研究課題/領域番号 |
23K21287
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補助金の研究課題番号 |
21H02395 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
岩田 悟 中部大学, 実験動物教育研究センター, 講師 (70722891)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | ゲノム編集 / 染色体工学 / 染色体再編成 / ゲノム安定性 / 染色体異常 / ゲノム編集技術 |
研究開始時の研究の概要 |
がんや先天性疾患の原因となる染色体再編成を正確に誘導する技術開発は、疾患モデル動物の作製だけでなく、染色体異常の治療に展開するうえでも社会的ニーズが見こまれる。しかしながら、従来のゲノム編集技術による染色体再編成マウスの誘導法では、予期せぬ構造をとるケースがあり、多くは胎生致死となることが課題であった。 本研究では、相同組換え効率が向上するようゲノム安定性制御分子を遺伝的に改変したマウス系統を用いることで、正確に染色体再編成を誘導する新規ゲノム編集法の確立と応用に挑戦する。さらに、本手法をベースとした染色体異常の正確な修復に取り組み、臨床応用への展開も見据えた汎用型プロトコルを開発する。
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研究実績の概要 |
複数の染色体断端からなる複雑な染色体再編成 (Complex Chromosome Rearrangements: CCRs) は、がんや先天性疾患の患者で度々検出される染色体構造異常である。それら疾患の発症機序解明や治療法の開発には適切なモデル動物の樹立が必須である事は論を待たないが、深刻なゲノム不安定性や細胞死が誘導されるため困難であった。本研究では、DNA修復の過程でRad51 (相同組換え (HDR) 因子) を分解するRecql5を破壊すると、メガベース (100万塩基対) 単位の染色体逆位 (染色体の一部が反対方向となった染色体異常) や、Hmga2-Wif1, Hmga2-Rassf3, Wif1-Rassf3という3つの融合遺伝子を発現するCCRsモデルマウスが受精卵へのゲノム編集により高効率に作製できた。また、次世代シーケンス解析により、マイクロホモロジーを介した鋳型交換機構 (fork stalling and template switching: FoSTeS/microhomology-mediated break-induced replication: MMBIR) という特殊なDNA修復メカニズムの関与が確認された。今回の研究成果は、DNA修復経路を遺伝学的に操作することでCCRsモデルマウスを効率的に作製できる可能性を示しただけでなく、染色体構造異常の影響を研究するための有望なアプローチとなると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画では、1) ゲノム安定性制御分子を遺伝的に改変することで高精度・高効率に染色体再編成を誘導する新手法を確立し(2022 年度)、それを用いた 2) 複雑な染色体再編成 (CCRs: Complex Chromosome Rearrangements) の誘導と解析を進め、本手法が有効に機能することを確認した上で(2023年度)、3) 臨床応用へ向けてゲノム安定性制御分子の機能を制御することで染色体異常を正確に修復する汎用型プロトコルを開発する(2024年度)。 現在までに、野生型マウスを用いた実験ではCCRsの誘導が困難な一方、DNA修復の過程でRad51を分解するRecql5をノックアウトしたマウス系統ではメガベース単位の染色体逆位や、3つの融合遺伝子を発現するCCRsが高効率に誘導できている。また、次世代シーケンス解析により、いくつかのCCRs系統ではマイクロホモロジーを介したFoSTeS/ MMBIRという特殊なDNA修復メカニズムの関与が確認された。この染色体構造異常は、新たに提唱されたゲノム現象 " 染色体再構成 (chromoanasynthesis)" を彷彿とさせる。このようにRecql5ノックアウト系統はCCRsを効率的に誘導できる可能性を示しただけでなく、chromoanasynthesisというメカニズムがよく分かっていない現象を解析するための新しい強力なツールとなることが示された。本項目までの成果はプレプリント誌bioRxiv (https://doi.org/10.1101/2023.04.06.535871)に発表すると同時に、査読誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記のCCRsマウスを解析すると同時に、確立した新手法を応用したマウスの生体内における染色体異常の修復ができるかを試みる。標的領域は、がんや発生異常を起こす変異が集中する領域とし、それぞれgRNAおよび染色体断端が再度連結するために必要なssODNを設計、in vivo電気穿孔法を用いて狙った位置の染色体異常を修復する。標的 guide RNA (gRNA) は、融合遺伝子データベースFusionGDB (ccsm.uth.ed u/FusionGDB/) より配列情報を入手し、ゲノム断端が順方向となった時に相補的な結合をするよう、DNA配列編集ソフトApEで設計する。さらに、ゲノム断端が互いに順方向となるようにHDRを介して再度連結するために必要なのり付け配列であるssODN (一本鎖オリゴ) をApEで設計する 。今回、ssODNの各末端をS化 (硫黄化) することで細胞内に存在する核酸分解酵素への耐性を付与する実験条件も加え、染色体異常の修復効率への影響を調べる。 遺伝子型検査は、PCR、サンガーシーケンスにより検証する。さらに、予期せぬ構造がないか次世代シーケンサー (NGS) にて解析する。以上の解析から正確かつ高効率に染色体異常を修復する条件を見出す。
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