研究課題/領域番号 |
23K21225
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補助金の研究課題番号 |
21H02261 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
古海 誓一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (30391220)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
12,740千円 (直接経費: 9,800千円、間接経費: 2,940千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | セルロース / バイオマスリファイナリー / コレステリック液晶 / エラストマー / ひずみ / ゴム弾性 / 粘弾性 / 反射色 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、セルロースナノファイバー(CNF)のようになセルロースで“かたい”材料を目指す研究とは対照的に、セルロースの側鎖を適切に化学修飾することでコレステリック液晶由来のブラッグ反射の色を示すだけでなく、ゴム弾性にも富んだ“やわらかい”コレステリック液晶エラストマーの形成メカニズムを解明することである。この未開拓分野における学術的な基盤技術を確立するとともに、さまざまな産業・医療分野で役立てられる新しい伸縮性ひずみ可視化フィルムへの適用を実証する。
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研究実績の概要 |
セルロース誘導体は、溶媒に溶解するとコレステリック液晶を発現する環境低負荷な材料である。コレステリック液晶では液晶分子が分子らせん構造を形成しており、その分子らせんの周期長に応じた波長の光を反射する。コレステリック液晶のらせんの周期長はセルロース誘導体の側鎖に導入する置換基の種類や導入量だけでなく、温度によっても変調できる。これまでに、エチルセルロースの側鎖をエステル化した誘導体を用いたコレステリック液晶に関する研究例は数多く報告されているものの、側鎖をエーテル化したEC誘導体に関する研究例は皆無であった。 そこで、今年度は、アルコキシ基を導入したエチルセルロースのエーテル化物の合成を試み、適切な溶媒に溶解することでリオトロピック・コレステリック液晶を調製するとともに、その光の反射特性を調査した。ペンチルエーテル基の置換度(DS-Pe)が異なる3種類のエチルセルロース誘導体を合成し、室温で液体のメタクリル酸などに溶解し、光の反射特性を調査した。たとえば、エチルセルロース誘導体のリオトロピック・コレステリック液晶を30 ℃から60 ℃まで加熱すると、反射ピークの波長は533 nmから434 nmまで99 nmも短波長側へシフトし、反射色は緑から青へ変化した。これは、温度によりコレステリック液晶の分子らせんの周期長が変調したためである。ところが、この温度によって反射ピークがシフトする波長範囲は、エチルセルロース誘導体のDS-Peに大きく依存していた。レオロジー測定の実験結果と組み合わせると、DS-Peの増大に伴い昇温過程における反射波長のシフト範囲が減少した理由は、DS-Peの増大により分子らせん構造の動きが鈍くなり、加熱してもらせんの周期長が変調しにくくなったためであると考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの本申請者らの研究で、セルロース誘導体によるコレステリック液晶に関する知見が得られており、順調に研究を進めることができた。とりわけ、2023年度は、側鎖の化学修飾が難しいといわれているエチルセルロースについて、そのエーテル化物の合成にチャレンジした。試行錯誤を繰り返した結果、側鎖をアルコキシ基で完全にエーテル化したエチルセルロース誘導体の合成方法を確立できた。これらエチルセルロース誘導体をメタクリル酸やアクリル酸などの溶解したリオトロピック・コレステリック液晶の一部で、特異な反射特性が現れることを見出した。さらに、派生的な研究成果も得ることができ、5件の特許出願を行うことができた。今後、学会発表や特許出願だけでなく、学術論文の掲載を目指して研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、特異な化学結合を有する架橋剤を合成し、セルロース誘導体のコレステリック液晶における新しい研究展開を図る。光の反射特性やゴム弾性といった物性評価だけでなく、地球環境に役立つ新たな物性の発現も目指し、本研究提案が将来のSDGsに貢献できるよう研究を推進する。
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