研究課題/領域番号 |
23K21141
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補助金の研究課題番号 |
21H02014 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西原 康師 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 教授 (20282858)
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研究分担者 |
森 裕樹 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (20723414)
岡本 敏宏 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (80469931)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 含硫黄フェナセン系分子群 / 伝導特性 / 有機半導体 / 単結晶トランジスタ / カルコゲン元素 / フェナセン系分子 / チオフェン環 / 多環複素環分子 / 高次構造 / キャリア移動度 / 電界効果トランジスタ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、特異な電子構造を有する含硫黄フェナセン系分子群及びこれらが自己組織化して得られる一連の高次構造体の結晶構造と伝導特性の相関を明らかにすることで、これまでと一線を画する新奇な有機半導体を開発する。 そのために、合成化学、材料科学、計算科学、デバイス工学を融合させた研究体制を構築し、本研究を通じて得られる一連の分子群の構造-伝導物性の相関について系統的に整理し、分子設計に基づく物性の発現を一般化する。また、得られた知見を真に価値のある有機半導体の開発へ展開し、実用可能なデバイス材料の創製も目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、含硫黄フェナセン系分子群の特異な電子構造に着目し、これらの分子が自己組織化して得られる一連の高次構造体の結晶構造と伝導特性の相関を明らかにする。含硫黄フェナセン系分子群は、伝導に関わる最高被占有軌道 (HOMO) が分子長軸方向に拡がった特徴的な軌道形態を持つことに加えて、分子の縮環形態の違いにより HOMO とNext-HOMO (NHOMO) がエネルギー的に近接する。また、縮環形態と置換基の組み合わせにより HOMO と NHOMO 間で軌道の重なりが生じる新奇なπ電子系である。中心コア部分の共役系の拡張、導入する置換基や分子の非対称化などの効果を検証し、「特異な電子構造を如何に伝導特性に反映させるか」を明らかにすることが本研究の目的である。 令和4年度(2年目)は、新しいジグザグ型硫黄架橋π電子コアとしてジフェナントロ[1,2-b:2’,1’-d]チオフェン (DPT) と、ユニークな軌道配置を示す、そのフェニル置換誘導体 (Ph-DPT) を報告した。DPT 誘導体は、市販のジベンゾチオフェンから5段階の汎用的な合成スキームで容易に合成できる。単結晶構造解析とバンド計算の結果、いずれの DPT も2次元電荷キャリア輸送に有利な典型的なヘリングボーン充填構造を形成し、有効質量が小さいことが明らかになった。DPT と Ph-DPT の単結晶ベースの電界効果トランジスタ (FET) は、いずれも p 型挙動を示し、電荷キャリア移動度は最大 5.5 cm2 V-1 s-1 であった。これらの結果は、高性能有機半導体への分子設計アプローチの幅を広げる情報を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の 2 年目は、ピセノジチオフェン (PiDT) (n = 3) 及びその置換体を合成し、硫黄の導入位置による構造変化やコア部分のπ拡張や偶奇効果を調べた。合成により得られる化合物について、単結晶構造解析、伝導計算と伝導特性評価をおこない、1年目の知見と合わせて、硫黄の導入位置、伝導特性の比較から伝導に有利な集合体構造に必要な構造パラメータ、分子間相互作用、NHOMO が伝導特性に関与するための条件を明らかにすることができた。 さらに、単結晶X線構造解析によって、いくつかの誘導体の結晶構造を明らかにするとともに、得られた構造情報を基に Amsterdam Density Functional (ADF) package を用いてトランスファー積分を算出することができた。 また、当初研究計画には含めていなかったが、ジフェナントロ[1,2-b:2’,1’-d]チオフェン (DPT)の合成に成功した。この化合物を合成するために、研究代表者と研究協力者が異なる合成経路を確立することができたことも共同研究の効果といえる。合成した化合物の結晶トランジスタ特性を評価し、パッキング構造と伝導特性との相関を調査することにより、含硫黄フェナセン系における硫黄の導入位置やフェニル基などを導入した際の効果を系統的に整理することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1-2 年目に遂行した研究において得られた結果を基に、3 年目では、さらに π共役を拡張したフェナセン系分子の合成とそれらの分子の薄膜および単結晶FET 特性の評価をおこなっていく予定である。 本研究で得られる化合物群や集合体構造の軌道形態と伝導特性の相関を取り纏めるとともに、硫黄以外のカルコゲンを導入した分子群についても調査する。チオフェン環の代わりにフラン環を導入すると、硫黄とは対照的に酸素の元素サイズが小さいことに由来する高密度なパッキング構造を取ることが期待される。一方、セレンは、1) セレン原子の HOMO の係数が他のカルコゲン元素よりも大きい、2) 凝集構造における分子間での軌道の重なりが大きくなり、キャリア移動度が向上する、3) HOMO レベルが浅くなることにより、トランジスタの動作電圧(しきい値電圧)が小さくなる、4) 有効質量が小さくなるため、キャリア移動度が向上する、などの利点を有している。 1-2 年目と同様に、結晶構造解析とトランジスタ特性の評価をおこなうが、NHOMO の伝導への寄与の可能性を考え、理論計算結果を精査する必要があると考えている。再計算の結果、NHOMO の寄与が認められた場合には、NHOMO が伝導に関与するための条件などについても、これまで合成したフェナセン系分子との比較、検討をおこなう。
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