研究課題/領域番号 |
23K21292
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補助金の研究課題番号 |
21H02427 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 洋平 京都大学, 薬学研究科, 連携教授 (90568172)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2021年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 一次繊毛 / 繊毛病 / IFT装置 / トランジションゾーン / ゲノム編集 / 膨張顕微鏡法 / 間葉系幹細胞 / モータータンパク質 / リン酸化 / IFT複合体 |
研究開始時の研究の概要 |
一次繊毛は細胞のアンテナとして機能するオルガネラであり、その異常は多様な重篤症状を呈する繊毛病を引き起こす。一次繊毛の形成や機能維持において基盤となるのは、繊毛内に受容体等を輸送する繊毛内タンパク質輸送(IFT)装置である。IFT装置は合計40種類以上のタンパク質から成る複雑な分子マシンであり、リン酸化による制御や、繊毛基部の拡散障壁であるトランジションゾーンでの選別を受ける。IFT装置を中心とするIFTシステムの解明は、繊毛病の病態解明や治療機会提供へ繋がる。本研究では多角的なアプローチによってIFTシステムおよび繊毛病の分子基盤の解明に挑む。
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研究実績の概要 |
一次繊毛は細胞のアンテナとして機能する細胞小器官であり、その異常はさまざまな重篤な症状を引き起こす繊毛病の原因となる。この一次繊毛の形成や機能の維持には、繊毛内タンパク質輸送(IFT)装置が中心的な役割を果たしている。
骨格繊毛病患者では、IFT-B複合体のサブユニットであるIFT81に複合ヘテロ接合体変異が報告されているが、その変異がどのように病態を引き起こすかという分子基盤は不明だった。本研究では、IFT81の変異が他のIFT-Bサブユニットとの相互作用に影響することや、IFT81ノックアウト細胞でIFT81変異体を発現させると繊毛形成やタンパク質輸送に異常が生じることを明らかにした。さらに、骨格繊毛病の原因となるIFT81の変異が、Bardet-Biedl症候群(BBS)に見られる繊毛異常を引き起こし、BBS変異体を発現する細胞と同じ表現型を示すことを見出した(Tasaki et al., 2023, Hum. Mol. Genet.)。
IFT装置のモータータンパク質であるダイニン-2は、繊毛内で逆行輸送を担うために、まず順行輸送の積荷として繊毛先端まで輸送される必要がある。本研究では、IFT-B複合体のサブユニットであるIFT54とダイニン-2複合体の相互作用の詳細を調べた。その結果、ダイニン-2が順行性IFTトレインに積み込まれるためには、ダイニン-2とIFT-B複合体のIFT54サブユニット間にある複雑で多重的な相互作用が必要であることが明らかになった(Hiyamizu et al., 2023, Biology Open)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に実施した研究は概ね順調であると自己評価している。理由として、まずIFT81とIFT54に関する研究をHum. Mol. Genet.誌とBiology Open誌に発表したことが挙げられる。また、現在進行中のトランジションゾーン関連遺伝子の研究や、繊毛病Bardet-Biedl症候群(BBS)原因遺伝子に関する研究も論文としてまとめる段階にあるためである。 一方で、間葉系幹細胞を用いた細胞分化における繊毛の役割に関する研究については、複数の繊毛遺伝子をノックアウトして研究を進めているが、昨年度中に論文としてまとめる段階には至らなかった。今後も間葉系幹細胞を用いた研究を引き続き進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
繊毛内タンパク質輸送および繊毛病の分子メカニズムを理解するため、今後の研究では以下の方策に焦点を当てて進める。 1. TMEM218の機能解析には、CRISPR/Cas9技術を用いてTMEM218を欠損させたノックアウト細胞株を作製し、繊毛形成能や繊毛長、IFTおよびTZタンパク質の局在変化を詳細に調査する。さらに、病態遺伝子を持つ細胞と野生型遺伝子を持つ細胞を比較することで、繊毛の構造と機能における具体的な異常を明らかにする。 2. TXNDC15については、TMEM218と同様の手法を基に機能と繊毛病における役割を探る。小胞体に局在するこのタンパク質の特異的な細胞内局在の意義とその病態生理学的役割を解明する。 3. IFT装置がTZを通過し、繊毛外へタンパク質を選択的に輸送するメカニズムを探る。特にBBSの原因遺伝子BBS21の役割に注目し、それがIFT装置やTZとどのように相互作用し、GPCRの排出を促進するかを分析する。 4. Ultrastructure ExM(U-ExM)技術の最適化に成功したため、今後はそれを活用して、繊毛基部におけるIFT装置の形成メカニズムを明らかにする。 5. 一次繊毛が細胞分化に与える影響を調査するため、間葉系幹細胞を用いて研究を進める。一次繊毛の異常が組織や臓器の発生に影響を与えることから、細胞分化における役割を解明し、繊毛病の発症メカニズムを解明する。
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