研究課題/領域番号 |
23K21143
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補助金の研究課題番号 |
21H02030 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36010:無機物質および無機材料化学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
幸塚 広光 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80178219)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 濡れ / 親水性 / コーティング膜 / 安定性 / ゾル-ゲル法 / 接触角 / コーティング / 膜 / 表面 / 酸化物 / 薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
CaO-SiO2薄膜を水に浸漬して得られるシリカ膜について、成膜プロセス上のパラメータを制御し、低接触角の長時間安定性の再現性を獲得する。 メソ孔の向きが静置過程での接触角の変化に及ぼす影響を明らかにすべく、膜面に垂直なメソ孔をもつメソポーラスシリカ膜を作製し、静置過程での接触角の時間変化を調べる。また、シリカ以外のメソポーラス膜についても検討し、メソポーラス構造が低接触角の安定性に与える影響を調べる。 アルカリ金属・アルカリ土類金属源を金属硝酸塩から金属アルコキシドに変えてアルカリケイ酸塩膜・アルカリ土類ケイ酸塩膜を作製し、使用原料が接触角の時間依存性に及ぼす影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
ソーダ石灰ガラスや石英ガラスの接触角が静置過程で増加する原因を解明すべく、XPSによる表面分析元素濃度の静置時間依存性を調べた。その結果、いずれのガラスにおいてもC-C結合をもつ炭素が静置時間とともに増加し、接触角が静置過程で増加する原因が、雰囲気中の炭化水素の付着にあることを実証できた。 Li2O-SiO2薄膜やNa2O-SiO2薄膜においてもC-C結合をもつ炭素が静置時間とともに増加した。一方、これらのアルカリケイ酸塩薄膜においては、静置時間とともに非晶質のアルカリ炭酸塩が生成した。このことから、これらのアルカリケイ酸塩薄膜が低い接触角を長時間維持するのは、アルカリ炭酸塩の表面に付着した炭化水素が、接触角測定における水滴滴下時に洗い流されるためではないかと推察した。 CaO-SiO2薄膜を水に浸漬して得られるシリカ膜が10°以下の低い接触角を長時間維持することの再現性を検討すべく、浸漬時の水の量や攪拌の有無も変化させながら慎重に実験を実施したが、条件を同一にしても接触角の静置時間依存性にはバラツキがあり、再現性を獲得できておらず、低い接触角を長時間維持するための条件も明らかでない。この問題があったため、CaO-SiO2薄膜におけるCaO量と熱処理温度が、水の浸漬により得られる多孔質シリカ膜の微細構造に及ぼす影響、それらが接触角の時間依存性に及ぼす影響について、検討するに至らなかった。 一方、ブロック共重合体の共存下でアルコキシドを加水分解してメソポーラスシリカ膜を作製したところ、膜をメソポーラスにすることによって、静置過程での接触角の増加率が減少することがわかった。具体的には、静置10日間で、市販のソーダ石灰ガラスの接触が約10°から約44°まで上昇するのに対し、メソポーラス膜では約5°から約15~25°に上昇するのにとどまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソーダ石灰ガラスや石英ガラスの接触角が静置過程で増加する原因が、雰囲気中の炭化水素の付着にあることを実証できた。 また、Li2O-SiO2薄膜やNa2O-SiO2薄膜が低い接触角を長時間維持するのは、静置過程で析出する非晶質アルカリ炭酸塩の表面に付着した炭化水素が、接触角測定における水滴滴下時に洗い流されるためではないかとの可能性を提示できた。 さらに、ブロック共重合体の共存下でアルコキシドを加水分解して構築されるメソポーラス構造が、静置過程での接触角の増加率を減少させる効果があることを明らかにできた。 一方、CaO-SiO2薄膜を水に浸漬して得られるシリカ膜が10°以下の低い接触角を長時間維持するとの前年度の結果の再現性が獲得できておらず、低い接触角を長時間維持するための条件も明らかにできていない。そのため、CaO-SiO2薄膜におけるCaO量と熱処理温度が、水の浸漬により得られる多孔質シリカ膜の微細構造に及ぼす影響、それらが接触角の時間依存性に及ぼす影響について、検討するに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
CaO-SiO2薄膜を水に浸漬して得られるシリカ膜について、低接触角の長時間安定性の再現性を獲得する。そのため、浸漬時の水の量と攪拌の有無にとどまらず、湿度、ゲル膜を焼成するまでの時間、ゲル膜の昇温速度にまで制御パラメータを広げ、条件の制御に努める。 現状でのメソポーラス膜のメソ孔の方向はランダムであるが、メソ孔の向きが、静置過程での接触角の変化に及ぼす影響を明らかにする。そのため、メソ孔が膜の面に垂直に立つようメソポーラスシリカ膜の微細構造を制御し、静置過程での接触角の時間変化を調べる。また、メソポーラス構造が低接触角の安定性に与える影響を明らかにすべく、シリカ以外のメソポーラス膜についても、静置過程での接触角の増加の抑制効果が見られるかどうかを調べる。 これまでアルカリケイ酸塩膜、アルカリ土類ケイ酸塩膜は、金属硝酸塩をアルカリ金属・アルカリ土類金属源として作製してきた。しかし、金属アルコキシドをアルカリ金属・アルカリ土類金属源とすることにより、薄膜の微細構造・組成分布は大きく変化する可能性がある。そこで、金属アルコキシドをアルカリ金属・アルカリ土類金属源としてケイ酸塩薄膜を作製し、それらの薄膜、ならびに水に浸漬した薄膜の接触角の時間変化が、使用原料の変更によりどのような影響を受けるかを明らかにする。
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