研究課題/領域番号 |
23K21193
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補助金の研究課題番号 |
21H02187 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39030:園芸科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 義行 京都大学, 農学研究科, 教授 (20704480)
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研究分担者 |
大野 翔 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10722001)
杉山 立志 東京農業大学, 農学部, 准教授 (30377270)
古旗 賢二 城西大学, 薬学部, 教授 (70275105)
佐野 香織 城西大学, 理学部, 准教授 (70612092)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | トウガラシ / ナス科 / カプサイシン / 遺伝子組み換え / ゲノム / 遺伝子組換え |
研究開始時の研究の概要 |
トウガラシの辛味成分カプサイシンは、健康機能性成分として注目されている。一般に、カプサイシンは、ナス科トウガラシ属の胎座・隔壁でのみ生合成され、他の植物種や部位では合成されない。本研究では、このカプサイシン生合成の種・部位特異性のメカニズム解明と、遺伝子組換えにより他のナス科植物へのカプサイシン生合成能の付与を試みる。
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研究実績の概要 |
カプサイシン類の含量の異なる2系統の交雑集団について、組織形態観察により、高含量個体では、隔壁・胎座のより広い範囲に生合成細胞が分布していることを確認した。含量を決定する原因遺伝子の領域のマッピングを進めた。さらに、C.baccatum 2系統の交雑集団を作成し、カプサイシノイド含量に関するQTL解析を行なった。 pAMTに関しては、昨年度よりさらに詳細な解析を行った。すなわち、基質のバニリンに対する親和性(Km)やアミノドナーとなるアミノ酸の基質特異性において、大腸菌で作成したリコンビナントpAMTとハバネロ胎座抽出物での一致を確認した。さらにpAMT抗体によりハバネロ胎座のバニリルアミン合成活性が阻害された。以上のことから、トウガラシにおけるカプサイシン前駆体のバニリルアミン生合成を担う酵素をpAMTと結論づけ、一編の論文(Nakaniwa et al., JAFC, 2024)として公表し、その中でpAMTをvanillin aminotransferase (VAMT) と呼称すること提案した。トウガラシpAMT 、シロイナズナのAtGABA-T、トマトのSIGABA-T2、SIGABA-T4のリコンビナントタンパク質を大腸菌により合成し、バニリルアミン合成活性を解析した。その結果、全てのリコンビナントタンパク質にバニリルアミン合成活性は認められたものの、VAMTが圧倒的に高い活性を示した。以上の結果と昨年の比較ゲノム解析の結果を合わせて、トウガラシにおけるバニリルアミン合成遺伝子pAMTの起源を考察した論文にまとめた トマトやホオヅキと比較して、トウガラシにより近縁なナス科植物の胎座からRNAを抽出し、RNA-seqを行い、トウガラシとの比較トランスクリプトーム解析を行う準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カプサイシン類の含量の異なる2系統の比較解析については、順調に解析が進み、生合成細胞の分布領域違いが高含量化の原因であることが示されている。原因遺伝子の同定に向けて、交雑集団を用いたマッピング解析を順調に進めている。さらに今年度は、新たな交雑集団を用いたQTL解析により、カプサイシン含量に関わる未報告の遺伝子座の存在を示した。 カプサイシン合成経路に特徴的なバニリルアミンの合成を担う酵素遺伝子pAMTについては、酵素化学的な特徴づけを行い、また酵素活性に関わるアミノ酸残基を同定した。またpAMTは、他の植物のGABA-T遺伝子と比較して、発現パターン及び酵素活性の両面で効率的にバニリルアミン合成を担う活性があることがわかり、pAMTはカプサイシン合成経路に特化した遺伝子であることが示された。pAMTの酵素活性を決定するアミノ酸残基や転写パターンを決めるプロモーター配列を調査する必要がある。また、その他のカプサイシン生合成経路に特徴的な酵素遺伝子についても同様の解析を進めたい。 トウガラシにより近縁なナス科植物とトウガラシの比較解析については、ゲノム配列およびRNA-seqデータの両方の準備を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
カプサイシン類の含量の異なる2系統の交雑集団を用いて、原因遺伝子のマッピングを進める。またカプサイシン合成細胞の分布については、切片からではごく一部の細胞分布しかわからないため、CTスキャンなど立体的に観察、数値化する方法を検討する。 pAMTについては、胎座・隔壁特異的な発現パターンに関わる領域を明らかにするためにGUS染色によるプロモーター解析を行う。また、酵素活性に影響を与えるアミノ酸残基の同定を進める。バニリン合成酵素に関しては、フェルラ酸、コニフェリルアルデヒドを基質としたバニリン合成活性を指標に、ハバネロからの酵素の単離精製を行う。一方で、幾つかの候補遺伝子についてリコンビナントタンパク質を用いてバニリン合成活性の検討を行う。 トウガラシ近縁種についてはシーケンスデータのアセンブリを進めることにより、ゲノム配列を構築し、本近縁種とトウガラシの比較ゲノム解析および比較トランスクリプトーム解析によりカプサイシン合成経路の成立過程を考察する。pAMTやPun1など複数のカプサイシン合成経路の酵素遺伝子を過剰発現する形質転換シロイヌナズナの作出を進める。成分組成を野生型と比較することにより、カプサイシンや前駆体の生合成能を他の植物に付与できるかを調査する。
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