研究課題/領域番号 |
23K21094
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補助金の研究課題番号 |
21H01877 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分32010:基礎物理化学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大野 かおる 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 名誉教授 (40185343)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 電子励起状態 / 第一原理計算 / 準粒子理論 / GW近似 / 密度汎関数理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、第一原理計算において、全ての物質現象を支配する電子励起状態を扱える根本的な理論方程式と新しい計算手法を確立し、そ の第一原理計算ソフトTOMBOを完成させ普及することである。第一原理計算ソフトは欧米で開発されたものが主流の中、研究代表者は世界唯一の全電子混合基底法プログラムTOMBOを開発し、多体摂動論のGreen関数法では1次のバーテックス補正を入れた世界初のGWΓ自己無撞着計算を行い、光吸収スペクトル世界最高精度0.1 eVを達成した。任意の電子励起固有状態を扱える拡張準粒子理論も発表し、世界初の電子励起状態を出発点とするGW近似や時間依存GW動力学シミュレーションを行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、任意の電子励起固有状態に適用可能な「拡張準粒子理論」(2017年J. Chem. Phys.誌)と、準粒子波動関数の規格化を保証する「拡張Kohn-Sham理論」 (2021年Phys. Rev.B誌(Letter))の理論基盤に基づいている。 昨年度、予定通り、メタン分子の光吸収により最高占有軌道から最低非占有軌道に電子遷移した電子励起初期状態から出発してメチル基(CH3)と水素原子(H)に分解する時間依存GW(TDGW)分子動力学シミュレーションに成功し、「拡張準粒子理論」の妥当性を検証した。従来の断熱局所密度近似(ALDA)を用いた時間依存密度汎関数理論(TDDFT)では、電子励起状態から出発する分子動力学シミュレーションを行うことは正当化出来なかったため、「拡張準粒子理論」に基づいて 、このようなシミュレーションが出来るようになったことは画期的なことであると考えている。この計算方法と計算結果は J. Chem. Phys.誌に論文投稿し、掲載予定である。現在、この研究をさらにNO2分子や水分子の光分解に発展させて、TDGWシミュレーションを実行中である。また、本研究で提案する新理論に基づく任意の電子励起固有状態の計算を実行できるような ユーザーフレンドリーなプログラムTOMBOの完成を目指して、CASTEPなどの既存のプログラムとの比較を行いながら、TOMBOの別バージョンから自己無撞着GWΓ法の計算ルーチンを移植するなどして、TOMBOのブラッシュアップを行なった。さらに、光吸収スペクトルのGW + Bethe-Salpeter方程式(BSE)計算を結晶で行えるようにTOMBOの改良に成功し、このプログラムを用いてルチルTiO2に遷移金属不純物(Zr, Mo, Ru, Zn, Cd)をドープした系の光吸収スペクトル計算を行ったので、論文投稿中である。昨年度末に東北大学金属材料研究所にて計算物質科学人材育成コンソーシアム(PCoMS)主催のTOMBOセミナーを行う予定であったが、研究代表者の都合で次年度に行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の断熱局所密度近似(ALDA)を用いた時間依存密度汎関数理論(TDDFT)では、電子励起状態から出発する分子動力学シミュレーションを行うことは正当化出来なかった。たとえ、基底状態から出発したとしても、外部振動電場などを与えて後から電子励起させる手法についてALDAで正当化できるかついては疑問がある。研究代表者は、本研究で提案している「拡張準粒子理論」に基づけば、光吸収により電子が初めから励起した状態から出発する分子動力学シミュレーションを行うことが出来ることに注目し、メタン(CH4)分子の光吸収により最高占有軌道(HOMO)から最低非占有軌道(LUMO)に電子遷移した電子励起初期状態から出発してメチル基(CH3)と水素原子(H)に分解する時間依存GW(TDGW)分子動力学シミュレーションを行い、これに成功した。また、この研究をさらにNO2分子や水分子の光分解に発展させて、TDGWシミュレーションを行い、これらの発展研究も成功しつつある。このことは、本研究で提案している「拡張準粒子理論」が正しいことを示す根拠になるばかりでなく、このようなシミュレーションが出来るようになったことは画期的なことであると考えている。また、本研究で提案する新理論に基づく任意の電子励起固有状態の計算を実行できるような ユーザーフレンドリーなプログラムTOMBOの完成を目指して、CASTEPなどの既存のプログラムとの比較を行いながら、TOMBOの別バージョンから自己無撞着GWΓ法の計算ルーチンを移植して、TOMBOのブラッシュアップを行なったことも予定通りである。さらに、光吸収スペクトルのGW + Bethe-Salpeter方程式(BSE)計算を結晶で行えるようにTOMBOの改良に成功し、このプログラムを用いてルチルTiO2に遷移金属不純物(Zr, Mo, Ru, Zn, Cd)をドープした系の光吸収スペクトル計算を行ったことも予定通りである。以上のことから、計画は予定通り順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、任意の電子励起固有状態に適用可能な「拡張準粒子理論」と準粒子波動関数の規格化を保証する「拡張Kohn-Sham理論」の二つの新理論に基づいて、全電子混合基底法プログラムTOMBOを用いて、電子励起状態を初期状態とする様々な系の計算を行なっていきたい。特に、令和6年度には、CH4分子に続いて、NO2分子や水分子の光吸収により電子遷移した電子励起初期状態から出発した時間依存GW(TDGW)分子動力学シミュレーションを行い、新理論の妥当性を検証すると共に、これらのシミュレーション結果を論文投稿したい。本研究では、新理論に基づく任意の電子励起固有状態の計算を実行できるようなユーザーフレンドリーなプログラムTOMBOの完成を目指して、CASTEPなどの既存のプログラムとの比較を行いながら、TOMBOのブラッシュアップを随時図ってく予定である。これまでの研究期間で、予定通り、TOMBOの別バージョンとして完成していた自己無撞着GWΓ法のプログラムをTOMBOの最新バージョンに移植し、光吸収スペクトルのGW + Bethe-Salpeter方程式(BSE)計算を結晶で行えるようにTOMBOの改良を行うことに成功したので、今後はさらに、このプログラムを同様の不純物を含む遷移金属酸化物系やIII-V族半導体などの複雑な系に応用して 、その計算結果を論文投稿していく予定である。また、昨年度行えなかった計算物質科学人材育成コンソーシアム(PCoMS)主催のTOMBOセミナーを東北大学金属材料研究所で行う予定である。さらに、第11回アジア計算材料学コンソーシアムACCMS(Asian Consortium on Computational Materials Science)全体会議ACCMS-11を令和6年6月1日(日)-3日(火)の3日間に亘り、横浜市神奈川県立かながわ労働プラザにて主催し、電子励起状態のセッションを企画すると共に、開催日前日にTOMBOセミナーを行う予定である。このための招待講演者の招聘を本科研費で行いたいと考えている。
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