研究課題/領域番号 |
23K21202
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補助金の研究課題番号 |
21H02209 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
嶋田 透 学習院大学, 理学部, 教授 (20202111)
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研究分担者 |
李 允求 学習院大学, 理学部, 助教 (50847168)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | キヌレニン経路 / カイコ / 遺伝子喪失 / 水平転移 / 3-ヒドロキシアントラニル酸 |
研究開始時の研究の概要 |
キヌレニン経路は動物のトリプトファン代謝で最も重要な経路であるが、ほとんどの昆虫は経路後半の3酵素(KYNU、HAAO、ACMSD)を欠き、不完全である。一方で、蝶・蛾類は細菌から水平転移で獲得したキヌレニナーゼ遺伝子を持ち、3-ヒドロキシアントラニル酸とその代謝産物を作りだせる。本研究は、昆虫の比較ゲノム解析で遺伝子の得失の時期と系統を解明し、さらに生物的意義も究明する。これら成果は有用昆虫の育種や害虫防除に活かすことができる。
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研究実績の概要 |
キヌレニン経路はトリプトファンの主要な代謝経路である。本研究の目的は、昆虫および近縁の節足動物におけるキヌレニン経路の多様性と、その生物学的意義を明らかにすることである。昆虫(外顎類)の共通祖先におけるキヌレニン経路を推定するために、古顎目に属するヤマトイシノミのゲノム解析およびトランスクリプトーム解析(RNA-seq)を実施した結果、ヤマトイシノミには、脊椎動物と同様に、TDO、KMO、KYNU、HAAO、ACMSDの5つの酵素をコードする遺伝子が存在することが明らかになった。総尾目(シミ目)および有翅昆虫のほとんどの系統では、TDOとKMOの 2つの遺伝子しか存在しないので、古顎目(単関節丘亜綱)と双関節丘亜綱の分岐後に、後者の共通祖先でKYNU、HAAO、ACMSDの3つの酵素遺伝子の相次ぐ喪失が起きたことが分かる。 他方、鱗翅目のうち二門類(Ditrysia)のほとんどの系統は、TDOとKMOに加えてKYNU(キヌレニナーゼ)を有しており、3-ヒドロキシアントラニル酸(3HAA)を合成できると考えられる。前年度までに、エリサンでKynu遺伝子をノックアウトすると致死になることを明らかにし、KYNUが生存に必須であることを示した。今年度は、KYNUが必須であることの理由を解明するために、キヌレニン経路の中間産物の代謝機構を研究し、NAD合成経路への接続に必要な鍵酵素であるQPRTの遺伝子が、古顎目を含めて昆虫には欠けていることを示した。また、中間産物の解毒や輸送に関わるUDP-グルコース転移酵素の遺伝子を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昆虫で最も早く分岐した系統である古顎目のヤマトイシノミ(Pedetontus nipponicus)のゲノム解析とトランスクリプトーム解析を実行し、TDO、KMO、KYNU、HAAO、ACMSDの5つの酵素をコードする遺伝子の存在と発現を明らかにすることにより、完全なキヌレニン経路が存在することを示した。前年度までに明らかになったとおり、Kynuが必須遺伝子である理由を説明するために、キヌレニン経路の中間産物の代謝経路を明らかにした。これらは昆虫における新規な代謝経路の獲得機構の解明につながる新たな発見である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、KYNUの機能を明らかにするために、個体レベルの遺伝学・生理生化学的解析と、in vitroでの酵素活性の解析を続けてゆく。特にカイコにおけるKynu遺伝子のノックアウト実験により、KYNUの重要性を確かめるとともに、新規な生化学システムの獲得を証明する。
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