研究課題/領域番号 |
23K21140
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補助金の研究課題番号 |
21H02013 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中村 雅一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80332568)
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研究分担者 |
林 正太郎 高知工科大学, 理工学群, 准教授 (00532954)
辨天 宏明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (60422995)
趙 ヨンユン 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20905971)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 熱電変換 / 巨大ゼーベック効果 / 有機半導体 / 有機低分子 / 有機高分子 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者らが発見した巨大ゼーベック効果は有機半導体特有の現象と考えられ、これまで知られていなかった熱電現象である。物性物理学的に新しいだけでなく、新奇熱電現象としては高い性能が得られている。これが実用化されると、0.1 V/K以上という従来の1000倍近い大きさのゼーベック係数を発電に利用でき、革新的なフレキシブル熱電変換素子が創出される。本研究計画では、前半において実用材料としての課題を解決するための基礎的な研究を行い、応用に向けて有望な材料群を絞り込む。それを受けて、後半では、選択された有機熱電材料の特性を活かした新概念素子構造および作製法を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者らが発見した有機半導体特有の現象と考えられる巨大ゼーベック効果について、まずは実用材料としての課題を解決するための基礎的な研究を行い、応用に向けて有望な材料群を絞り込み、研究期間後半において、選択された有機熱電材料の特性を活かした新概念素子構造および作製法を開発することを目的とする。 「低キャリア密度のときのみ巨大ゼーベック効果が発現するのはなぜで、どこまで導電率を上げられるのか」という問いに対する答えを得るために、昨年度、光照射によってキャリア密度を最大5桁にわたって変化させながら有機低分子単結晶の熱電特性を測定するための装置改良を行った。2022年度は、それを用いてルブレン単結晶の熱電特性における光照射の効果について集中的に実験を行った。その結果、当初n型の巨大ゼーベック効果を示す試料に対して照射光強度を増加させてゆくと、高導電率を保ったままp型の巨大ゼーベック効果にスイッチングするという現象が初めて観測された。ただし、この現象が繰り返し現れたのは5試料のうち1試料のみであったことから、試料中の欠陥や不純物量が関係している可能性がある。 平行して、「低分子結晶は一般的に脆いが、厚さとフレキシブル性を両立できるのか」という問いに対する答えを得るために、研究分担者らが見いだした柔軟性有機単結晶となる分子を含み、類似骨格を持つが置換基等が異なりイオン化ポテンシャルなどが異なる6種類の分子の単結晶について熱電特性を評価した。その結果、柔軟性の有無に関わらず全ての分子において同等の巨大なゼーベック係数を確認した。当初予想よりも分子種による特性の違いが生じなかったことから、電子準位の深さは巨大ゼーベック効果にあまり影響を与えないものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進展に対するプラス要因として、特定の試料にのみ発現した現象とは言え、光照射によって高導電率と高ゼーベック係数が両立する状態が繰り返し観測されたことが特筆すべき発見である。従来、極めてキャリア密度が低いときにのみ見られる現象であることが疑われていたが、特定の条件を満たせば比較的高い導電率と極めて高いゼーベック係数が両立しうるという実例が得られたことで、高性能化に向けて期待が持てる結果である。また、柔軟性有機単結晶においても、複数種の分子によって巨大ゼーベック効果が発現することが確認されたことから、柔軟性と巨大ゼーベック効果も両立しうるということが実証された点もプラス要因である。 一方、マイナス要因としては、前者が柔軟性を持たないルブレン単結晶で得られた結果であるという点、後者のパワーファクターがまだ実用的な値と乖離している点が挙げられる。 以上のプラス要因とマイナス要因を総合して、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ルブレン単結晶において、光照射によって比較的高い導電率とp型の巨大なゼーベック係数が両立する状態が観測されたことから、電子と正孔の両方が等量発生する光キャリアドーピングではなく、アクセプター分子を添加する化学ドーピングによって、再現性よく比較的高い導電率とp型の巨大なゼーベック係数が両立させられるかについて研究を進める。 柔軟性有機単結晶については、研究分担者と議論しながら構造を変えた分子について実験と解析を進め、熱電特性と分子構造的、電子帯構造的パラメータとの相関を解析してゆく。 また、研究が後半に入ることから、柔軟性有機単結晶で高性能を得るための研究と平行して、巨大ゼーベック効果が発現する高分子半導体の探索も進め、ある程度性能の目処が得られ次第、その材料に適したデバイス構造と作製法の研究にとりかかる。
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