研究課題/領域番号 |
23K21138
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補助金の研究課題番号 |
21H02005 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
遊佐 真一 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00301432)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 13,000千円 (直接経費: 10,000千円、間接経費: 3,000千円)
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キーワード | 静電相互作用 / ポリアンホライト / 感温性 / 接着 / ゲル / 双性イオン / 精密高分子合成 / 高分子電解質 |
研究開始時の研究の概要 |
カチオンとアニオンを1つのポリマー鎖中でランダムに側鎖結合したポリマーは、ポリアンホライトと呼ばれる。特定の化学構造のポリアンホライトが水中で上限臨界溶液温度(UCST)を発現する。このUCST発現のメカニズムを学術的に理解することで、ポリアンホライトの温度に応答した静電相互作用を、水中での可逆的な剥離可能な接着や、自己修復材料へ応用展開することを研究の目的とする。まず溶液の状態およびポリアンホライトの化学構造が、UCSTに及ぼす影響を調べる。次にポリアンホライトのヒドロゲルを作製し、静電相互作用によるUCSTを利用したゲルの接着・剥離挙動を評価する。
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研究実績の概要 |
高温で水などの溶媒にポリマーが溶解し、低温で不溶となる現象は、上限臨界溶液温度(UCST)と呼ばれる。特に、同一側鎖にカチオンとアニオンを含む双性イオン構造のスルホベタイン構造のポリマーは、UCSTを示す高分子として広く研究されている。UCSTのメカニズムは次のように説明される。低温でカチオンとアニオンの静電相互作用が強く働くため、水に不溶となる。一方、昇温すると分子運動が激しくなり、静電相互作用が遮蔽されるため、水に可溶となる。 本研究の最終目的は、UCSTを示すゲルを利用して、接着や自己修復に応用することである。2023年度は、カチオン性のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(VBTAC)と、アニオン性のスチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)を共重合することで、ポリアンホライトヒドロゲルを作製した。これまでの研究で既に、VBTACとNaSSをランダムに共重合した直鎖状高分子のポリアンホライト(P(VBTAC/NaSS))は、水中でUCST挙動を示すことを確認している。 ゲルを作製するために、架橋剤として水溶性で、電荷を持たないポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGD)を用いた。通常のラジカル重合で、さまざまなカチオンとアニオンの比率で、ポリアンホライトヒドロゲルを作製した。得られたゲルをナイフで半分に切断して、見やすくするためにゲルの半分を染色した。切断したゲルを2M食塩水中で接触して、80℃まで加熱してから、一晩純水に浸漬したところ、ゲルどうしの接着を確認できた。この接着メカニズムは次のように考えられる。食塩水中での加熱によりゲル内での静電相互作用が遮蔽される。次に分子内の静電相互作用が遮蔽されたゲルどうしを接触して、塩濃度と温度を低下することで、ゲル間での静電相互作用が、新たに起こったため、ゲルを接着できたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カチオン性のVBTACと、アニオン性のNaSS、静電的に中性な架橋剤のPEGDによる水中でのラジカル共重合を行うことで、4級アンモニウム塩とスルホネート基をランダムに側鎖結合したポリアンホライトヒドロゲルを作製した。合成の際、VBTACとNaSSの仕込みのモル比を[VBTAC]/[NaSS] = 60/40、50/50,40/60と変化した。PEGDの組成は0.5 ml%に固定した。全ての仕込みでヒドロゲルを作製できた。試験管で重合したヒドロゲルを取り出して、輪切りにすることで円盤状のヒドロゲルサンプルを調製した。円盤状のヒドロゲルサンプルを、食塩水中でUCST以上の温度である80℃に加熱して、静電相互作用をなるべく遮蔽した。その後、ゲルどうしを接触して、室温で純水に浸漬することで接着できることを確認した。 さらに、[VBTAC]/[NaSS] = 50/50のヒドロゲルについては、短冊状のゲルサンプルを作製して、それをナイフで切断して、上記と同じ条件で接着した。元のヒドロゲルと接着後のヒドロゲルに対して引張試験を行った結果、接着後は元のサンプルに比べて、やや最大応力が低下したが、かなり強固に接着可能であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、ヒドロゲル作製の最適条件の検討を行う。また得られたゲルの水中での温度応答挙動について、詳細に調べる。今のところ得られたゲルは10℃で収縮して、80℃に加熱するとUCSTの影響で膨潤することを確認しているが、収縮率および膨潤率が40%程度にとどまっている。さらに大きく膨潤と収縮を繰り返すことのできるヒドロゲルの作製を目指す。 また、ゲル間の接着についても、さまざまな条件での接着に関する実験を行う。特に前年度は食塩水中での接着を行っていたが、塩の種類によっては、UCSTを高温または低温に制御できることが知られている。従って添加塩の種類によりヒドロゲルのUCSTがどのように変化するのかを詳細に調べる。さらに、さまざまな塩を溶解した水溶液中での接着挙動についても評価を行う。
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