研究課題/領域番号 |
23K21123
|
補助金の研究課題番号 |
21H01956 (2021-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
小野 晶 神奈川大学, 化学生命学部, 教授 (10183253)
|
研究分担者 |
近藤 次郎 上智大学, 理工学部, 教授 (10546576)
山田 亮 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
藤原 章司 神奈川大学, 化学生命学部, 助教 (60737196)
鳥越 秀峰 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (80227678)
大樂 武範 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80642636)
田中 好幸 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70333797)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
|
キーワード | metallo-base pair / DNA nanowire / nanocluster / DNA architecture / oligonucleotide / metallo base pair / Metallo-base pair / Metal nanocluster / Oligonucleotide / DNA synthesis / matallo-base pair / metal nanocluster |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、オリゴヌクレオチド(短鎖の合成DNA)と様々な金属イオンを用いることで超分子複合体の多様性を拡張し、さらに機能性物質とし利用するための道筋を開拓することである。ここでは2種の超分子複合体として「金属-DNAナノワイヤー」 と「DNA-金属ナノクラスター複合体」を研究対象とする。本研究は、最前線に立つ研究者同士の共同研究であり、合成技術、構造解析技術、物性解析技術をそれぞれが駆使することにより、“ナノ構造化学”の発展に貢献する計画である。
|
研究実績の概要 |
第一に、可溶性“Ag(I)-DNAナノワイヤー”を合成したことである。即ち、緩衝液中、ドデカヌクレオチドとAg(I)イオンを混合することで、Ag(I)-DNAナノワイヤーを形成させる手法を見出した。塩基配列5’-d(CGCGCBCBCGCG)-3’ (B = 5-bromouracil)が重要であり、塩基配列を変えると、形の不揃いなAg(I)-DNA複合体が出来る。結晶構造から、このAg(I)-DNAナノワイヤーは、DNA二重鎖内部に11ヶのAg(I)イオンが連続していた。1残基短いウンデカヌクレオチド5’-d(CGCGCBCBCGC)-3’が、溶液中でAg(I)-DNAナノワイヤーを形成することを、可視・紫外、CD、NMR分光法、及び質量分析法を用いて証明した。評価の高い国際誌(Angew. Chem. Int. Ed., 2022, 61, e202204798)に掲載された。また、新たに4-ブロモベンゼンを塩基部に化学修飾し、4-ブロモベンゼンの化学的安定性を利用した塩基配列を合成し、新たなAg(I)-DNAナノワイヤーの形成を見出した。 第二に、塩基部にチオカルボニル基を有するデオキシオリゴヌクレオチドを化学合成し、金属イオン結合を調べた。即ち、6-チオグアニン塩基対に多様な金属イオンが結合し、DNA二重鎖を安定化することが分かり、安定的なDNA-金属ナノクラスター複合体を得られる可能性が示された。 第三の成果は、塩基を化学修飾することで、様々な金属イオンをDNA二重鎖に導入する手 法を開発したことである。4N-カルボキシメチルシトシン(X)を含むオリゴヌクレオチドを合成し、DNA二重鎖中にX-Xペアを形成させた。Cu(II)イオン存在下、安定なX-Cu(II)-Xが形成された。さらに、X-Cu(II)-Xは平行型二重鎖を安定化することを見出した。論文投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度、ウンデカオリゴヌクレオチドの5-Br-Uから塩基部に4-ブロモベンゼンを化学修飾した配列に変更したオリゴヌクレオチドを合成し、Ag(I)-DNAナノワイヤーが、溶液中で安定に形成されることを証明した。また、4-ブロモベンゼンを用いることで二重鎖同士のパッキングが促進され、結晶が得やすくなると考えられる。さらに、化学的安定性が高いことから、塩基部のチオカルボニル化条件にも耐えることができ、Ag(I)以外の金属と結合し全く新しい構造を有する超分子複合体を構築することが期待される。 また、塩基部にチオカルボニル基を有するオリゴヌクレオチドの合成法を開発した。即ち、6-チオグアニン(6-チオシサントシン)塩基対に多様な金属イオンが結合し、DNA二重鎖を安定化することが分かった。また、塩基部にチオカルボニル基を有するRNAオリゴヌクレオチドを化学合成し、金属イオン結合を調べた。2-チオウラシル、4-チオウラシル、2,4-ジチオウラシル、2-チオシトシン残基を有するRNAオリゴヌクレオチドの合成法を開発した。チオカルボニルを有するRNAは、対応するDNAオリゴヌクレオチドに比較して、多様な金属イオンを結合した。即ち、「金属-DNAナノワイヤー」の合成と機能物質への利用研究は順調に進捗している。 「DNA-金属ナノクラスター複合体」の新規合成手に目途が付いた。チオカルボニル基を有するオリゴヌクレオチド-金属イオン複合体を形成させた後、還元剤で処理することで金属ナノクラスターとする。様々な金属と親和性の高いチオカルボニル基が結合することで金属ナノクラスターが溶液中で安定に存在することが期待できる。つまり、Au(III)イオンとの親和性が高いことから、Au(III)-DNAナノクラスター複合体の合成に期待が持てる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究計画の目的は、オリゴヌクレオチド(短鎖の合成DNA)と金属イオンから超分子複合体を合成する手法を開発し、さらに機能性物質として利用するための道筋を開拓することである。超分子複合体として「金属-DNAナノワイヤー」 と「DNA-金属ナノクラスター複合体」を研究対象とする。最前線に立つ研究者の共同研究であり、合成技術、構造解析技術、物性解析技術を駆使して“ナノ構造化学”の発展に貢献する計画である。 「金属-DNAナノワイヤー」の合成と利用:2024年度以降の研究は、第一に2022年度に国際誌に報告した「短鎖のAg(I)-DNAナノワイヤー」を物性解析(導電性、スピン偏極状態など)利用する。解析装置と技術を有する共同研究者を探して、測定を依頼する。また「短鎖のAg(I)-DNAナノワイヤー」を構造ユニットとする新規ナノ構造体のさらなる構築を試みる。 塩基を化学修飾することで、様々な金属イオンをワイヤーに導入する手法を開発する。一例をあげると、核酸塩基のカルボニル基をチオカルボニル基に変換することで、AuやCuをはじめ、様々な遷移金属イオンが結合することが分かっている。金属イオンが変わると、磁性、光反応性、導電性など、物性のスペクトルが多様化すると期待される。 「DNA-金属ナノクラスター複合体」の合成と機能化:金属イオン(主にAgイオン)とオリゴヌクレオチドの混液を還元剤 (NaBH4など)で処理すると、金属ナノクラスターが生成して溶液が蛍光を示すが、オリゴヌクレオチドが結合することで安定な「DNA-金属ナノクラスター複合体」が形成される。2023年度、チオカルボニル基を有するDNA/RNAオリゴヌクレオチドの合成法を開発した。2024年度以降は、1つの配列に複数のチオカルボニル基を導入することで、効率的にAgまたはAuナノクラスターを合成する反応条件を探索する。
|