を行う。このエッジ状態は後方散乱が禁止されているため、散乱による熱電効果の低下が少ないと予想される。また、スピン波波動関数の動画から、機械学習を用いてより大きなマグノンドラック効果が得られるための磁気超格子構造を提案する。磁気超格子構造のトポロジカル状態の有無を判断するために、磁化配置からチャーン数を識別する機械学習プログラムを作成する。名古屋大学の水口グループより、人工磁性多層膜を用いた熱電効果増大の報告があったため、この系でのマグノンドラック効果の計算を行い、実験結果を再現・理論的説明を行う。人工磁性薄膜は、薄膜毎の材質、膜間交換相互作用、膜数を制御できるためより大きなマグノンドラック効果を得るための構造を提案する。
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