研究課題/領域番号 |
23K21147
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補助金の研究課題番号 |
21H02045 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森 正悟 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (10419418)
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研究分担者 |
西井 良典 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (40332259)
木村 睦 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60273075)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | 分子間電子移動 / 界面電子移動 / エネルギー変換 / 分子間電子移動速度 / 電極と分子間の電子移動 / 還元速度 / 酸化状態色素 / 吸収スペクトル / 電子移動 |
研究開始時の研究の概要 |
色素増感太陽電池では電極に高密度に吸着した色素と溶液中の分子の間で電子が移動するが、溶液中の分子間の電子移動に用いられる一般的な理論が使われてきた。しかし高密度に吸着した分子に対しては理論式では単純に説明できない現象が見つかっており、この解明を目的のひとつとした。そのために、仮説を検証するための分子を合成し、電子移動測定結果と量子化学計算の結果をもとに現象を理解し、さらにエネルギー変換効率の向上を目指した設計とその検証を行う。
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研究実績の概要 |
色素増感太陽電池において、酸化チタン電極から酸化状態の吸着した色素への電子移動は電荷再結合となり、変換効率を低下させる。再結合速度はマーカスの式に従うと考えられ、その場合は溶媒の誘電特性に依存するはずである。しかし過去の複数の論文では2種類の色素に対して異なる溶媒で再結合速度を測定したところ誘電特性に依存しなかった。今回その理由として溶媒分子が電極上に緻密に吸着した色素層に侵入できていないためであると考え、色素の吸着量を低下させて再結合速度を測定したところ、その値はマーカス式でフィッティングすることができ、溶媒を変えることで再結合速度を最大二桁遅くすることができることが分かった。一方で、低吸着密度の電極では電解液中の酸化還元対が電極表面まで接近することができるようになり、これも再結合の原因となるため、今後色素間に溶媒分子、またはその特性を含めるが、酸化還元対を侵入させない色素の構造を考案する。 2022年度では隣接色素も溶媒のように再配向エネルギーに関与する可能性を報告した。今年度はよりその仮説をより支持する実験結果を得た。一方で酸化スズ電極に対しては隣接色素の効果がほぼ無く、酸化スズの誘電率の低さが原因であると思われる。 再結合速度に対して、電解液中のアニオンの影響を詳細に調べた報告は今までになかったが、今回色素の分極率が大きい場合、アニオンの影響が大きいことが分かった。 銅錯体レドックス対は低い駆動力でも酸化状態色素を速く還元できることが報告されており、その理由として、錯体の内部再配向エネルギーが低いことが原因であると報告されていた。しかし今回再配向エネルギーと電子カップリングを実験結果から分析したところ、再配向エネルギーも小さいが、それよりも電子カップリングが大きいことが速い還元の原因であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では電荷再結合に対する溶媒の効果と隣接色素の効果、また電解液中のアニオンの効果について大きく理解が進んだ。色素と酸化還元対の間の電子カップリングに対しても実験と量子化学計算から理解が進んだ。また電極に使われる材料の物性も界面の電子移動速度に影響を与えることが示唆され、様々なパラメータを複雑に組み合わせて電子移動速度を制御できることが分かった。2022年度までは苦労していた色素と銅錯体の合成もいくつか成功することができた。
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今後の研究の推進方策 |
合成できた色素と銅錯体の電子移動特性を測定し、今までの知見と仮説からその結果を分析する。2023年度に得られた溶媒効果とカップリングの知見も含めた新たな設計指針を用いて、高いエネルギー変換効率が得られると期待できる分子を設計し合成する。電子移動速度の測定からその設計指針の正しさを検証しつつ、太陽電池の構造も最適化する。色素と溶媒中の酸化還元対の間の電子移動に対しては、接触面積と還元速度の関係がほぼ明らかになり、次年度はその関係をその他の色素に対しても当てはまることを確認し、それをもとに還元に対して最適な色素構造を設計する。
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