研究課題/領域番号 |
23K21119
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補助金の研究課題番号 |
21H01948 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2024) 金沢大学 (2021-2023) |
研究代表者 |
酒田 陽子 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70630630)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 2,461千円 (直接経費: 1,893千円、間接経費: 568千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 9,230千円 (直接経費: 7,100千円、間接経費: 2,130千円)
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キーワード | 自己集合 / 速度論的制御 / マクロサイクル / 非平衡状態 / 金属配位結合 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、熱力学的平衡から離れた非平衡状態において自己集合過程を制御することで、通常の熱力学的制御下では得ることが困難な巨大なベルト状マクロサイクルの構築を行う。具体的には、ベルト状金属錯体の自己集合過程において、金属配位結合の可逆性を任意のタイミングでロック/アンロックすることで反応中間体などの速度論的生成物の単離を行い、これをビルディングブロックとして利用した新しい自己集合型マクロサイクルの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、熱力学的平衡から離れた非平衡状態において自己集合を行うことで、従来の熱力学的制御下では得ることが困難なベルト状錯体の構築手法の確立を目指している。これまでの研究で、2,3,6,7-テトラアミノトリプチセンとPd(II)イオンを錯形成する際に、トリエチレングリコール鎖を側鎖に導入したピラー[6]アレーン誘導体をテンプレートとして用いることで、ベルト状錯体の五核メタロナノベルトが選択的に得られることを明らかにしているが、五核以外の環サイズのメタロナノベルトの選択的な形成は達成できていなかった。本年度は、オリゴエーテル鎖を有するさまざまなコア構造を持つテンプレート分子と五核メタロナノベルトとの相互作用を調べるとともに、これらの分子を用いて自己集合過程における熱力学的および速度論的テンプレート効果について評価した。 コアの形やサイズが異なるさまざまな分子に側鎖としてオリゴエーテル鎖を導入し、五核メタロナノベルトとの相互作用の強さを調べた。また、自己集合の過程でメタロナノベルトが生成する際のテンプレート効果の強さを評価した。その結果、五核メタロナノベルトとの相互作用が弱い分子についてはテンプレート効果が弱く、相互作用が強い分子でも、必ずしも強いテンプレート効果を示さないことが明らかとなった。一方、ピラー[5]アレーン誘導体をテンプレートとした場合は五核メタロナノベルトが初期段階で生成し、時間をかけて熱力学的に安定な四核メタロナノベルトへと変化していくという現象が観測された。すなわち、テンプレートの種類によっては、熱力学的に最も安定な種とは異なる種が速度論的に生成する速度論的テンプレート効果が発現することが見出された。このような速度論的テンプレート効果を利用することで、今後熱力学的平衡から離れた非平衡状態における新規なベルト状構造の構築が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピラー[5]アレーン誘導体をテンプレートとした場合に、熱力学的に最安定な四核メタロナノベルトではなく、五核メタロナノベルトが速度論的に生成するという珍しい現象が観測された。これは、オリゴエーテルが錯体部位と相互作用することで環サイズ変換が抑制されるということを示している。すなわち、オリゴエーテル鎖が錯体部位に絡みつくことにより、速度論的ロック効果が発現できることが明らかとなり、本研究の主目的である速度論的ロックを利用した巨大ベルト状錯体の構築を行う上で重要な知見を得ることができたため、研究は概ね順調に進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度において、オリゴエーテル鎖が錯体周りに絡みつくことで、金属配位結合の形成・解離速度を大幅に抑制する速度論的ロック効果を示すことを見出した。今後は、環状のオリゴエーテルやコア構造を持たない鎖状のオリゴエーテルを用いたロック効果についても詳細に検討する。これらに加え、錯体の金属イオンの種類や配位子の酸化状態が錯体の速度論的安定性に与える影響についても詳細に調べることで、速度論的ロック効果の概念の適応可能な範囲を広げる。また、初年度に観測された自己集合における速度論的テンプレート効果をより合理的に発現させるための設計指針についても検討する。特に、速度論的生成物から熱力学的に最安定な生成物への変換の速度を能動的に制御する手法を開発できれば、これらの設計において重要な指針を与えると期待されるため、自己集合や環サイズ変換の速度を精密にチューニングする方法論の確立も目指す。
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