研究課題/領域番号 |
23K21248
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補助金の研究課題番号 |
21H02315 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41040:農業環境工学および農業情報工学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
岩田 拓記 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (10466659)
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研究分担者 |
朴 虎東 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (20262686)
宮原 裕一 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80311330)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
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キーワード | メタン放出 / 湖 / 渦相関法 / 富栄養化 / 培養実験 / メタン / 溶存メタン濃度 / シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
浅い湖沼は温室効果ガスであるメタンの放出源である.湖からのメタン放出は温度などの物理環境要因だけでなく,富栄養化に伴う堆積層への有機炭素供給の増加などの生物地球化学的要因によっても影響を受ける.しかし,富栄養化の影響についてはこれまで実験室での研究がほとんどである.実際の湖環境において栄養レベルの変化がメタン放出の変化にどの程度影響するかを定量化することが必要とされている. 本研究は,メタン放出の連続測定,堆積層への有機物供給測定,堆積物中のメタン生成実験を融合することで,湖の栄養レベルの変化が大気へのメタン放出の季節・年次変化にどのように,そしてどの程度影響するかを明らかにする.
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研究実績の概要 |
浅い湖沼は重要な温室効果ガスであるメタンの放出源である.湖からのメタン放出は温度などの物理環境要因だけでなく,富栄養化に伴う堆積層への有機炭素供給の増加などの生物地球化学的要因によっても影響を受けることが提案されている.本研究は,メタン放出の連続測定,堆積層への有機物供給及び水質測定,堆積物中のメタン生成実験を融合することで,湖の栄養レベルの変化が大気へのメタン放出の季節・年次変化にどのように,そしてどの程度影響するかを明らかにすることを目的としている. 2023年度には,渦相関法によるメタン放出量,気象・湖内環境の連続測定,定期的な溶存メタン濃度の観測,水質観測を実施した.2016年から測定しているメタン放出量データを解析し,その季節変化と経年変化の要因を明らかにした.また,湖底堆積物中におけるメタン生成が添加する有機物種類とその状態に対してどのように応答するかを明らかにするために,培養実験を実施した.さらに湖内における有機物生産と関係する湖と大気との間の二酸化炭素交換における水生植物の役割を明らかにした. データ解析から、以下のことが明らかとなった.(1)これまでの7年間のメタン放出データを取りまとめ,その経年変化が水生植物繁茂面積と関係していることを明らかにし,水生植物の根からの堆積物への炭素供給がメタン放出の年変動に関係している可能性を示した.一方で,夏季の植物プランクトン量とメタン放出の年変動には関連が見られず,植物プランクトンの増殖はメタン生成の促進に影響していない可能性が示された.(2)藍藻,珪藻,水生植物を添加した堆積物ではメタン生成速度が有意に増加することを示した.珪藻は有機物含有割合が小さく,他の有機物よりもメタン生成の促進が小さいことがわかった.(3)水生植物の繁茂状況により諏訪湖は二酸化炭素の放出源から吸収源に変わることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で計画していた研究は順調に実施できている. メタン放出や気象・湖内環境の連続観測は最大限欠測の無いように実施しており,季節変化や年々変動を明らかにするデータの取得ができている.メタン放出の年々変動を説明する要因の解析も進めており,それにより夏のメタン放出量が年によって異なり、水生植物繁茂量と相関しているが明らかとなった.水生植物による有機物生産に関わる湖と大気との間の二酸化炭素交換の評価も進めている. 渦相関法によるメタン放出測定はそもそも欠測を含むものであるが、その補間をランダムフォレストモデルを用いて行うことを検討した.また,拡散放出とバブル放出に分離する手法の検証のために、独立したメタン拡散放出観測を実施し、その比較により妥当性を示した. 水質および堆積層への有機炭素供給の観測も継続して実施できている.クロロフィルa濃度の測定は湖心に加えて沿岸帯でも継続的に実施した. 有機物添加の培養実験については予定よりも早く実施できており,藍藻、珪藻、水生植物であるヒシやクロモの添加がメタン生成速度を有意に上昇させることがわかった.次年度は微量の酸素が存在するような浅い湖の湖底付近を再現する培養実験を計画している.それにより,メタンと二酸化炭素の生成がどのように影響を受けるかを明らかにする予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後も予定通り計画を進めて,観測の継続をおこなう.メタン放出および二酸化炭素交換データの欠測補間を行い,季節単位や年単位での放出量の変動の解析を実施する. 培養実験においてはこれまでに完全な嫌気状態における有機物分解を評価していたが,それに加えて酸素が微量に存在する浅い湖の湖底を再現するような培養実験を実施し,実際の現場の状況で有機物がどのように分解され,メタンと二酸化炭素が生成されているかを評価する. 湖内における有機物生産に関係する湖と大気との間の二酸化炭素について研究を進める予定である.二酸化炭素交換測定の精度検証を行うとともに,これまでに観測された約8年間の二酸化炭素交換データをまとめる. メタン放出の経年変化に関して論文にまとめる予定である.
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