研究課題/領域番号 |
23K21201
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補助金の研究課題番号 |
21H02207 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
早川 洋一 佐賀大学, 農学部, 招へい教授 (50164926)
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研究分担者 |
龍田 勝輔 佐賀大学, 総合分析実験センター, 助教 (00565690)
落合 正則 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (10241382)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | ホルミシス / 昆虫 / N-アセチルチロシン / ストレス / 寿命 / 誘導因子 / N-acetyltyrosine / ヒラタチャタテ / キイロショウジョウバエ / チャタテムシ / 熱ストレス / ショウジョウバエ / ヒラタチャタテムシ |
研究開始時の研究の概要 |
ホルミシス(ストレス順応性)は全ての生物にとって重要な生理現象であるものの、その誘導・維持に関する分子機構は不明な点が数多く残されているのが現状と言える。最近、私達は昆虫やマウスにおいてN-acetyltyrosine (NAT)がホルミシス誘導に関与する生体成分であることを証明した。本研究では、昆虫におけるホルミシス誘導・維持の普遍的分子機構解明を目指して、完全変態昆虫であるショウジョウバエと不完全変態昆虫であるチャタテムシを材料に研究を推進する。また、NATの昆虫成虫における寿命への影響についても検証を進める。
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研究実績の概要 |
昆虫において古くから知られるホルミシス(ストレス順応性)誘導現象ではあるものの、主として鱗翅目や双翅目といった完全変態の昆虫種での報告に限られている。本研究では不完全変態昆虫に属するチャタテムシの一種であるヒラタチャタテに着目し、ホルミシス誘導現象の有無について検証を行っている。昨年度の実験によって、乾燥ストレスに高い感受性を示すヒラタチャタテに相対湿度20%程度の前乾燥ストレスを72時間以上与えることによって、その後の(相対湿度15%の)乾燥ストレスに対する耐性が有意に上昇することを確認した。ただ、48時間程度の前乾燥ストレスでは有意な乾燥耐性が得られなかったことから、前ストレス48時間〜72時間の間に乾燥ストレス順応性を獲得するものと考えられる。更に予備実験では、低温ストレス付与によってもその後の乾燥ストレス耐性の上昇を誘導できそうな傾向が見られたことから、今後はこの異なる前ストレスによるホルミシス誘導効果を検証する予定である。 これまでの実験では、キイロショウジョウバエの熱ストレス順応性誘導現象に関して、37oC/30分間の前熱ストレスの回数に焦点を当て、1回よりは複数回に増やすことによって、より強いストレス順応性を誘導できることを確認できた。今年度は、特に前ストレス回数とストレス耐性持続時間に着目し検証を行った。その結果、明らかに前ストレス回数とストレス耐性持続には有意な相関がある事を実証できた。また、ストレス順応性と寿命については複数の共通な遺伝子の関与が報告されていることから、N-アセチルチロシン(NAT)摂食によるキイロショウジョウバエの寿命への影響を検証する予備実験を開始した。現時点で、NAT含有人工飼料を摂食させた場合、キイロショウジョウバエの幼虫期間を延長する効果が確認できている。今後、成虫の寿命への効果について実験を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、本研究ではヒラタチャタテとキイロショウジョウバエという2種類の昆虫を用いてホルミシス誘導に関する研究を行った。先ず、これまでこの分野で殆ど生理学的研究対象にならなかった不完全変態昆虫の一種であるヒラタチャタテ(チャタテムを対象にした解析の結果、湿度20%の前乾燥ストレスを72時間以上経験させる事によって、その後の乾燥ストレス耐性の上昇を確認できた。また、予備実験によって低温という前ストレス経験によっても乾燥に対する耐性が上昇する可能性が示唆された。次に、キイロショウジョウバエ幼虫を使った熱ストレス順応性の持続時間に関する基礎実験では、予めの熱ストレス処理回数を1〜4回(各前ストレス間は30分間のインターバル)まで変化させ、その後のストレス耐性の持続時間について詳細な検証を行った。その結果、3回以上の前熱ストレスによって18時間後の40度/30分間という致死機ストレスに対する耐性が有意に上昇する事を明らかにした。ホルミシスの持続時間に焦点を当てている本研究ではより長いストレス順応性を誘起し得る前ストレス条件を明確にすることは重要であり、本年度得られた知見は今後の解析に貴重な情報と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も以下のヒラタチャタテとキイロショウジョウバエを用いる研究を並行して進める予定である。 1)ヒラタチャタテは乾燥ストレスに対して極めて高い感受性を示すが、湿度20%の前乾燥ストレスを72時間以上経験する事によって、その後の(致死的)乾燥ストレスに対する耐性が有意に上昇する事を明らかにした。今年度は、より高い乾燥ストレス耐性増強効果を誘起し得る前乾燥処理条件について更に検討を加えると共に、異種ストレスである低温(4oC)前ストレスによる乾燥ストレス耐性上昇を誘引し得る前低温ストレス条件を検証する。 2)前年度、キイロショウジョウバエ幼虫については37度/30分という前熱ストレスを30分間のインターバルを置いて3回以上繰り返すことによって、18時間以上の40度/30分という致死的熱ストレスに対する有意に高いストレス抵抗性が維持される事を明らかにした。ただ、現時点では3回以上の前熱ストレス供与によっても18時間後の致死的熱ストレスによっての(24時間後の)生存率は30-40%程度に留まる(前熱ストレス処理が2回以下であれば、同様の生存率は20%以下)。できることなら、前ストレス供与後18時間で致死的熱ストレスを与えても(24時間後の)生存率を50%以上にし得る前ストレス供与条件を見出したい為、今後も前ストレス供与条件の検討を更に継続する。また、今年度は、ホルミシス(ストレス順応性)獲得と寿命との関係を明らかにする為に、N-アセチルチロシン(NAT)摂食によるキイロショウジョウバエ成虫の寿命への影響を検証する実験を本格的に始める。
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