研究課題/領域番号 |
23K21223
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補助金の研究課題番号 |
21H02252 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 朝哉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (10359573)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | リグニン / 過酸化水素 / バニリン / アルカリ / アルカリ性 / クラフトリグニン / ソーダリグニン / オキシルアニオンラジカル / モデル化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
従来、木質バイオマスの化学的利用法として、製紙用パルプやバイオエタノールの製造等が実施されている。これらの過程では、木質バイオマス主要三成分であるセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンのうち、前二者を高付加価値物質として利用しており、排出される副次生成リグニンは、基本的には廃棄物(パルプ製造過程では燃焼でエネルギー源)となっている。 本研究では、この副次生成リグニンを原料とし、これらからファインケミカルであるバニリン類を調製することを目的とする。このバニリン類調製が達成されれば、上記主要三 成分全ての有効利用が可能となり、木質バイオマスの有効利用を大きく推進することとなる。
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研究実績の概要 |
本研究では、木質バイオマスの主要三構成成分のうちの一つであるリグニンの利用において、他の主要成分であるセルロースとヘミセルロースの活用を担保することができない天然リグニンを原料とする方法を開発するのではなく、製紙用パルプ製造過程で得られるクラフトリグニンやソーダリグニン等の副次生成リグニンを原料とすることによって上記の活用を担保し、木質バイオマスの主要三成分のすべてを有効活用することに対して大きく貢献することを、広義の目的としている。 これまでの研究代表者の四半世紀にわたる研究で得た知見によれば、高アルカリ性下での過酸化水素処理において(多くの過酸化水素分子は共役塩基であるヒドロペルオキシドイオンとして存在する)、過酸化水素の自己分解で生成するオキシルアニオンラジカル(ヒドロキシルラジカルの共役塩基)は、非フェノール性部分のリグニンとの反応では、芳香核ではなく脂肪族側鎖を選択的に攻撃するため、リグニンの芳香核構造が変質しない。本研究ではこの知見に基づいて、上記副次生成リグニンの高アルカリ性下における過酸化水素処理によって、ファインケミカルであるバニリン類を製造することを目的としている。 令和5年度は、令和4年度に得られたバニリン量をさらに向上させるために、反応条件の調整を行った。これによって、特に糖アルコールであるマンニトールの添加が有効であることを確認した。また、アルカリ性過酸化水素処理では、副次生成リグニン中のフェノール性水酸基を有する部位からはバニリン類が生成し難いという知見が得られたため、副次生成リグニン中のフェノール性水酸基をメチル化し、この試料をアルカリ性過酸化水素処理に供し、バニリン類生成量の向上を確認した。その結果、バニリン類の生成量は想定に反して減少したが、これは、メチル化によってリグニン試料のアルカリ溶解性が減少したことに起因することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、令和5年度には、令和4年度に確立したリグニン試料に対する最適条件の下で、様々な助剤を添加してその効果を検討し、バニリン類収率の向上を目的として実験を行い、糖アルコールであるマンニトールのの添加が有効であることを確認した。また、フェノール性ヒドロキシ基のメチル化の効果を検討し、これが大きくないことを確認した。これらは、令和5年度の交付申請書で記載した進捗予定と同程度であったため、「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、バニリン類収率の評価法を記載する。アルカリ性ニトロベンゼン酸化は、リグニン系試料からバニリン類を生成させることにおいて最も高効率であり、可能最大収率として取り扱うことができる。なお、ニトロベンゼンは毒性を持つため、実際の過程としては使用不可能である。これに基づき本研究では、この可能最大収率に対する相対収率での評価を行っている。 弱酸性~中性の過酸化水素水溶液を室温下で紫外線照射すると、過酸化水素が自己分解してヒドロキシルラジカル(HO・)が生成することが知られており、これまでに、この条件下におけるリグニンの分解反応が検討されている。過酸化水素が解離してヒドロペルオキシドアニオンとなる強アルカリ性下(pH>12)において過酸化水素水溶液に紫外線照射をすると、本研究で活性種として重要なオキシルアニオンラジカル(O-・)が生成すると考えられるが、これまでにこの条件下の検討は行われていない。本年度は、次の検討を行う予定である。 ①:リグニンモデル化合物とマンニトール等の様々な添加物を含む過酸化水素水溶液を強アルカリ性とし、これに室温下で紫外線照射することによって、リグニンモデル化合物が多く分解し、これに伴ってバニリン類が高収率で生成する添加物を選定する。 ②:①のモデル化合物をクラフトリグニンあるいはソーダリグニン試料として同様の処理を行い、バニリン類が多く得られる添加物を検討する。
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