研究課題/領域番号 |
23K21232
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補助金の研究課題番号 |
21H02272 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
石橋 泰典 近畿大学, 農学部, 教授 (90247966)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 行動制御 / 光波長 / 魚類 / 種苗生産 / 養殖 / 輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
魚類の多くは成長に伴って生育場所が変わり,光環境もそれに応じて変化する。このため,好ましい光の波長,明度,照射量,日周期等は魚種や発育段階で変化し易い。しかし,それらの光情報を使って魚類の行動を制御する方法や効率的に飼育する方法は十分に検討されていない。そこで本研究は,多くの魚種の様々な対光行動等を詳細に調べ,目的に応じた行動制御法,飼育方法等を開発する。学術的には,幅広い魚種,発育段階で対光行動と生態等との関係を考察する。応用面では,クロマグロ等の数種養殖魚の飼育で生じる摂餌不良,浮上死,沈降死,各種大量死,成長不良,輸送等の問題に関与する対光行動等を調べ,効率的な種苗生産モデルを開発する。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で,幅広い硬骨魚の行動を特殊プロジェクター光で制御できる可能性のあることが示唆された。2023年度はその中で,生息環境が大きく変化する通し回遊性の養殖魚を数種用いて対光行動を検討するとともに,反応が顕著なアユ仔稚魚の行動特性等を調べた。また,海産魚ではクロマグロ稚魚の対光行動等を検討し,それらの詳細を以下に示した。 1. 数種通し回遊魚の対光行動: アユ,ウナギ,イワナ,ニジマス等を用い,各種光波長,明度に対する行動の変化を調べた。その結果,種によって反応が異なり,アユの赤色光に対する反応が最も顕著で,イワナとニジマスが光波長の変化に反応し難いこと等が示唆された。また,アユの忌避波長と誘引波長を用いて目的の位置に稚魚を誘導することができ,光で行動を制御できる可能性の高いことが示唆された。 2. アユ仔稚魚の視物質遺伝子とプロジェクター光に対する行動の変化: アユの卵,仔稚魚の視物質遺伝子の発現様式を調べたところ,発眼卵から様々なオプシン遺伝子が発現し,孵化直後には数種の光波長を視認できる可能性の高いことか示唆された。また,アユは孵化直後からプロジェクター光の波長や明度に対する反応が始まり,全ての発育段階で忌避波長と誘引波長があること,明暗の反応が変態前から変化すること等が示唆され,一部は生活史に関係すると考えられた。さらに,仔魚の摂餌率に及ぼす数種LED光の影響を調べ, 紫外線等で摂餌が高まることが示唆された。 3. クロマグロ稚魚の対光行動: 赤や青色光の反応がクロマグロ稚魚で顕著なことが示唆され,明度にも強く反応すると考えられた。また,クロマグロ稚魚の夜間電照飼育では衝突・接触死等の大量死を防ぐこと以外に,夜間に光に蝟集したプランクトンを稚魚が摂餌することが示唆され,沖出し直後の光制御飼育が有効に働く理由の1つであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から魚種を絞り込み,通し回遊性の数種稚魚を用いて光環境特性を検討したところ,魚種によって対光行動の大きく異なること等が示唆された。また,反応の顕著なアユ仔稚魚を用いて視物質遺伝子の発現様式や仔稚魚の発育に伴う対光行動の変化を推察することができ,具体的に稚魚をプロジェクター光で目的位置に誘導することができた。さらに,クロマグロ稚魚についても詳しく検討し,赤および青色の光波長や明度に顕著な反応を示すことが分かっただけでなく,生簀での光制御飼育でも夜間の摂餌に違いが表れて有効に働くことを推察した。2023年度に予定した研究の一部は当初計画より進展したものの,多くが計画通りに順調に進んだため,達成度は「2: おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に通し回遊性の養殖魚やアユ仔稚魚の対光行動の特性等を見出すことができ,クロマグロ稚魚についても,どの光波長や明度に反応が顕著であるかなど,いくつかの特性を掴むことができた。2024年度は,クロマグロ,スマ等のマグロ類仔稚魚を主な対象種として選択し,それらの発育に伴う視物質遺伝子の変化やプロジェクター光に対する行動の変化を詳細に調べる。これによってマグロ類等の数種仔稚魚の発育に伴う光環境の変化と対光行動との関係を考察し,発育段階毎の適切な飼育環境の構築に役立てる。また,マグロ類等を用いて実質的な行動制御法を検討し,仔稚魚の輸送などで使える技術の発展に繋げたい。
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