研究課題/領域番号 |
23K21272
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補助金の研究課題番号 |
21H02360 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
度会 雅久 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (40312441)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 細胞内寄生菌 / 自然宿主 / 共生 / 感染制御 / マクロファージ / シグナル伝達 / ゾウリムシ / カイコ / 野兎病 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内寄生菌は増殖するステージと共生(休眠)するステージがある。共生ステージになると保菌宿主は無症候性キャリアとなり、菌は抗生物質に抵抗性になりやすく、再燃の危険性がある。この増殖と共生の双方向転換はヒトおよび動物由来細胞系では再現不能であったが、我々が構築した自然宿主感染モデルで解析可能となった。本研究では細胞内寄生菌の代表としてレジオネラと野兎病菌、自然宿主モデルとして原生生物や昆虫を用いる。その相互作用に関与する菌側と宿主側因子を同定・機能解析し、共生と感染の間で機能する新規因子群を探索する。その成果を新たな感染制御法構築に役立てる。
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研究実績の概要 |
細胞内寄生菌は増殖するステージと共生(休眠)するステージがあることが知られている。宿主内における増殖と共生の双方に関与する因子の同定は、宿主の感受性の差異を解明する手がかりとなる。本研究では自然宿主感染モデルを用いて、共生と感染の間で機能する新規因子群を探索する。細胞内寄生菌の代表として野兎病菌およびノビシダ菌、レジオネラを用い、終宿主感染モデルとしてのマクロファージと自然宿主モデルとして原生生物のゾウリムシを用いて検討を行なった。宿主側因子の探索を行うために、阻害剤ライブラリーを用いた感染阻害について解析を行った。 GFPを発現したノビシダ菌を阻害剤添加培養液で培養した細胞に感染させ蛍光強度を測定した。対照群と比較し、変化なし、促進、抑制の3つに分類した。スクリーニング結果より選出された阻害剤のうち、特に抑制が顕著であったCucurbitacin Iに着目して詳細な解析を行った。Cucurbitacin I はJanus tyrosine kinase 2 (Jak2)を標的にしたJak2/Signal Transducer and Activator of Transcription(STAT3)経路阻害剤である。本研究では比較としてSTAT3に特異的な阻害剤であるStatticを利用した。Cucurbitacin IとStatticはいずれもノビシダ菌には顕著な影響を与えず、それぞれの阻害剤を添加した培養液で細胞を培養すると、菌の侵入と細胞の貪食を抑制することを見いだした。さらに、Cucurbitacin IはJak2の活性化を阻害することでアクチンの脱重合を抑制し、それによって細胞の貪食を抑制することが明らかとなった。これらのことよりJak2/STAT3 経路のJak2がノビシダ菌感染予防の新しいターゲットとなる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト宿主モデルとしてマクロファージ、そして新たな原生生物モデルとしてゾウリムシ(Paramecium caudatum)の有用性に着目し、細胞内寄生菌の自然宿主モデルの解析を行っている。本年度は阻害剤ライブラリーを用いた宿主側因子の探索を行った。分子プロファイリング支援活動の標準阻害剤キットを活用し、感染および共生を阻害する物質とその標的因子の解析を行った。その結果、ノビシダ菌のマクロファージ感染に関与する宿主因子を明らかにし、細胞内シグナル伝達を阻害することによって菌の感染を制御できる可能性が示唆された。今後これらの成果を自然宿主モデルに応用し、細胞内シグナル伝達の阻害が自然宿主モデルにおける共生に与える影響を検討する。宿主への共生に関与する因子(共生因子)の機能解明がさらに進むものと期待される。概ね計画どおり進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
概ね計画どおり進捗しているため、計画どおり研究を進める。細胞内寄生菌であり、動物を含めた環境中に広く分布する病原細菌の代表としてレジオネラおよび野兎病菌、自然宿主モデルとしてゾウリムシおよびカイコを用いて解析する。ゾウリムシおよびカイコとカイコ由来細胞株内に共生できない変異株を作製し、共生関連因子を分離・同定する。その因子の機能、特に宿主の細胞内輸送や免疫調節機能に注目して遺伝学的および分子生物的手法を用いて解析する。細胞内増殖に関与する既知の病原因子である、IV型およびVI型分泌機構とそのエフェクター因子の発現と機能について自然宿主モデルを用いて解析し、その役割を検討する。さらに新規菌側および宿主側因子の同定と機能解析を行い、共生機構に関与する因子が感染制御に応用可能かどうか明らかにする。具体的には以下の項目を行う。 変異株作製による共生に関与する因子の探索:自然宿主への共生に必要な菌側因子を検索するために、トランスポゾンを用いたランダム挿入変異法により、共生しない変異株の作出を行う。これまでに分離した変異株について、機能解析を行うことにより、病原因子の新たな機能を提示できるものと考えられる。 宿主内における菌の増殖および共生を阻害する手法の検討:感染に抵抗性を示す自然宿主を解析し、菌の細胞内増殖および共生を阻害する因子を探索する。阻害因子が同定された場合、ヒト由来の培養細胞に応用し、感染が阻害されるか検証する。 ゲノム情報を用いた比較解析:自然宿主モデルのゾウリムシやカイコに共生する細菌が知られており、ゲノムの解析が進んでいる。これらの情報をもとにレジオネラ、野兎病菌のゲノムと比較解析し、共生に関連すると予測される因子をタンパク質配列データベースであるUniProt Knowledgebase (UniProtKB)を用いて選定する。
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