研究課題/領域番号 |
23K21079
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補助金の研究課題番号 |
21H01813 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分29020:薄膜および表面界面物性関連
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研究機関 | 岐阜大学 (2023-2024) 大阪大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
久保 理 岐阜大学, 工学部, 教授 (70370301)
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研究分担者 |
田畑 博史 大阪大学, 大学院工学研究科, 准教授 (00462705)
新ヶ谷 義隆 国立研究開発法人物質・材料研究機構, ナノアーキテクトニクス材料研究センター, 主任研究員 (40354344)
片山 光浩 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70185817)
中山 知信 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 副拠点長 (30354343)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 11,440千円 (直接経費: 8,800千円、間接経費: 2,640千円)
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キーワード | ゲルマナン / トランジスタ / 電気伝導 / マルチプローブ / トラップ / 移動度 / 二酸化バナジウム / ミスト化学気相成長 / 金属絶縁体転移 / 層状物質 / イオン交換 / スタナン |
研究開始時の研究の概要 |
グラフェンに代表される二次元層状物質(XY方向には強い結合を持つが、Z軸方向は弱い結合を持つ物質)は、トランジスタをはじめとした様々な電子デバイスの基礎材料として盛んに研究されている。しかし、グラフェンはトランジスタとして重要な「半導体」としての性質を持たず、その他の層状物質についても、トランジスタのオン・オフ速度に重要な移動度が、従来のトランジスタ材料であるシリコンに比べて低いものがほとんどである。本研究ではシリコンと同じ14族元素のゲルマニウム(Ge)の単原子層構造に着目して、これを用いた電界効果トランジスタを作製、特性評価することによって、その移動度の検証と向上を目指す。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続きルマニウム単層の両面をメチル基で終端したメチル化ゲルマナン(GeCH3)をチャネルとした電界効果トランジスタ(FET)の特性の調査を行った。前年度行ったソース・ドレインの2電極による計測に加えて、4電極による4端子測定も行った。その結果、デバイスは概ねp型動作のみを示し、伝達特性から見積もられた正孔移動度は室温で約380cm2/Vs であり、バンドギャップが1eV以上の層状半導体の中ではトップクラスの高移動度が得られた。この結果は、Jpn. J. Appl. Phys. 誌に Rapid Communication 論文として掲載された。さらに、GeCH3 の光電特性についても研究を開始した。本年度は、1.5~3.1eVの光に対する光電流について調査した。その結果、バンドギャップに相当する1.8eV以上の光に対して、光照射による電流上昇を確認した。 本研究では、ゲルマナンの電気伝導と欠陥などの相関を解明のため多探針走査プローブ顕微鏡を活用するべく、同装置に簡易型の走査電子顕微鏡を導入した。代表者が大阪大学から岐阜大学に転出したため本年度は予備実験に留まったが、今後はゲルマナンの伝導特性のマルチプローブ計測を進めていく予定である。 一方、研究当初に計画していた錫の水素終端シート・スタナンの作製が難航していることから、スタナンと同様に電界によってバンドギャップの大きさを変調できる二酸化バナジウム(VO2)に着目し、本格的な作製・評価を進めている。前年度既に、ミスト化学気相成長法を用いてVO2薄膜を作製し、温度による通常の金属―絶縁体転移の観測に成功していたが、他手法で作製した薄膜に比べて抵抗比の変化がわずかに劣っていた。今年度は成膜プロセスの見直しによって、他手法と同等以上のVO2薄膜を得ることができた。次年度は、FET構造の作製を進めていくつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に主として取り組んだメチル基終端ゲルマナン(GeCH3)のトランジスタ動作に関する研究では、半導体層状物質(バンドギャップ1eV以上)としてはトップレベルの正孔移動度を得るに至り、論文発表ならびに2023年日本表面真空学会学術講演会のシンポジウムにて依頼講演を行った。また、GeCH3の光電流測定についても、秋季応用物理学会や、MNC2023国際会議で報告した。多探針走査プローブ顕微鏡を用いた、局所的な伝導計測については今少しの時間が必要であるが、全体的には順調に進んでいると考える。 また、錫の水素化シート・スタナンに代わる材料バンドギャップ変調材料として、ミスト化学気相成長法による二酸化バナジウム薄膜の作製に取り組んでいる。上述のとおり膜質の向上に成功するなど、バンドギャップ変調トランジスタの実証に向けた準備は整いつつある。 以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の結果、メチル化ゲルマナンの正孔移動度については、理論的に予測されている値よりも1桁以上低い移動度に留まっている。移動度の温度依存性はフォノン散乱が支配的であることを示しているため、欠陥などによる単純な不純物散乱ではないと考えられる。最終年度は、マルチプローブ計測など、これまでの異なるアプローチを加えながら、理論予測値との乖離の原因を探索する予定である。 一方、錫の水素終端シート・スタナンに代わるバンドギャップ変調材料として二酸化バナジウム(VO2)のミスト化学気相成長法による成膜が順調に進んでいる。最終年度は極博酸化膜上でのVO2薄膜作製に取り組み、VO2をチャネルとした電界効果トランジスタ作製と評価を進めていく。
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