研究課題/領域番号 |
23K21155
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補助金の研究課題番号 |
21H02068 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀧川 紘 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (70550755)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 天然物合成 / 生物活性分子 / 中分子 / 複合構造 / ベンザイン / 天然有機化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
生命科学分野で重要な役割を果たしてきた天然由来の生物活性物質には、複合化することによって複雑な多環式骨格が形成されたものが少なくない。本研究では、このような複合構造をもつ天然物を魅力的な研究対象と位置づけ、有機化学を基盤とするアプローチによってその生命科学的意義を探求する。具体的には、天然に存在する複合型中分子天然物に着目し、単量体に相当するものから複合体までを合成標的とした全合成研究を推進する。この際、骨格構築法や構造修飾法を独自に開発することで、天然物だけではなく誘導体も視野に入れる。また、合成した複合型天然物やその誘導体についてその高次構造解析や生物活性試験を進める。
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研究実績の概要 |
本研究は、複合構造を特徴とする中分子天然物を魅力的な研究対象として位置づけ、その化学合成や化学修飾を基盤とするアプローチにより、天然における複合構造の意義に迫ることを目的とする。今年度までに研究代表者は、複合構造を有する2つの天然物、アクレモキサントンAならびにヘリソリンの合成研究を達成している。今年度は複合型アルカロイドの単量体に関連する新しい標的天然物として、多環式アルカロイド天然物リコプラジンHの合成研究に取り組んだ。さらに、昨年度に続き、天然物の誘導化を念頭に、独自のベンザイン前駆体を用いた新規合成手法の開発にも取り組んだ。 多環式アルカロイド天然物リコプラジンHの合成について、15位にメチル基をもたないモデル化合物の合成に取り組んだ。その合成では、オルトキノンモノアセタールを起点とする合成手法を採用した。すなわち、オルトキノンモノアセタールに対するケイ素連結基を用いる分子内Diels-Alder反応などを活用し、市販の臭化アリールから12工程で鍵中間体である大環状アミドを合成した。また、接着部位としてクロロシリル基を有する独自に開発したベンザイン前駆体を用いた反応開発では、アリルアルコールとのエン反応によってホモアリルアルコールを、プロパルギルアミドとの分子内エン反応によってアレナミドが合成できることを見出した(論文発表1件)。さらに、類例のないイナミドとの(3+2)環化付加反応が進行することを明らかにした(論文発表1件)。これらを検討を進める中で、ヘテロ芳香環置換アルキンとの新規環化付加反応、および新規シクロプロパン化反応が進行することを偶然発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べた通り、複合型天然物の単量体構造に関連した1つの標的化合物の全合成研究において、その骨格構築に関する有望な知見を得ることができた。しかし、不斉合成や複合体の形成に関して検討を進める段階には至っておらず、次年度以降の課題として残った。一方、天然物の芳香環修飾に資する合成手法開発については、学会発表(4件)や論文発表(2件)など、一定の成果を得ることができた。また、当該年度の研究を通じてベンザインの予期せぬ反応性も複数発見され、継続して検討すべき知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
年度内に論文報告できなかったものについては、速やかに必要なデータを収集する。多環式アルカロイド天然物リコプラジンHの合成研究においては、引き続き15位にメチル基をもたないモデル化合物のラセミ合成を目指す。解決すべき課題は、中員環を含む2つの含窒素複素環の構築と全合成に向けた官能基変換、である。全合成の目処が立ち次第、不斉合成や複合体化の検討を進める。進捗状況によっては、合成サンプルの生物活性試験についても検討し、構造活性相関研究を視野に入れた合成経路開拓を目指す。 また、独自のベンザイン前駆体を活用した分子構造修飾のための手法開発を継続する。ここまでに、他の分子との接着部位を備えた高反応性化学種ベンザインの前駆体を開発し、いくつかの新規反応と分子修飾法の開発に成功している。次年度は、これまでの検討を通じて偶然発見したヘテロ芳香環置換アルキンとの環化付加反応、および新規シクロプロパン化反応の開発を進める。
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