研究課題/領域番号 |
23K21224
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補助金の研究課題番号 |
21H02257 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉永 新 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60273489)
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研究分担者 |
岸本 崇生 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60312394)
重冨 顕吾 北海道大学, 農学研究院, 講師 (20547202)
飛松 裕基 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (20734221)
津山 濯 宮崎大学, 農学部, 助教 (40786183)
上高原 浩 京都大学, 農学研究科, 教授 (10293911)
粟野 達也 京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,390千円 (直接経費: 10,300千円、間接経費: 3,090千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 圧縮あて材 / 引張あて材 / リグニン / モノクローナル抗体 / 木化 / ヘミセルロース / ペクチン / G層 |
研究開始時の研究の概要 |
樹木は細胞壁の微細構造とその成分分布が変化したあて材を形成し、幹や枝にかかる圧縮および引張の力に対抗する機能を発現することで姿勢を制御し、様々な生育環境に適応している。本研究では、申請者がこれまで独自に開発してきたリグニンに対するモノクローナル抗体に加え、H核リグニンや、ジベンゾジオキソシン構造に対するモノクローナル抗体を作製し、リグニンの空間定量ツールセットを確立する。これを駆使して、あて材形成に伴う細胞壁の微細構造と成分分布の変化による機能の発現を網羅的に解析することにより、樹木の姿勢制御の精密な機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
あて材形成の比較対象となる広葉樹のうち、グアイアシルリグニンの割合が高い広葉樹のトチノキの正常材分化中木部について、リグニン中の結合様式に特異的に反応する4種類のモノクローナル抗体を用いて免疫蛍光標識した。得られた画像を解析し、細胞壁各部位での標識強度を比較する方法を確立した。連続切片の自家蛍光像からリグニン全体の分布も評価し、細胞壁の木化過程と結合様式の変化について考察した。その結果、道管要素二次壁では木化の初期段階に8-5'型、8-8'型、8-O-4'型、 5-5'型構造が形成され、木化に伴い8-8'型構造が増加すること、木部繊維二次壁では木化の初期段階に8-5'型、8-8'型、8-O-4'型、 5-5'型構造が形成され、木化に伴い8-5'型、8-8'型構造が増加すること、木部繊維間のコーナー部細胞間層では木化の初期段階に8-8'型、 8-O-4'型、5-5'型構造が形成され、木化に伴い8-5'型構造が増加し、 8-8'型構造は増加した後に抗体が認識できない構造に変化することが明らかになった。 スギおよびヒノキを人為的に傾斜して圧縮あて材を形成させ、正常材、圧縮あて材、オポジット材における細胞壁成分分布を比較した。その結果、オポジット材では正常材に比べてリグニン中のシンナムアルデヒド構造の割合が増加すること、グルコマンナンの分布が変化することが明らかになった。 ポプラ引張あて材より、約500mg程度のG層を集めるのに必要な30µm厚さの横断切片を作製した。 H型5-5’型構造を含む2量体モデル化合物をジアゾカップリングを用いて馬尿酸-牛血清アルブミンと結合させ、複合体を調製した。この複合体を抗原とし、マウスモノクローナル抗体を作製した。その結果、モデル化合物部分に反応し、馬尿酸-牛血清アルブミンおよび牛血清アルブミンに反応しない抗体を産生するクローンを確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、リグニンのH核5-5'型構造、ジベンゾジオキソシン構造に対するモノクローナル抗体をを作製し、リグニンの空間定量ツールセットを確立する。傾斜に対する反応の異なる針葉樹と広葉樹の多様な種において、傾斜した幹の上側と下側にできる材の様々な壁層について、リグニンの化学構造および非セルロース性多糖類の壁層ごとの分布の違いを、 特異抗体を用いた免疫標識法、化学分析を組み合わせて、網羅的、定量的に評価する。その知見をもとに樹木の姿勢制御機構を解明することを目的とする。 R3年度はまず、新しくモノクローナル抗体を作製するための抗原として、H核5-5'型構造を含むモデル化合物を合成した。さらに針葉樹、広葉樹ともにあて材形成の比較対象として重要となる正常材について、既存の4種類のリグニン結合様式に対するモノクローナル抗体を用いて標識し、標識強度の比較方法について検討した。蛍光標識画像から特定のチャンネル画像を取得し、細胞壁各部位での標識強度を比較する方法を確立した。連続切片の自家蛍光像におけるリグニン全体の分布の評価と合わせることで、細胞壁の木化に伴うリグニン化学構造の変化を追跡することが可能となった。ポプラのG層に8-O-4'型構造を持つリグニンが微量に存在することを化学分析により確認するため、ポプラG層を純度よく単離する方法を確立した。 R4年度は新しくリグニンのH核5-5'型構造に対するモノクローナル抗体を作製した。広葉樹のうち、グアイアシル核の割合が高いトチノキ分化中木部を用い、4種類のモノクローナル抗体による免疫蛍光標識により木化に伴うリグニンの化学構造変化を明らかにした。針葉樹のスギおよびヒノキの圧縮あて材、正常材、オポジット材の細胞壁成分分布を比較し、オポジット材ではリグニンの構造、グルコマンナンの分布が正常材と異なることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ジベンゾジオキソシン構造に対するモノクローナル抗体の作製 ジベンゾジオキソシン構造を持つモデル化合物をジアゾカップリングを用いてタンパク質と結合させて複合体を調製する。この複合体を抗原として外部委託によりマウスモノクローナル抗体を作製する。得られたハイブリドーマから、ジベンゾジオキソシン'構造に反応し、G核からなる5-5'型構造や、他の結合様式に反応しない抗体を産生するハイブリドーマを選別する。有望なハイブリドーマを用いて外部委託により無血清大量培養により高濃度の抗体を含む培養上清を得る。得られた培養上清について、競合阻害ELISA法などにより、抗体の特異性を明らかにする。昨年度作製したH型5-5'構造に対するモノクローナル抗体についても同様の方法で特異性を明らかにする。 (2)G層を持つ広葉樹引張あて材の免疫標識と標識の定量法の確立、化学分析 針葉樹圧縮あて材と、G層を形成する広葉樹引張あて材について、傾斜の上側と下側の木部および師部をそれぞれリグニンの部分構造に対する既存の4種類のモノクローナル抗体および非セルロース性多糖類に対するモノクローナル抗体で標識する。昨年度はカラー画像から標識強度を評価する方法を検討したが、今年度は新しく研究室に導入されたモノクロカメラを用いて定量的に評価する方法を確立する。また、同じ試料の傾斜上側と下側の木部および師部について化学分析し、化学構造の違いを明らかにする。 (3)単離したG層の化学分析 昨年度、G層を形成する広葉樹引張あて材について、横断切片の超音波処理によってG層を大量に単離する方法を確立した。今年度は単離したG層についてチオアシドリシス分析、NMR分析によってG層中に微量に含まれるリグニンの化学構造を明らかにする。
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