研究課題/領域番号 |
23K21111
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補助金の研究課題番号 |
21H01929 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
布施 新一郎 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (00505844)
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研究分担者 |
増井 悠 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (70714377)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
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キーワード | 三塩化リン / マイクロフロー合成 / リン酸エステル / マイクロフロー / リン酸トリエステル / 求核置換反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は医薬品として重要なリン酸トリエステルを、自在に高収率で速やかに合成できる手法の確立を目標としている。これを実現するため、安価で高活性なリン含有原料に対し、多様な構造の異なるアルコールを連続的に導入するアプローチの開発を目指している。通常、このようなアプローチでは競合する副反応の回避が困難である。これに対して本研究では微小な流路内で反応させるマイクロフロー合成法を駆使した解決を提案している。すなわち、マイクロフロー合成法の利用によりフラスコを用いた反応では困難な反応時間・温度の精密制御が実現するため、これらの特徴を活かした高効率リン酸トリエステル合成の実現を目指して研究を推進している。
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研究実績の概要 |
本研究「高求電子性リン反応剤を用いるリン酸トリエステル合成の機構解明と応用展開」は医薬品として重要なリン酸トリエステルを、自在に高収率で速やかに合成できる手法の確立を最終目標としている。そして、これを実現する手法として、ほぼ全ての有機リン化合物の原料となっている安価で高活性な三塩化リンに対し、多様な構造の、異なるアルコールを連続的に導入するアプローチの開発を目指している。2022年度に、三塩化リンに対して導入可能なアルコールの適用範囲を検証した。この際に三塩化リンやその誘導体の反応性を明らかにするため、二種類の異なるアルコールの導入およびその導入順序の変更も検討し、生じる副生物も解析した。これにより各求核置換反応における求電子剤の反応性を明らかにした。基質適用範囲の検証過程で、導入したアルコキシ基が脱離する現象を観察した。文献を調査したところ、この脱離反応は過去に報告されていたものの構造によっての脱離能の差は調べられていないことがわかった。 そこで2023年度に構造の異なる様々なリン酸トリエステルを用い、アルコキシ基の脱離能について調査し、明らかにできた。また、これまで、2つ目の求核剤を導入する際には添加剤を用いないと過剰反応が抑止できないという知見に基づき反応開発を進めてきたが、溶媒を変更することにより、イミダゾール等の添加剤を用いずとも過剰反応を抑止しうるという予想外の実験結果を得た。この結果についてさらに検証を重ねた結果、プロトン源の量を適切に制御することにより、三塩化リンに対して連続的に2つのアルコールを収率よく導入できる手法の確立に成功した。加えて、DFT計算も駆使することでその制御メカニズムについても提案できた。さらには、環員数の異なる多様な構造の環状のリン酸トリエステルを三塩化リンから一挙に合成する初の合成法の開発にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた、添加剤なしでの三塩化リンに対する連続的な求核剤の導入に成功しただけでなく、そのメカニズムを明らかにでき投稿論文を発表できた、さらに当初計画していなかった環状リン酸トリエステルの合成法も開発でき、こちらも投稿論文を発表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究により、三塩化リンに対してアリールオキシドを導入する反応においては、著しく収率が低下し、過剰反応の制御が困難であることを見出した。医薬品候補として注目されているプロチドでは、アリールオキシド置換基をもつものが多いため、この問題を解決することは開発した合成手法の有用性を実証し、応用範囲を拡大するうえで重要であると考えた。そこで、今後の研究では、アリールオキシドのモデルとして最も単純な構造のフェノキシドを用いて、過剰反応を抑制しつつ選択的に導入する手法の確立に向けて検討を実施する。反応温度や反応時間を厳密に制御できるマイクロフローリアクターを用い、特にフェノキシドの求核性を高めることによる過剰反応との差別化が可能であるかどうかについて検証していく。最適条件を確立した後、電子的、立体的因子の異なる多様なアリールオキシドを用いて基質適用範囲を明らかにする。
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