研究課題/領域番号 |
23K21149
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補助金の研究課題番号 |
21H02052 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
藤原 明比古 関西学院大学, 工学部, 教授 (70272458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | 二次電池 / 光充電 / 光酸化 / 正極活物質 / 有機硫黄材料 / ジスルフィド結合 |
研究開始時の研究の概要 |
リチウムイオン電池の正極での充電反応の一つに硫黄間の共有結合であるジスルフィド結合の形成があり、これは光照射による酸化でも形成される。これをリチウムイオン電池に応用すれば、光で充電可能なリチウムイオン電池が実現する。本研究の概要は、これまで溶液中でのみ可能であった光酸化によるジスルフィド結合の形成を、液相の陽イオン濃度、溶媒の最適化により固液界面で実現し、光照射によるリチウムイオン二次電池の充電に応用することである。
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研究実績の概要 |
外部充電不要な小型電子機器が実現すれば、情報通信技術(ICT)やIoT機器の利便性、メンテナンス性が飛躍的に向上する。現在、太陽電池と二次電池とを組み合わせた電子機器は存在するが、機器が大型化し、携帯型電子機器への応用は困難である。 本研究の目的は、外部電源がなくても使用可能な小型電子機器の実現に向け、光による充電機能を有する二次電池正極材料を開発し、光充電できる電池を作製することである。具体的には、ジチオビウレット(DTB)をベースとした有機硫黄材料のジスルフィド結合(S-S結合)の電気化学的充放電(酸化還元)、光充電(酸化)について多様な分析手法を駆使し、(1)高効率光酸化条件の決定、(2)電池セル内光化学反応の機構解明、(3)外部充電不要な光充電の作製、のステップで研究を進める。 初年度(2021年度)は、硫黄含有分子を集電材に塗布するためのスラリー(正極活物質、導電助剤、バインダ、溶媒の混合物)作製のために、材料混合用の粉砕機を設備備品として購入した。粉砕機の粉砕強度、粉砕時間により正極電極性能が大きく異なることが明らかになり、その最適化を行い、標準試料となる無機物質においては理論値通りの容量を示す正極シートの作製に成功した。研究対象となる有機活物質においては、低い伝導性の問題を回避するために導電助剤の割合を多くする必要があるが、それにより、粉砕・混合がされにくいことも明らかになった。また、ガラス製セル、窓付きセルの2種類の光照射可能なセルにおいて、標準的な材料を用いた電池作製技術を構築した。2022年度は、有機活物質におけるスラリー作製条件の最適化と正極の電気化学的性質の評価を第一に行い、電池動作の確認をした。さらに、材料のラマン散乱による評価が有効的であることを確認し、セル内の電極状態の観察を可能とする配置を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで溶液で行ってきた硫黄含有分子の光酸化反応を、二次電池の正極と同様に集電材(アルミニウムフォイル)へ塗布し、液相に浸すことで、実際の電池セル内での環境に近い状態での光酸化反応とその評価を計画した。しかし、スラリー作製時の材料混合の粉砕機の粉砕強度、粉砕時間により正極電極性能が大きく異なることが明らかになり、その最適化を行った。標準試料では条件最適化に成功し、対象となる資料では条件決定の指針が得られた。また、ガラス製セル、窓付きセルの2種類の光照射可能なセルにおいて、標準的な材料を用いた電池作製技術を構築した。一方で、有機硫黄材料を用いたシートでは容量が理論値に達せず、また、光照射や分光分析が効率的に行えないことが明らかになり、その解決手段として導電助剤の割合を減らしつつ電池動作を示す正極シートの作製を行っている。ラマン散乱による正極シートの直接観察は達成できなかったが、走査型電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光法直接観測(EDX)での観察により硫黄原子が正極シートに均一に分散していることを確認し、正極活物質の割合を増やし、光照射、光物性観察を実施できる準備が整った。 以上より、ラマン散乱による充放電状態のその場観察は実施できなかったが、活物質の和利害が多い正極シートの作製と電池動作の確認やSEM-EDXによる正極シートでの活物質の分散状況の確認など、予想以上の進捗を示した部分もあったため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(2021年度)、2022年度に構築した正極シート作製条件をもとに、正極活物質であるDTBの割合が多く、導電材の割合が少ない正極シートで電気化学特性を評価するとともに、正極シートのラマン散乱による電池内正極シートの状態観察を実施する。さらに、充電状態、放電状態のラマン散乱観察によりその状態を確認したうえで、光照射可能な電池セルでDTBベースの正極活物質を用いた電池の光照射効果を明らかにする。その後、電気化学環境の最適化による光酸化条件の最適化を目指す。
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