研究課題/領域番号 |
23K21157
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補助金の研究課題番号 |
21H02074 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川島 茂裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (40508115)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 触媒 / エピゲノム / ヒストン / アシル化 / クロマチン / アセチル化 / CPP |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、細胞内においてヒストン修飾酵素のように働く「化学触媒」の開発を目的とする。具体的には、ヒストンのリジン残基を位置選択的にアシル化できる化学触媒を開発し、その化学触媒を細胞および個体に投与することによりエピゲノムを操作することを目指す。さらに、エピジェネティクス関連疾患の代表例の一つである急性白血病に対して、化学触媒を用いた革新的な治療戦略を提示したい。
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研究実績の概要 |
本研究では、細胞内においてヒストン修飾酵素のように働く「化学触媒」の開発を目的とする。 代表者らがこれまでに報告した化学触媒の一つであるLANA-DSHは、独自のDSH触媒にヌクレオソーム結合リガンドLANAを繋いだ化合物であり、LANAがヌクレオソームの酸性領域に結合することにより触媒部位がヒストンH2Bの120番目のリジン残基(H2BK120)に近づき、試験管の中ではH2BK120を選択的にほぼ100%の収率でアシル化することが可能である(Amamoto Y et al. J Am Chem Soc. 2017)。しかし、この触媒は生細胞内において機能しないという大きな問題を抱えていた。昨年度までに種々の問題点の解決に挑み、活性が向上した新規触媒部位BAHAを見出すとともに(Adamson C et al. J Am Chem Soc. 2021)、リガンド部位としては、 LANAにポリエチレングリコール(PEG)を付加することによりペプチダーゼ耐性化することを見出した(Fujiwara Y et al. PNAS 2021)。本年度は、まずこの二つの知見を生かしたPEG-LANA-BAHA触媒を合成し、生細胞内でヒストンアシル化をおこなったが、本触媒は細胞膜透過性が低く、細胞膜透過性を上げる必要があることが明らかとなった。そこで、細胞膜透過性ペプチド(CPP)に着目し、細胞膜透過性のあるヒストンアセチル化触媒の開発を目指した。CPPとして知られている [D-Arg]8、[D-Arg]16、またはCPP44をPEG-LANA-FITCに繋ぐことで、化合物の細胞膜透過性を蛍光顕微鏡を用いて検討した。その結果、 [D-Arg]8を用いた場合では、化合物がエンドソーム内に留まっていたのに対し、[D-Arg]16またはCPP44を繋いだ場合では、化合物がエンドソーム内に留まらず、クロマチンに結合した。次に、これらのCPPをPEG-LANA-BAHAに繋いだ触媒を合成して生細胞内アセチル化反応の検討を行った。その結果、本触媒は培地に添加するだけで細胞膜を透過し期待通りヒストンをアセチル化できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までに開発した科学触媒は細胞膜透過性がないために、生細胞内に導入するためには、細胞とガラスビーズを混ぜて物理的な刺激を与えることにより一時的に細胞に穴を開けるビーズローディング法が必要であった。そのため、疾患治療への応用は難しかった。本年度は、細胞膜透過性のあるヒストンアセチル化触媒の開発に成功し、がん細胞の培地に触媒を混ぜるだけで、生細胞内のヒストンアセチル化を始めて達成した。よって、現在までの進捗状況は、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、CPPをPEG-LANA-BAHAに繋いだ触媒CPP44-PEG-LANA-BAHAによって導入されたヒストンアセチル化が転写等にどのような影響があるか調べ、また触媒によるヒストンアセチル化によって、がん細胞の増殖を阻害することができるかについても検討を進める。
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