研究課題/領域番号 |
23K21251
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補助金の研究課題番号 |
21H02325 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
二瓶 直登 福島大学, 食農学類, 教授 (50504065)
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研究分担者 |
高橋 秀和 福島大学, 食農学類, 教授 (00325937)
市橋 泰範 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, チームリーダー (20723810)
濱本 昌一郎 北海道大学, 農学研究院, 教授 (30581946)
高木 恭子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 上級研究員 (40707634)
小林 奈通子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60708345)
岡野 夕香里 福島大学, 食農学類, 准教授 (90734872)
中田 隆 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 研究員 (90882548)
辰野 宇大 福島大学, 環境放射能研究所, 研究員 (40898003)
小澤 仁嗣 福島大学, 食農学類附属発酵醸造研究所, 特任助教 (60915685)
平賀 勧 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 上級研究員 (30332472)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | ダイズ / 放射性セシウム / 東京電力福島第一原子力発現所事故 / マルチオミクス解析 / 東京電力福島第一原子力発電所事故 / マルチオミクス |
研究開始時の研究の概要 |
土壌にはK以外にも作物生育に必要な多様なイオン、および根滲出物や代謝物が多数存在している。ダイズは根粒菌や菌根菌と共生し、高度に複雑な根圏微生物叢を構築している。つまり、ダイズのCs吸収は土壌の化学性、微生物性、物理性が複雑に絡み合う農業生態システムの中で成立しており、本来Kだけの単独指標ではなく総合的に評価されるべきである。そのため本課題では、これまで土壌の交換性K濃度のみであったダイズのCs吸収に関する栽培環境要因を、土壌や微生物のオミクスデータ(イオノーム、マイクロバイオーム等)を統合したマルチオミクス解析を駆使して解明する。
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研究実績の概要 |
(ア)福島県内で日本、世界のコアコレクション、および福島大学が独自に集めた品種系統を含めた337品種を用いた2年分の栽培結果を元に、葉の133Cs濃度、子実の133Cs濃度、および葉/子実比の比を用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)により、吸収および転流に関するQTL、候補遺伝子の同定を試みた。また、葉、子実の他元素も測定し、Csと関連する元素のネットワーク解析を行った。 (イ)HAK5のアミノ酸配列をターゲットとしたノックダウン個体(KD)と対象個体(WT)を、異なるK濃度(低Kと高K)の水耕液で栽培後、137Cs+と42K+を含む溶液に浸漬した。HAK5の発現は、低Kで栽培したWTでは高 Kに比べて増加したが、KDでは増加しなかった。137Cs+ 吸収量は、WTでは高Kに比べ低Kで増加したが、KDでは栽培時のK濃度によらず低い吸収量であった。地上部の137Cs+ 吸収も根と同様の傾向で、低Kで栽培したKDではWTのようにCs吸収の増加はみられなかった。42K+ の吸収は137Cs+ と同様に、WTでは低K で吸収量が増加したが、KDでは低K、高Kとも低かった。。以上より、ダイズのHAK5がCs吸収に関与する候補とした。 (ウ)KDの子実のCs濃度を評価するため、0.1mM K+溶液に133Csを0.1mM添加してWT、KDを栽培した。子実の133Cs+ 濃度は、WTに比べKDでおよそ60%低下した。子実以外の他部位のCs濃度も子実と同様の結果であった。 (エ)異なるK+濃度(0, 0.01, 0.1, 1, 3mM)で栽培したダイズのHAK5の遺伝子発現を確認したところ、0.1mM以下で栽培すると発現量が大幅に高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福島県内でダイズのコアコレクション(337品種)の2年分の解析を行い、2年を通した開花期の葉、子実の133Cs濃度を測定しゲノムワイド関連解析により、p値が高い(7.5以 上)ローカスがいくつか検出している。 さらに、HAK5ノックダウン個体を用いた実験により、HAK5がCs吸収に関与する候補とした。以上より、Cs吸収に関する遺伝的、栽培環境的主要な因子を特定し、安全なダイズ栽培に基づく農業復興に寄与するために当初予定していた計画は概ね順調に進 んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
HAK5をターゲットとした欠損個体を用いて、低K濃度環境でのCs 吸収量を検討する。 また、ダイズコアコレクションを対象に、遺伝子型から低K環境下でCsを吸収しやすい系統を選抜し、実証試験を行う。 土壌の多様な成分や微生物、物理性を含めた栽培環境がダイズのCs吸収能に与える影響を明らかにするため、ダイズ、土壌、微生物のデータを包括的に取得してマルチオミクス解析を駆使し、ダイズのRCs濃度に関するシステムレベルでの制御モジュールの構成要素を抽出する。
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