研究課題/領域番号 |
23K21206
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補助金の研究課題番号 |
21H02216 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
伊藤 健彦 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 主査 (50403374)
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研究分担者 |
菊地 デイル万次郎 東京農業大学, 農学部, 助教 (30793343)
中野 智子 中央大学, 経済学部, 教授 (70295468)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | 移動生態学 / 草原生態系 / モンゴル / モウコガゼル / 保全 |
研究開始時の研究の概要 |
モンゴルの草原地帯に生息するモウコガゼルの大移動の保全をめざし、環境条件としての動物情報を定量化を実施する。そのために、動物装着カメラ映像の通年解析を導入し、環境条件としての動物情報を定量化する。この同種他個体および他種に関する動物情報と、環境情報、追跡個体の位置・加速度情報を総合的に解析し、モウコガゼルの長距離移動や生息地選択への種内密度や家畜の影響を評価する。また移動パターンの性差にも注目し、環境要因としての動物情報を組み込んだ保全対策を提言する。
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研究実績の概要 |
モンゴルの草原地帯に生息する長距離移動性の野生草食獣モウコガゼルの大移動の保全にむけて、動物装着カメラ映像の通年記録による、同種他個体や家畜の影響評価手法の開発を進めている。新型コロナ感染症とウクライナ戦争の影響により、研究初年度と2年目に予定していた、モンゴルでの首輪装着によるモウコガゼルの個体追跡と映像等の記録が開始できなかったが、2023年9-10月にモウコガゼル分布域の北部と南部の2地域で、合計28頭のモウコガゼルの捕獲と首輪装着に成功した。これにより、モウコガゼルや家畜の密度、植生などが異なる地域での家畜との遭遇頻度や行動などの比較が可能になることが期待される。本調査時には、過去の課題で追跡した個体の首輪の回収と加速度データのダウンロードにも成功し、国内ではこれらのデータの解析を進めた。 加速度解析では、静的活動と動的活動からなる数時間単位の活動周期の季節変化傾向がすべての個体で一致していることが確認された。地域差や同一個体での年変動も観察された。また、3軸の加速度解析から、飛来性の昆虫を除けるためとみられる特徴的な首振り行動を検出する手法を確立し、首振り回数が、飛来性昆虫の活動が活発だと推測される季節や時間帯と正の相関があることを明らかにした。飛来性昆虫は、有蹄類の移動や生息地選択、栄養状態などに影響を及ぼすことが知られている。観察が難しい野生動物での、定量的・継続的な飛来性昆虫の影響評価手法の確立は、野生有蹄類の移動生態研究の発展につながるだろう。また、睡眠(首を倒した状態での休息)の判別手法も確立した。さらに、近距離であれば雌雄判別も可能な、首輪カメラで撮影された動画からの機械学習を用いた高精度での他個体検出手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症やウクライナ戦争の影響で、モウコガゼルへの首輪装着が過去2年間できなかった。首輪装着は2023年の秋に実現できたが、本格的なデータ解析は、加速度や動画データを1年間記録した後に自動脱落させた首輪を回収する、2024年の秋以降となるため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年秋にモウコガゼルに装着した首輪は、1年後である2024年秋に自動脱落する予定である。それまでは、すでに回収済みのデータ解析を進める。首輪脱落後または追跡個体の死亡が推定された場合には、衛星送信されている位置情報をもとに首輪を探索し、加速度と動画のデータをダウンロードする。それらのデータと各種の環境情報から、総合的な解析を実施する。 首輪回収のためのモンゴルへの渡航は2024年10月ごろを予定している。追跡個体のそれまでの生息地利用や移動の実態を参考に、首輪回収時に追跡個体の生態・行動に関して注目すべき地域を通過する際には、地形や植生、家畜密度、開発の状況などを調査する。日本からの研究者渡航中に首輪回収が完了できなかった場合には、現地共同研究者に首輪回収を委託し、最大限のデータ回収に努める。 回収した動画からは、すでに確立済みである、モウコガゼル他個体の自動検出手法を用いて、相対的な群れサイズの季節変化を明らかにする。家畜など、モウコガゼル以外の種が撮影された場合には、それらの種判別と頭数や遭遇頻度などを集計し、遭遇しやすい時期や地域を特定する。また、植生や積雪などの利用環境の自動評価手法の開発を目指すとともに、動画からの環境条件の季節変化や地域差を定量化する。加速度データからは、採食周期等の行動を推定する。位置情報からは、生息地利用と移動パターンの実態を明らかにする。これらのデータと環境情報データを総合的に解析し、性差や地域差、個体差にも注目して、モウコガゼルの生息地選択や季節的な移動の要因を解明する。
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