研究課題/領域番号 |
23K21235
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補助金の研究課題番号 |
21H02282 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
遠藤 英明 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50242326)
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研究分担者 |
呉 海云 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (70802065)
村田 政隆 公益財団法人函館地域産業振興財団(北海道立工業技術センター), 研究開発部, 研究主査 (40505707)
大貫 等 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60223898)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | バイオセンサ / 魚類 / スマートセンシング / ストレス / QRコード / 可視化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,次世代の魚類の生体計測を念頭に,生体内情報の可視化,計測,伝達を可能とするスマートバイオセンシングシステムを創出することを目的とする.すなわち,迅速簡便な情報伝達が可能な情報媒体であるQRコードに着目し,魚の生理状態を把握するにあたって要望が高い測定項目,特にストレス応答のモニタリングを中心に,これらの計測情報をヒトにわかりやすくリアルタイムに伝達できる新しいシステムの構築を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究は,次世代に対応できる魚類の生体計測を念頭に,生体内の生理情報の可視化,計測,伝達を可能とするスマートバイオセンシングシステムの創出を目的とする.今年度は,魚体内の測定において生体内夾雑物質の影響を受けにくい低電位レドックスポリマーを用いたバイオセンサの製作,生体内留置に優しいフレキシブルバイオセンサの魚体への応用を行うと共に,スマートバイオセンシング実現のための新しいQRコード通信システムの基礎的な設計・製作を行った.まず,低電位レドックスポリマーを用いたバイオセンサの製作を試みた.これまでのグルコース測定用バイオセンサは,測定に高い酸化還元電位を印加する必要があったため,グルコースと共存する他の物質(生体内夾雑物質)がこの電位により同時に酸化されることで,グルコース濃度の測定に影響を及ぼすことがしばしばあった.そこで今年度は,それら生体内夾雑物質の影響を受けにくい低電位での測定を可能にするために,レドックスポリマーをメディエータとして用いることにより,これまでのバイオセンサよりも低電位で作動可能な新しいセンサを製作した.次に,フレキシブルバイオセンサについては昨年度までの研究実績を基に,センサの新たな留置部位として魚の腹部間質液(AISF)に着目し,ここにセンサを挿入することを試みた.具体的には,本センサの有用性を明らかにするために,バイオセンサをAISF中に留置すると共に,これまでの測定部位であった魚類眼球外膜間質液(EISF)にも留置して,両間質液におけるモニタリング結果を比較することにより,AISF留置におけるセンサの特性を検証した.さらに,スマートバイオセンシングシステム実現のための新しいQRコード通信システムでは,マイコン開発キット(M5Stack)を用いて,水中におけるM5Stack上に表示されるQRコードをカメラで読み取るための最適な条件を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低電位レドックスポリマーを用いたバイオセンサの特性評価では,血漿試料中の測定においてグルコース濃度と出力電流値の間に良い相関が認められた.また,本センサの生体内夾雑物質に対する応答は,従来のセンサと比較して微小であり,グルコースに対して高い特異性を示した.これより,本センサは低電位の印加電圧によるグルコース定量が可能であり,かつ生体内夾雑物質の影響を受けにくく,より正確にグルコース濃度を測定できることが示された.また,EISFに留置したストレス応答測定では,ストレス負荷・解消に伴う出力電流値の変動が認められ,本センサを用いて魚のストレス応答測定が可能であることが確認できた.次に,フレキシブルバイオセンサをEISFおよびAISF中に留置して両間質液におけるモニタリング結果を比較したところ,センサの応答値は両間質液中においてストレス負荷の開始に伴い上昇し,終了に伴い下降する一連の挙動が確認された.一方,両間質液中におけるストレス応答の変動は完全には同調せず,ストレッサーに対する応答の大きさをはじめ,その応答開始時間と継続時間についてもやや異なることがしばしば確認された.したがって次年度は, センサのAISFへの留置手法の更なる検討を行うと共に,他の留置部位の探索も同時に行う.一方,製作したQRコード通信システムを用いて水中におけるコードの読み取り条件を検討したところ,色のコントラスト比が高く,余白面積を微小にしたコード表示が今回の測定系に最適であることがわかった.また,水中濁度の上限については濁度30度までの環境において認識することができた.一方,センサの応答値におけるシステムの特性評価では,実際のグルコース濃度とQRコードに変換した応答値の間に良い相関が認められた. 以上の理由から研究の進捗はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,以下の計画にしたがって研究を遂行する. 1)AISFへのバイオセンサの新たな留置手法の検討:グルコース測定用フレキシブルバイオセンサの留置場所として,昨年度に引き続き魚の腹腔中の腹水に着目し,新しい留置手法を検討する.まず,センサを魚腹部の間質液中に留置するために,供試魚の背鰭を下にして,腹部が露出するように固定する.次に,吻先から尾鰭までの直線上における腹鰭と肛門の中間地点に,動物用留置針を用いて腹腔まで貫通するように穴を開ける.ここにセンサを刺入,留置した後,魚を一晩遊泳させて落ち着かせた後,魚体にストレスを負荷し,その際のグルコースの測定を試みる. 2)バイオセンサの新たな留置部位の検討:コルチゾルやコラーゲンを測定するためのバイオセンサの留置部位として,魚の体表面の粘液に着目し,それらおけるコルチゾル,コラーゲンの化学物質の存在の有無を検討するとともに,バイオセンサを用いたそれら物質の測定を試みる.まず,供試魚に麻酔をかけ,プラスチック製のヘラを魚体の体側部に押し当て,鰓蓋から尾鰭方向に向かって供試魚の体表粘液を集め,粘性溶液用ピペットを用いて粘液試料を採取する.この粘液の緒特性を検討した後,ストレス負荷後の粘液中のコルチゾルやコラーゲン濃度の経時的変化を調べる.これにより非侵襲的な新しい測定法を確立すると共に,上記化学物質のストレス指標としての可能性について検討する. 3)QRコード情報を介した魚のストレス応答測定の検討:今年度製作したQRコード通信システムを実際の魚に装着して,そのストレス応答測定を試みる.まず,魚にストレスを負荷し,バイオセンサの出力応答値をM5Stackを介してQRコードとして表示させる.次に,表示されたコードを直接スマートフォンで読み取ると同時に,そのデータを解析可能なシステムの構築を目指す.
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