研究課題/領域番号 |
23K21303
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補助金の研究課題番号 |
21H02462 (2021-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2021-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
谷口 俊恭 東海大学, 医学部, 教授 (60794534)
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研究分担者 |
渡邊 孝明 東海大学, 医学部, 講師 (20421365)
石井 恭正 東海大学, 医学部, 准教授 (20548680)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | DNA修復 / 紫外線 / microRNA / がん |
研究開始時の研究の概要 |
我々はmiRNA生合成に関わるRNA結合蛋白DGCR8のSerine153 (S153)のリン酸化が「転写と共役したヌクレオチド除去修復」を制御すること、DGCR8のパートナーであるDroshaも細胞のUV抵抗性に関わることを発見し、新規DNA修復制御経路DGCR8-mediated UV response pathwayを提唱した。本研究は細胞レベルでの解析とDgcr8 S153A変異マウスを用いた個体レベルの解析を行うことで、このpathwayの制御機構及び生体内での役割を解明し、将来の臨床応用へ展開するための基礎を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究はmicroRNA生合成とDNA修復という二つの分野を結ぶ新しい研究領域の創生を目指している。紫外線(UV)はDNAを損傷し癌化を誘発する。UVによるDNA損傷はヌクレオチド除去修復で修復される。我々は、miRNA生合成に関わるRNA結合蛋白DGCR8のSerine153 (S153)のリン酸化が転写と共役したヌクレオチド除去修復を制御すること、DGCR8のパートナーであるDroshaも細胞のUV抵抗性に関わることを発見し、新規DNA修復制御経路DGCR8-mediated UV response pathwayを提唱した。このpathwayの生体内での役割の解明、制御メカニズムの解明が残された重要な課題であった。そこで現在までにこのpathwayの機能に必須なS153のリン酸化が起きないようにS153をalanineに置換したDgcr8 S153A変異マウスをCRISPR-CAS9 systemを用いて作成した。また、紫外線起因皮膚がんの発症抑制にこのpathwayが関与すると仮説し、Dgcr8 S153A/S153A, S153A/wt, wt/wtのgenotypeのマウスに紫外線(UV-B)を照射し腫瘍の発生を観察する実験を開始した。さらにこれらのgenotypeのマウス胎児線維芽細胞を作成し、その解析も始めている。またDroshaの紫外線抵抗性への関与の機序を解明するために、CRISPR-CAS9システムを用いてknockout細胞を作成した。これらの成果は、Dgcr8, Droshaの紫外線応答における役割を解明するための重要なツールを作成できたことを意味し、本年度以降に行うDGCR8-mediated UV response pathwayの生体内での役割の解明、制御メカニズムの解明に向けての重要なステップと位置づけられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「DGCR8-mediated UV response pathwayはin vivoでも転写と共役したヌクレオチド除去修復を制御し、UV起因発ガンの抑制に働く」という仮説を検証するため、Dgcr8 S153A変異マウスを作成した。またDgcr8 S153Aのマウス胎児線維芽細胞(MEF)を樹立し、DGCR8, CSB, RNApolymeraseの相互作用を検討した。 Dgcr8 S153A変異マウスでの腫瘍の発生を調べるために、S153A/S153A, S153A/wt, wt/wt それぞれ10匹ずつマウスを用い、背部皮膚を脱毛処理後UV-B週4日20週照射を行った。照射開始から70週まで皮膚腫瘍の出現を比較した。すでに腫瘍の採材を行い病理標本を作成した。 またヒト骨肉腫細胞株U2OS、ヒトケラチノサイトHaCaT、ヒト網膜色素上皮細胞ARPE19、マウス筋芽細胞株C2C12等を用いてゲノム編集によりS153A変異細胞を作成し、DGCR8およびDroshaについて様々な解析を行った。上述のTC-NERのタンパク質複合体形成がDGCR8-S153リン酸化に依存し、DNA修復のためのゲノム環境を整えるクロマチン再構成因子であるSPT16とSMARCA5のリクルートに関わることを見出した(投稿準備中)。転写制御異常で生じ、ゲノム不安定性に繋がるR-loop構造が紫外線によるDNA損傷に伴い蓄積すること、DGCR8がその制御に新たな側面を与える可能性があることを示した(投稿準備中)。より長波長のUVAによる酸化ストレスの制御にもDGCR8-S153リン酸化が関わることを示し、Droshaの紫外線抵抗性を担うdomainの候補を探索した。ここまでの実験はほぼ計画通り進行している。 これらの結果は第46回日本分子生物学会年会で4題のポスターとして発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、すでに採材し標本を作成したDgcr8 S153A/S153A, S153A/wt, wt/wtマウスのUV-B照射後の皮膚腫瘍の組織型を解析を進める予定である。 また、樹立したDgcr8 S153A/S153A, S153A/wt, wt/wtのgenotypeを持つマウス胎児線維芽細胞(mouse embryonic fibroblasts (MEF))および、ヒト骨肉腫細胞株U2OS、ヒトケラチノサイトHaCaT、ヒト網膜色素上皮細胞ARPE19、マウス筋芽細胞株C2C12のS153A変異細胞などを用いて、UV感受性、UV照射後のDNA修復過程(CPD,6-4PP定量)、UV照射後RNA合成回復(TC-NERの指標)、R-loopへの影響などの総合的な解析を行う予定である。
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