研究課題/領域番号 |
23K21267
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補助金の研究課題番号 |
21H02354 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
落合 謙爾 岩手大学, 農学部, 教授 (80214162)
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研究分担者 |
福田 智一 岩手大学, 理工学部, 教授 (40321640)
畑井 仁 岩手大学, 農学部, 特任教授 (40566535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | 鳥白血病ウイルス / グリオーマ / 発癌 / 分子クローン / 共感染 / 無限分裂細胞 / 鶏 / 神経膠腫 / プロウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
鳥白血病ウイルス(ALV)により誘発される鶏のグリオーマの発生時期,発生頻度をみると,この特性は既知のALV発癌の分子機構,プロウイルス挿入変異では説明できない。異なる分子機構が存在すると推察される。本課題はこれを仮設として1)感染細胞率とグリオーマ発生率との関連,2)ALV株間のグリオーマ誘発能の厳密な比較,3)グリオーマ由来培養細胞の作製,4)このグリオーマ由来培養細胞の分子生物学的解析を通して,レトロウイルスの多様な病原性の分子基盤を解明することを目指している。
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研究実績の概要 |
本課題は 1) 鳥白血病ウイルス (ALV) のプロウイルス量とグリオーマの発生率との関連,2) ALV株間のグリオーマ誘発能の厳密な比較,3) グリオーマ由来培養細胞の作製,4) グリオーマ由来培養細胞の分子生物学的解析からなり,これら4つの解析からレトロウイルスの多様な病原性の分子基盤を解明することを目的とする。第2年度に当たる昨年度得られた成績は以下の通りである。(1) 項目1,2) の解析のため,神経膠腫と心筋異常を誘発するFGV変異株 Km_5666 の分子クローンを作製した。(2) Km_5666 分子クローンを用いて心筋異常とプロウイルスコピー数との関係を解析した。感染実験ではこの分子クローンにより心筋線維の錯綜や大型核をもつ肥大心筋線維が再現できた。実験鶏の心臓の核1個あたりのプロウイルスコピー数は 22 copies / nucleus 以上であった。以上の成績から, Km_5666 による心筋異常の発生頻度は心臓内プロウイルスコピー数が高くなると増すことがわかった。(3) 同じ亜群に属すALV株は同一のリセプターに結合して細胞に感染するため,複数株の共感染は考えにくい。しかし,数年前から野外のALV感染鶏でKmとFGVpクラスターに属す複数のALV株が検出されるようになった。そこで,各クラスターを特異的に検出可能なリアルタイム PCR系を設定し,このPCRで野外例の心臓および脳の核1個あたりのプロウイルス数を測定した。 心筋異常罹患鶏では,KmとFGVpクラスターの両者のプロウイルスが検出され,ALV 株の共感染が証明された。本研究で確立したリアルタイムPCR系は従来見逃してきた ALV 株の検出を可能にし,また,共感染を起こしている複数のALV株の各プロウイルスコピー数を測定できることから,ALVの病原性並びに疫学的解析に有用と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は初年度に取り組んだALVプロウイルス定量法をさらに改良し,野外では一個体に複数株のALVが共感染していることを明らかにすることができた。また,項目2) の解析として実施した感染実験では新たに作製した分子クローンKm_5666の病原性とプロウイルス量との関連を解析することができた。すなわち,神経膠腫の発生頻度とプロウイルス量は相関しないが,心筋異常の発生頻度とプロウイルス量は関連していることが明らかになった。新知見を含むこれら成績が得られていることから,本課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題は神経系ならびに心臓に病原性を示すALVの解析を通して,レトロウイルスの多様な病原性の分子基盤を解明することを目的とする。初年度と今年度の検索では,本課題で購入したリアルタイム PCR装置を活用することにより,従来見逃されてきた ALVの共感染の証拠を含め,ALVの病原性と疫学に幅広く応用可能なプロウイルス定量法を確立することができた。これまでの成績ではプロウイルス量が関与する病変と関与しない病変に分けられることがわかった。次年度は共感染していた野外鶏に由来する分子クローン2株それぞれの病原性を感染実験により解析し,各ALV株が神経膠腫の発症にどのように関わっているかを明らかにする。
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